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23話

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 「会場の手配が難しいのではないでしょうか。俺としては、それが出来るのなら半年後でも構いません。本音を言えば結婚は今日しても構いません」

 はい!? ルティロン様がまた変な事を口走っています。今すぐに結婚って!?

 「ふむ。籍は今日入れても私は構わないが」
 「ですから息子が言う様に、その前に会場が抑えられません。ハルサッグ伯爵は、結婚式をいつ執り行うおつもりなのですか? 半年後でも難しいでしょう」

 ラフリィード侯爵が言う通り、半年後でも大きな会場を手配するのは難しい。すでに抑えられているから。
 侯爵の権力でと思ったところで、そんな大きな会場を抑えている貴族は高位貴族。それこそ侯爵家、公爵家になる。
 伯爵家のところを見つけ割り込んだとしても、それこそ醜聞が流れる事になる。早いところなら招待状を送っているはずだから。こっそりなかった事にはならないでしょう。

 「一か月後ぐらいだな」
 「「一か月後!?」」

 お父様の一言に、またまた驚きの声を上げた。
 お父様の頭の中はどうなっているのでしょうか?
 それは無理以外ありえません。どうやって色々な準備させるおつもりですか!

 「こ、この方は結婚式のノウハウを全くご存じないとか……?」

 ラフリィード侯爵夫人が、ボソッと漏らす。
 そうかもしれません。

 「あなた、黙って聞いておりましたが、それは流石に無理ですわ。他国にもご招待状を出すのですよ? その準備も大変です。私達の時もそれなりに大変でしたでしょう? 侯爵家となれば更に色々と大変なはずです」

 よかったぁ。お母様が口を挟んで下さった。
 お父様に唯一、進言出来るのだからこれで安心だわ。

 「何を言う。今までないぐらい凄い結婚式にする。場所は王城。呼ぶ者は全員、招待状を送ればいい。警備は精鋭部隊にお願いする」
 「「はい!?」」

 三度も驚く事などないだろうと思っておりましたが、まだ驚くような事を言えたのですね。王城って!!

 「あの、ハルサッグ伯爵? 確かに王族以外でも許可が下りれば使えるでしょう。ですが王家の親族の公爵家の方々です。一般の貴族が使うなど聞いた事がありません」
 「何をおっしゃいます、ラフリィード侯爵。あなたは、この国の顔の外交官ではありませんか。それにこういう事態に陥ったのは、陛下の命でもある。二人でお願いに上がろうではないか。不敬な事をする輩も呼んでしまうと、不安に思うところもあるでしょう。精査する時間がないのですから。そこは招待状に、一言添えておけばいいのです。それに、来れない方のみ返信の形をとればいい。立食にすれば、料理の確保は何とかなるでしょう。それにどうせ、陛下もお呼びするのでしょう?」

 と、お父様が言えば、全員があんぐりとして何も言えない。さすがお父様だわ。考え方が、他の方と違う。

 「父上、ハルサッグ伯爵。どうか、宜しくお願いします」

 と、今度はルティロン様が深々と頭を下げればお父様以外は驚き、彼を凝視する。
 一体、何が何だかわからなくなってきたわ。

 「あなたの息子は、この様に申しておるがどうする?」

 お父様が、ラフリィード侯爵を見つめ問う。
 ルティロン様にお願いまでされたら嫌だとは言えないでしょう。聞いてダメなら諦めると言う事になるのではないかしら。
 というか、外交官であるラフリィード侯爵が頭を下げれば、お父様が言う通り、作戦の遂行を命じたのは陛下だと聞いたので、快く応じて下さると思うけど。
 ただ一か月って時間がなさすぎです。

 「よくわかりましたわ。ハルサッグ伯爵が突拍子もない事を思いつくと言う事は。ですが、あなたの娘は外交官の息子と結婚するのです。結婚式で、彼女が外国語が出来ないと彼女だけではなく、私達も恥をかきます」

 そう言えばそうね。結婚式場にそれこそ、他国の顔となる外交官が招待されるのは間違いない。ルティロン様は、ケイハース皇国語がお出来になるでしょうからそれぐらいは出来ないと笑いものにされると言う事ですね。

 「ふむ。それがクリアできれば、この案で進めて良いと言う事かな? ご婦人」
 「えぇ。ですが、一か月後に会話が出来るまでになってないといけませんわ。せめて、ケイハース皇国語は」
 「ちょっと待って。そうじゃないと結婚を許さないって事?」
 「婚約はあくまで婚約。外国語を話すのが無理の様でしたら、結婚はなし。残念ですがルティロン、その時はこの結婚を諦めなさい」

 どうやらやっぱりラフリィード侯爵夫人は、この結婚を好ましく思っていないみたいね。私がというよりは、お父様を気に入らないのでしょうけどね。
 ルティロン様が、悲しげな顔で私を見つめて来た。
 いやそんな子犬みたいなしょんぼり顔しないでください。でもその顔もまた、可愛いと思ってしまう私は、どうしてしまったのでしょうか。
 今まで、そういう顔を見ても他の方には何も感じなかったと言うのに。
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