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第62話 疑わしい者?

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 「居た居た」
 「いったいどうなっている? スライムはなぜ核だけになっているんだ?」

 リトラさんとロメイトさんが、息を切らせながら現れた。

 『思ったより早かったな。まあ街の様子を見れば一直線でここに来るだろうがな』

 「ロメイトさん、よかった。彼らがいきなり暴れ出して、マルリードが止めるように言われたとかで止めてはくれたのですが、ぐったりしてしまって……」

 ちょっと困り顔の護衛の二人。

 「そっか。サンキュな。マルリード。しかし、人間も操れるのか……」
 『思ったのだが、人も操れるなら直接本人を操った方がいいのではないか?』

 そうだけど、操って自分の店を壊すより壊された方がダメージ大きいのでは? というか、彼らは鎧に魔素耐性があると思って魔素の中に入るかもだけど、普通の人はそんなところ寄り付かないから無理じゃない?

 『魔素酔いさせる行為が大変か』
 「大丈夫だ。魔素酔いしているだけだろう。魔素酔いしている者はその者達だけか? スライムによって魔素酔いした者はいないのか?」
 「はい。いません」

 ロメイトさんが聞くと、護衛の一人が答えた。

 「我々にも倒せないほど硬くて。しかし、人には危害を加えないようなので放置していたのですが、突然核になってしまって」
 「ほう。君達でも倒せなかったと……」

 そう言いつつロメイトさんが僕を見た。
 どういう事だと目で訴えてきた。

 「で? この数のスライムをマルリードが一人で倒したと」
 「え? いえ。彼が来る前に核になりましたけど?」

 リトラさんが言った言葉に違うと返され、リトラさん達は驚く。僕が倒したと思っていたからだろうな。それはあっているけど、まさかの広範囲魔法だから気づかないよね……。

 こうしてなんとか魔素だらけにする事は食い止めたけど、街は前代未聞のスライムによる襲撃で半崩壊になったのだった。



 街は今、冒険者であふれている。と言っても復興の為に集まったんだけどね。
 そして、驚いた事に王国騎士団の調査隊が来るらしいのだ。

 正直に話して大丈夫か悩んでいる。

 『君には、運加算100では足りないのではないか?』

 うるさい! 僕は何も悪くない……たぶん。普通でも倒せないぐらい硬かったと報告していたところで、これは免れてないと思うし。

 『だろうな。まさかのスライムの数だったしな。しかし正直に報告した方がいいと思うぞ。手柄がなしになる』

 手柄にしたくてしたわけじゃないから別にいいよ。
 ただ僕が魔法を使った事により、核をバラまいた事になったからよかったのかどうか……。

 『よかったのだろう? というか、魔素だらけになるよりマシだろう。それにこれもレモンスの作戦だろう? もし万が一倒されても魔素と核を振りまくだけだ』

 いやいや。あの数を倒すわけないでしょ、普通は。

 『ではどうしていたというのだ?』

 それはわかんない。もし僕が魔法を使えなかったらどうする気だったのかな?

 『という事は、彼の目的は違うところにあったという事か? 知りたいものだな』

 もう首を突っ込みたくない。

 僕は辺りを見渡した。がれきの山があちこちにある。ちょっと壊れたぐらいなら修復魔法というのがあるらしいけど、ここまでだと無理みたい。まずは、こうしてがれきを手作業で撤去している。

 『時代が変わっても手作業なのだな』

 壊してまっさらにするなら魔法でできるかもだけど、修復するからね。
 村の宿屋を街の人に開放する為、僕らは野宿になるらしい。テントを街に張るらしいけど、僕は村に戻る。
 夜には、聞き取りがあるんだ。

 そして、ロメイトさんとリトラさんが迎えに来て僕は、パーティーギルドで聴取となった。部屋に入ると、ディルダスさんとキモンさんが待ち構えていて、僕らはソファーに座った。左隣がリトラさんで右隣りがロメイトさんと挟まれてソファーに座る。なんとなくだけど、雰囲気が重いんだけど。

 「まずは、持って行ったベルを出してもらおうか」
 「え? あ、はい」
 『回収されるのか。残念だな』

 まあそうだろうね。
 僕は、魔素空間からヨイドレイのベルを出しテーブルの上に置いた。それをキモンさんが手に取りチェックしている。

 「契約者が使えるようです。マルリードも彼と同じく契約魔法を持っています。そして、他の魔法も覚えてますね」
 「そうか」
 「悪いな」

 話を聞いたディルダスさんが頷くと、リトラさんに左手を押さえつけられた。もちろん右側もロメイトさんによって押さえつけられる。
 何これ!?
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