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第1章
第49話 そう都合よくは行かない
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本棚とテーブルの隙間から、そっと声の聞こえた方を伺うと、小鬼射手達が地面に転がっていた。
事前に配置していた毒液の檻に引っかかったのかと思ったが、原形を保っている見た目から、そうではないのだとすぐ分かる。
GOGA…
GEHI…
反対側からも、小さくだが声が聞こえてきた。
そちらを見ると、同じ様に小鬼射手が地面に倒れているのだが、一体何が…
『情報提示。脅威個体総数、30体に減少しました。』
「おい君!大丈夫か!?まだ生きてるか!?」
良く通る大きな声で、誰かがこちらに呼びかけて来る。
久しぶりに人の声を聞いた気がするが…誰だ?
レクレットさん?それとも他の村人?
いや、それなら俺の名前を呼ぶだろうし…知らないのなら、村人じゃないのか?
「まだ生きているなら、返事をしてくれ!」
さっきよりもその声は近く聞こえた…
誰でもいいが、下手に動かれると危な…!!
やばいだろ!?
「誰か知りませんが動かないで下さい!街道の外に出たら怪我じゃ済みませ…」
慌てて顔を上げて声をかけたが、まだ距離があるためハッキリと顔は見えない…
が、遠目にも分かる落ち着いた緑の長髪は、村の中で見た記憶はないが、太陽の光を反射してキラキラと輝いている様に見える。
魔物に襲われて状況なのに、一瞬見惚れてしまった…
さっきの馬車の護衛だろうか?
「無事だったか!この辺りにある液体のことなら大丈夫、レクから聞いた!近づいたりしない…よ!」
GAGYA!
KYAN!
その男?は、そう言いながら、どうやったのか分からないが、同時に2本の矢を放つ。
『情報提示。脅威個体総数、28体に減少しました。』
彼?が相当な腕なのは、素人目に見てもすぐ分かる。
なんせ、かなりの距離がある様に見えた鬼馬狼とそれに乗る乗獣小鬼の急所を、2本の矢で正確に射抜いていたからね。
そして、矢を放った後の立ち姿が、物凄く格好良い…
偶然だとは思うけど、太陽の光がスポットライトの様に彼を照らし出していて、どこか神々しさすら感じてしまう程だ…
「この始末、後で謝罪でもなんでもさせて貰う。今は残りを片付けよう!」
…危ない…あまりの綺麗さに、忘れそうになっていたが、元はこいつらが魔物をトレインして来たのが悪いんだ。
これが終わったら、きっちり確実に落とし前を付けさせるとして…
俺は少し疑問に思ってしまう。
今見た彼の弓の腕なら、ここまでわざわざトレインして来なくても、途中で対処できたんじゃ無いか?
少なくとも、もっと数を減らすことは出来ただろうし…
そんなふうに思っていると、痩身鬼の咆哮が響き渡る。
GAGYARRRAAA!!!
今は無駄なことを考えている余裕はないか…
「あんた!…えっと…」
「ガジャノだ!」
「ガジャノ、あんた弓が使えるんだろ!?向こうの痩身鬼を狙って撃てないか!?」
司令塔を落とせば、大概の集団は瓦解する。
ガジャノの弓の腕ならもしかしたらと思い、駄目元ではあるが聞いてみたのだが、彼は口元に手をやり、考え込む様に黙ってしまった。
早く答えて欲しいのだが、ガジャノの位置からだと、流石に遠すぎるだろうか?
「位置が悪い!ここからでは相手が見えないから無理だ!」
距離よりも位置取りなのか…
だとしたら、彼には下手に動かれるよりも、周辺に散ってしまった奴ら…
『情報提示。脅威個体総数、19体に減少しました。』
話している間にまた減った…村の方に向かった魔物が、罠にかかって死んだんだろう。
もう少ししたら、正面で残っている奴ら以外全滅するんじゃ無いか?
GIGYAAAAANN!!!
俺たちの会話が聞こえたのか、それとも数が減ったことに気がついたのか…痩身鬼が今までとは違う甲高い声で叫び、それに呼応するように小鬼長達も声を上げ、威嚇のつもりなのか、声に合わせて剣と盾を打ち鳴らし、足踏みまで始めた。
GAGO!GAGO!GAGO!GAGO!…
数が揃っていたら、相当なプレッシャーを感じたかも知れないが、10体程度だとあまり効果は無いと思う…
そもそも…
『情報提示。毒液の檻の使用が可能です。』
タイミングよく魔法の使用も可能になったし、盛り上がっているところに水を差す様だが、さっさと終わりにしよう。
「ナビさん、奴等を取り囲むように範囲指定、出来たら魔法を使うよ。」
『情報提示。対象との距離が遠すぎます。約6m、対象に近づいて下さい。』
「な…嘘だろ…」
これで勝てると思っていたのに、まさかの接近指示だと…?
「ナビさん?なんで近づく必要が?」
『情報提示。毒液の檻の現在の最大有効範囲は、1辺が10mの正方形、それ以上の大きさにする場合、強度的な劣化が発生してしまいます。
範囲指定に指定できる起点箇所は、マスターから5m以内になります。
以上のことから、対象との距離を10m
以下にすることを推奨します。』
…まさかの射程外…
無理に近寄らずに砂礫旋風が使える様になるのを待とうかな…
…せっかくその気になったのに…
ーーーー
作者です。
次回、話数上は50…なのに思ったより進んで無いですね…
更新文字数が少なく、進みが遅くてすみません…
感想その他、お時間あれば是非。
事前に配置していた毒液の檻に引っかかったのかと思ったが、原形を保っている見た目から、そうではないのだとすぐ分かる。
GOGA…
GEHI…
反対側からも、小さくだが声が聞こえてきた。
そちらを見ると、同じ様に小鬼射手が地面に倒れているのだが、一体何が…
『情報提示。脅威個体総数、30体に減少しました。』
「おい君!大丈夫か!?まだ生きてるか!?」
良く通る大きな声で、誰かがこちらに呼びかけて来る。
久しぶりに人の声を聞いた気がするが…誰だ?
レクレットさん?それとも他の村人?
いや、それなら俺の名前を呼ぶだろうし…知らないのなら、村人じゃないのか?
「まだ生きているなら、返事をしてくれ!」
さっきよりもその声は近く聞こえた…
誰でもいいが、下手に動かれると危な…!!
やばいだろ!?
「誰か知りませんが動かないで下さい!街道の外に出たら怪我じゃ済みませ…」
慌てて顔を上げて声をかけたが、まだ距離があるためハッキリと顔は見えない…
が、遠目にも分かる落ち着いた緑の長髪は、村の中で見た記憶はないが、太陽の光を反射してキラキラと輝いている様に見える。
魔物に襲われて状況なのに、一瞬見惚れてしまった…
さっきの馬車の護衛だろうか?
「無事だったか!この辺りにある液体のことなら大丈夫、レクから聞いた!近づいたりしない…よ!」
GAGYA!
KYAN!
その男?は、そう言いながら、どうやったのか分からないが、同時に2本の矢を放つ。
『情報提示。脅威個体総数、28体に減少しました。』
彼?が相当な腕なのは、素人目に見てもすぐ分かる。
なんせ、かなりの距離がある様に見えた鬼馬狼とそれに乗る乗獣小鬼の急所を、2本の矢で正確に射抜いていたからね。
そして、矢を放った後の立ち姿が、物凄く格好良い…
偶然だとは思うけど、太陽の光がスポットライトの様に彼を照らし出していて、どこか神々しさすら感じてしまう程だ…
「この始末、後で謝罪でもなんでもさせて貰う。今は残りを片付けよう!」
…危ない…あまりの綺麗さに、忘れそうになっていたが、元はこいつらが魔物をトレインして来たのが悪いんだ。
これが終わったら、きっちり確実に落とし前を付けさせるとして…
俺は少し疑問に思ってしまう。
今見た彼の弓の腕なら、ここまでわざわざトレインして来なくても、途中で対処できたんじゃ無いか?
少なくとも、もっと数を減らすことは出来ただろうし…
そんなふうに思っていると、痩身鬼の咆哮が響き渡る。
GAGYARRRAAA!!!
今は無駄なことを考えている余裕はないか…
「あんた!…えっと…」
「ガジャノだ!」
「ガジャノ、あんた弓が使えるんだろ!?向こうの痩身鬼を狙って撃てないか!?」
司令塔を落とせば、大概の集団は瓦解する。
ガジャノの弓の腕ならもしかしたらと思い、駄目元ではあるが聞いてみたのだが、彼は口元に手をやり、考え込む様に黙ってしまった。
早く答えて欲しいのだが、ガジャノの位置からだと、流石に遠すぎるだろうか?
「位置が悪い!ここからでは相手が見えないから無理だ!」
距離よりも位置取りなのか…
だとしたら、彼には下手に動かれるよりも、周辺に散ってしまった奴ら…
『情報提示。脅威個体総数、19体に減少しました。』
話している間にまた減った…村の方に向かった魔物が、罠にかかって死んだんだろう。
もう少ししたら、正面で残っている奴ら以外全滅するんじゃ無いか?
GIGYAAAAANN!!!
俺たちの会話が聞こえたのか、それとも数が減ったことに気がついたのか…痩身鬼が今までとは違う甲高い声で叫び、それに呼応するように小鬼長達も声を上げ、威嚇のつもりなのか、声に合わせて剣と盾を打ち鳴らし、足踏みまで始めた。
GAGO!GAGO!GAGO!GAGO!…
数が揃っていたら、相当なプレッシャーを感じたかも知れないが、10体程度だとあまり効果は無いと思う…
そもそも…
『情報提示。毒液の檻の使用が可能です。』
タイミングよく魔法の使用も可能になったし、盛り上がっているところに水を差す様だが、さっさと終わりにしよう。
「ナビさん、奴等を取り囲むように範囲指定、出来たら魔法を使うよ。」
『情報提示。対象との距離が遠すぎます。約6m、対象に近づいて下さい。』
「な…嘘だろ…」
これで勝てると思っていたのに、まさかの接近指示だと…?
「ナビさん?なんで近づく必要が?」
『情報提示。毒液の檻の現在の最大有効範囲は、1辺が10mの正方形、それ以上の大きさにする場合、強度的な劣化が発生してしまいます。
範囲指定に指定できる起点箇所は、マスターから5m以内になります。
以上のことから、対象との距離を10m
以下にすることを推奨します。』
…まさかの射程外…
無理に近寄らずに砂礫旋風が使える様になるのを待とうかな…
…せっかくその気になったのに…
ーーーー
作者です。
次回、話数上は50…なのに思ったより進んで無いですね…
更新文字数が少なく、進みが遅くてすみません…
感想その他、お時間あれば是非。
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