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24話
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「よかったな。メロディーナ。結婚のお許しが出た」
そう言ってお父様は、私をにっこりとして見た。
言質を取ったぞとその顔は言っている。
『ラフリィード侯爵夫人。外交に使う専門用語などは勉強不足でわからないと思いますが、この程度の会話なら可能です。合格でしょうか?』
「まあ……」
私がケイハース皇国語で話しかければ、心底驚いたという顔つきでラフリィード侯爵夫人が私を見つめた。
まあ驚くでしょうね。
挨拶程度の外国語は習ってもここまで教わっている令嬢はこの国では少ない。
ルティロン様のような外交官の家庭ならあり得るけど、外国と縁がない私が話せるとは思ってもみなかったという所よね。
ルティロン様も、びっくりしている。
私は、剣術大会に出場する為に外国語を取得してからお父様にお願いにあがったのです。
知らない人も多いですが、騎士はイムゲン王国に隣接する三か国語が出来ないといけない。もちろん、入隊する時に話せなくとも問題はない。
特に一般部隊は平民がなるので、入隊する時に話せる者は稀だわ。
なぜ必要かと言うと、外人の警護に当たる事もある為。
言葉がわからないために、業務に支障が出たとならない為に覚える事になっている。
なので覚えてから剣術大会に出る必要はないけど、お父様は結果が全てのように考えている方の様に見えますが、実はそこまでに至る過程、努力を評価する方なのです。
それを知っていた私は、剣術大会に出場する為に、ひいては騎士になるつもりがあるとアピールする為に覚えた。
まあ令嬢である私が、騎士になれるとはあの時は思ってはいませんでしたが。その意気込みはあると示したのです。
まさかそれが、こんな所で役に立つとは思いもしませんでした。
「はぁ……これは、ダメだとは言えませんね。驚きました。ルティロン。ちゃんと選んでいたのですね。わかりました。素晴らしい結婚式に致しましょう」
「ありがとうございます! 母上!」
「……ありがとうございます。宜しくお願いします」
私達の結婚式なので、私もラフリィード侯爵夫人にお礼を言う。
「ですが、一つ問題がありますわ。結婚式に彼女が着るドレスがありませんわ。今からですと、無理でしょう。他の令嬢の結婚式のドレスが優先されるでしょうから」
これは、本当に困ったという顔つきで、ラフリィード侯爵夫人が言った。
「それは問題ありませんわ。ラフリィード侯爵夫人。私の方で伝手がありますの。ルティロン様の分も手配致しますわ」
話は決まったと、お母様がそう言って下さった。
婚礼用のドレスなどは、それ用の専門店に頼むのが基本。もちろん、いつものところで作って頂く事も可能ですが、そもそもそれ用の生地がありそれを用意しなくてはならない。
まあ侯爵家ぐらいになれば、お抱えのデザイナーがいるでしょうけど。
うちにはいない。というか、あそこに頼むのだと思う。
男性専門店だけど実はペアなら女性のドレスも作ってくれると聞いた。それに、お父様が陛下から紹介してもらったお店なので安心だ。
「やっぱり君は凄い! 俺の想像の遥か上を行く。絶対に素晴らしい結婚式にしよう。で、籍はいつ入れようか?」
「はい!?」
私の前に来て、両手を握って何を言うのかと思えば、またそういう恥ずかしい事をルティロン様は仰るのですから。
「うむ。だったら四人で行くか?」
「うん? どちらへですか?」
「陛下の元へ、お願いに」
「「え~!!」」
まさか、四度目の驚きも用意していたとは。ってお父様。普通はおいそれとお会いできる相手ではないはずなのですが?
「その時に、結婚式の用紙を提出してくるといいだろう」
事もなさげにお父様は言った。
普通の事の様に言わないで頂きたいわ。どちらも特別な事でしょう!
「あの、お父様のたわ言は、気にせずに……」
「凄くいい案だと思います! その場で祝いの言葉も頂けそうです。凄く光栄です」
ルティロン様が、どんどんお父様に毒されて行っているのですが……。
「あ、あなた、あの方は伯爵なのですよね? ただの軍人なのですよね」
「……そ、そうだな。副隊長だが伯爵だ。ただ陛下の覚えが大変めでたい」
ボソッとラフリィード侯爵夫人が聞けば、ラフリィード侯爵もボソッと返すが、その会話は私達の耳にも届いていた。
覚えがめでたいって、ただ目立っているだけではないでしょうか?
娘が男装して剣術大会で優勝してしまったり、私を騎士にする為に副隊長になったりと。副隊長になる前は、一隊員に過ぎなかったのですから。
「では、明日伺いましょうか」
「はい!?」
そう言ったのは、なんとルティロン様だった。
いや、会おうと伺って会える方ではないのでは?
「そうだな。今日中にアポイントを取っておこう」
「はい!?」
ラフリィード侯爵ではなく、お父様がそう言った。副隊長ってそういう事も出来るのね。
そう言ってお父様は、私をにっこりとして見た。
言質を取ったぞとその顔は言っている。
『ラフリィード侯爵夫人。外交に使う専門用語などは勉強不足でわからないと思いますが、この程度の会話なら可能です。合格でしょうか?』
「まあ……」
私がケイハース皇国語で話しかければ、心底驚いたという顔つきでラフリィード侯爵夫人が私を見つめた。
まあ驚くでしょうね。
挨拶程度の外国語は習ってもここまで教わっている令嬢はこの国では少ない。
ルティロン様のような外交官の家庭ならあり得るけど、外国と縁がない私が話せるとは思ってもみなかったという所よね。
ルティロン様も、びっくりしている。
私は、剣術大会に出場する為に外国語を取得してからお父様にお願いにあがったのです。
知らない人も多いですが、騎士はイムゲン王国に隣接する三か国語が出来ないといけない。もちろん、入隊する時に話せなくとも問題はない。
特に一般部隊は平民がなるので、入隊する時に話せる者は稀だわ。
なぜ必要かと言うと、外人の警護に当たる事もある為。
言葉がわからないために、業務に支障が出たとならない為に覚える事になっている。
なので覚えてから剣術大会に出る必要はないけど、お父様は結果が全てのように考えている方の様に見えますが、実はそこまでに至る過程、努力を評価する方なのです。
それを知っていた私は、剣術大会に出場する為に、ひいては騎士になるつもりがあるとアピールする為に覚えた。
まあ令嬢である私が、騎士になれるとはあの時は思ってはいませんでしたが。その意気込みはあると示したのです。
まさかそれが、こんな所で役に立つとは思いもしませんでした。
「はぁ……これは、ダメだとは言えませんね。驚きました。ルティロン。ちゃんと選んでいたのですね。わかりました。素晴らしい結婚式に致しましょう」
「ありがとうございます! 母上!」
「……ありがとうございます。宜しくお願いします」
私達の結婚式なので、私もラフリィード侯爵夫人にお礼を言う。
「ですが、一つ問題がありますわ。結婚式に彼女が着るドレスがありませんわ。今からですと、無理でしょう。他の令嬢の結婚式のドレスが優先されるでしょうから」
これは、本当に困ったという顔つきで、ラフリィード侯爵夫人が言った。
「それは問題ありませんわ。ラフリィード侯爵夫人。私の方で伝手がありますの。ルティロン様の分も手配致しますわ」
話は決まったと、お母様がそう言って下さった。
婚礼用のドレスなどは、それ用の専門店に頼むのが基本。もちろん、いつものところで作って頂く事も可能ですが、そもそもそれ用の生地がありそれを用意しなくてはならない。
まあ侯爵家ぐらいになれば、お抱えのデザイナーがいるでしょうけど。
うちにはいない。というか、あそこに頼むのだと思う。
男性専門店だけど実はペアなら女性のドレスも作ってくれると聞いた。それに、お父様が陛下から紹介してもらったお店なので安心だ。
「やっぱり君は凄い! 俺の想像の遥か上を行く。絶対に素晴らしい結婚式にしよう。で、籍はいつ入れようか?」
「はい!?」
私の前に来て、両手を握って何を言うのかと思えば、またそういう恥ずかしい事をルティロン様は仰るのですから。
「うむ。だったら四人で行くか?」
「うん? どちらへですか?」
「陛下の元へ、お願いに」
「「え~!!」」
まさか、四度目の驚きも用意していたとは。ってお父様。普通はおいそれとお会いできる相手ではないはずなのですが?
「その時に、結婚式の用紙を提出してくるといいだろう」
事もなさげにお父様は言った。
普通の事の様に言わないで頂きたいわ。どちらも特別な事でしょう!
「あの、お父様のたわ言は、気にせずに……」
「凄くいい案だと思います! その場で祝いの言葉も頂けそうです。凄く光栄です」
ルティロン様が、どんどんお父様に毒されて行っているのですが……。
「あ、あなた、あの方は伯爵なのですよね? ただの軍人なのですよね」
「……そ、そうだな。副隊長だが伯爵だ。ただ陛下の覚えが大変めでたい」
ボソッとラフリィード侯爵夫人が聞けば、ラフリィード侯爵もボソッと返すが、その会話は私達の耳にも届いていた。
覚えがめでたいって、ただ目立っているだけではないでしょうか?
娘が男装して剣術大会で優勝してしまったり、私を騎士にする為に副隊長になったりと。副隊長になる前は、一隊員に過ぎなかったのですから。
「では、明日伺いましょうか」
「はい!?」
そう言ったのは、なんとルティロン様だった。
いや、会おうと伺って会える方ではないのでは?
「そうだな。今日中にアポイントを取っておこう」
「はい!?」
ラフリィード侯爵ではなく、お父様がそう言った。副隊長ってそういう事も出来るのね。
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