夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
53 / 100
第1章

第49話 そう都合よくは行かない

しおりを挟む
本棚とテーブルの隙間から、そっと声の聞こえた方を伺うと、小鬼射手ゴブアーチャー達が地面に転がっていた。

事前に配置していた毒液の檻ベノムケージに引っかかったのかと思ったが、原形を保っている見た目から、そうではないのだとすぐ分かる。

GOGA…
GEHI…

反対側からも、小さくだが声が聞こえてきた。
そちらを見ると、同じ様に小鬼射手ゴブアーチャーが地面に倒れているのだが、一体何が…

『情報提示。脅威個体総数、30体に減少しました。』

「おい君!大丈夫か!?まだ生きてるか!?」

良く通る大きな声で、誰かがこちらに呼びかけて来る。
久しぶりに人の声を聞いた気がするが…誰だ?
レクレットさん?それとも他の村人?
いや、それなら俺の名前を呼ぶだろうし…知らないのなら、村人じゃないのか?

「まだ生きているなら、返事をしてくれ!」

さっきよりもその声は近く聞こえた…
誰でもいいが、下手に動かれると危な…!!
やばいだろ!?

「誰か知りませんが動かないで下さい!街道の外に出たら怪我じゃ済みませ…」

慌てて顔を上げて声をかけたが、まだ距離があるためハッキリと顔は見えない…
が、遠目にも分かる落ち着いた緑の長髪は、村の中で見た記憶はないが、太陽の光を反射してキラキラと輝いている様に見える。
魔物モンスターに襲われて状況なのに、一瞬見惚れてしまった…

さっきの馬車の護衛だろうか?

「無事だったか!この辺りにある液体のことなら大丈夫、レクから聞いた!近づいたりしない…よ!」

GAGYA!
KYAN!

その男?は、そう言いながら、どうやったのか分からないが、同時に2本の矢を放つ。

『情報提示。脅威個体総数、28体に減少しました。』

彼?が相当な腕なのは、素人目に見てもすぐ分かる。
なんせ、かなりの距離がある様に見えた鬼馬狼ゴブウルとそれに乗る乗獣小鬼ゴブライダーの急所を、2本の矢で正確に射抜いていたからね。

そして、矢を放った後の立ち姿が、物凄く格好良い…
偶然だとは思うけど、太陽の光がスポットライトの様に彼を照らし出していて、どこか神々しさすら感じてしまう程だ…

「この始末、後で謝罪でもなんでもさせて貰う。今は残りを片付けよう!」

…危ない…あまりの綺麗さに、忘れそうになっていたが、元はこいつらが魔物モンスターをトレインして来たのが悪いんだ。
これが終わったら、きっちり確実に落とし前を付けさせるとして…

俺は少し疑問に思ってしまう。

今見た彼の弓の腕なら、ここまでわざわざトレインして来なくても、途中で対処できたんじゃ無いか?
少なくとも、もっと数を減らすことは出来ただろうし…

そんなふうに思っていると、痩身鬼ライトオーガの咆哮が響き渡る。

GAGYARRRAAA!!!

今は無駄なことを考えている余裕はないか…

「あんた!…えっと…」

「ガジャノだ!」

「ガジャノ、あんた弓が使えるんだろ!?向こうの痩身鬼ライトオーガを狙って撃てないか!?」

司令塔を落とせば、大概の集団は瓦解する。
ガジャノの弓の腕ならもしかしたらと思い、駄目元ではあるが聞いてみたのだが、彼は口元に手をやり、考え込む様に黙ってしまった。

早く答えて欲しいのだが、ガジャノの位置からだと、流石に遠すぎるだろうか?

「位置が悪い!ここからでは相手が見えないから無理だ!」

距離よりも位置取りなのか…
だとしたら、彼には下手に動かれるよりも、周辺に散ってしまった奴ら…

『情報提示。脅威個体総数、19体に減少しました。』

話している間にまた減った…村の方に向かった魔物モンスターが、罠にかかって死んだんだろう。
もう少ししたら、正面で残っている奴ら以外全滅するんじゃ無いか?

GIGYAAAAANN!!!

俺たちの会話が聞こえたのか、それとも数が減ったことに気がついたのか…痩身鬼ライトオーガが今までとは違う甲高い声で叫び、それに呼応するように小鬼長ゴブトーチ達も声を上げ、威嚇のつもりなのか、声に合わせて剣と盾を打ち鳴らし、足踏みまで始めた。

GAGO!GAGO!GAGO!GAGO!…

数が揃っていたら、相当なプレッシャーを感じたかも知れないが、10体程度だとあまり効果は無いと思う…
そもそも…

『情報提示。毒液の檻ベノムケージの使用が可能です。』

タイミングよく魔法の使用も可能になったし、盛り上がっているところに水を差す様だが、さっさと終わりにしよう。

「ナビさん、奴等を取り囲むように範囲指定、出来たら魔法を使うよ。」

『情報提示。対象との距離が遠すぎます。約6m、対象に近づいて下さい。』

「な…嘘だろ…」

これで勝てると思っていたのに、まさかの接近指示だと…?

「ナビさん?なんで近づく必要が?」

『情報提示。毒液の檻ベノムケージの現在の最大有効範囲は、1辺が10mの正方形、それ以上の大きさにする場合、強度的な劣化が発生してしまいます。
範囲指定に指定できる起点箇所は、マスターから5m以内になります。
以上のことから、対象との距離を10m
以下にすることを推奨します。』

…まさかの射程外…
無理に近寄らずに砂礫旋風バレットストームが使える様になるのを待とうかな…

…せっかくその気になったのに…



ーーーー
作者です。
次回、話数上は50…なのに思ったより進んで無いですね…
更新文字数が少なく、進みが遅くてすみません…
感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...