夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第50話 予想していなかった効果

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GAGYAー!
GAGO!GAGO!

GAGYAー!
GAGO!GAGO!

さっきからずっと騒いでいるが…
騒ぐだけで特に何かしてくる感じはしない…
ただ、異常にうるさいため、ストレスはハンパない…

GAGYAー!
GAGO!GAGO!

GAGYAー!
GAGO!GAGO!

俺にストレスをかけて、イラつかせようとしているなら、かなりの効果がある…

GAGYAー!
GAGO!GAGO!

GAGYAー!
GAGO!GAGO!

「いい加減にしろや!!」

思わず声を出して、テーブルの囲いから顔を上げてしまった。

ビュン!ゴッ!

何かが耳元を通り過ぎて地面に落ちる…

「へっ?」

『情報提示。投石です。テーブルを立てて盾にして下さい。』

とう…バラバラバラバラバラバラ!

「ぎ!いだっ!ちょ!」

ナビさんの声の後、空から無数の石が降ってきた。
毒液の檻ベノムケージは、空にも展開されている文字通り檻の様なものなので、大きな石は毒液で溶かされて小さく脆くなり、小さいものも格子に当たると溶けてなくなってくれるのだが…

しかし、全てを防げるものでもなく、毒液の格子を抜け、直接降ってくる石もかなりの数がある。
その殆どは小石レベルのものなんだが…当たったら石なので普通に痛い…

机を起こし、その下に身を隠した後も、まだまだ石は飛んでくる。

GYAGYAGYAー!
GAGAGA!!GAGAGA!!GAGAGA!!

なんだ?今までも耳障りな叫び声を散々聞かされて、相当不快な気分にさせられていたが…あいつら…今笑った?

この投石も、ただの嫌がらせ程度なんだろう。
本気で攻撃するつもりなら、もっと近づいてまっすぐ投げてくればいい。
…そうしないのは、これだけ魔物モンスターを殺しているのに、まだ俺の事を舐めているからか?

『情報提示。砂礫旋風バレットストームの使用が可能になりました。』

「…よし!ナビさん、すぐに範囲指定してくれ!全員まとめて吹き飛ばしてやる!」

『要請受諾。対象範囲…設定完了しました。』

それじゃ早速…

『行動提案。砂礫旋風バレットストーム展開後、敵性体への接近、毒液の檻ベノムケージの追加展開を推奨します。』

魔法発動のため、詠唱開始しようとしたが、ナビさんに止められる。

「え?…ナビさん?それは、削りきれない…って事か?」

『回答提示。敵性体の装備、種族特性を考慮した結果です。』

…また待つの?盛り上がったのがバカみたいじゃん…

「ナビさん…そういうのは今度から先に言ってね…」

『要請受諾。行動方針の早期提案を考慮します。』

……


それから暫く、相変わらずバラバラと降ってくる石の雨をテーブルの下で避けながら、ナビさんの言葉を待っていた…

『情報提示。生体魔素転換路エーテルリアクターの活性が規定値を超えました。砂礫旋風バレットストーム及び毒液の檻ベノムケージの使用が可能です。』

「…長かった…」

数分とはいえ、騒ぎ立てる魔物ゴミの声を聞き続けたり、ひたすら石が上から降ってきたりしたのは、異常に長く感じた…

「ナビさん、砂礫旋風バレットストームの範囲指定…は終わってるか…魔法発動後に、俺が動き出すタイミングと、毒液の檻ベノムケージの範囲指定、発動タイミングの指示よろしく!」

『要請受諾。砂礫旋風バレットストームの範囲指定、微調整完了を報告。』

「…散々苛立たせてくれたんだ…この落とし前はつけてもらうからな!?
…岩の輩よ、石の輩よ、土の輩よ、我が求めに答えその身を砕け!我の作りし風に乗り、其方らは、敵を切り裂く剣となり、敵を貫く槍となり、敵を喰らう牙となりて空を舞え!我が敵にその力を見せつけろ!!耐え切れるもんなら耐えてみろ!!砂礫旋風バレットストーム!!」

机の下で魔法の詠唱を終わらせると、周りに散らばっていた小石がふわりと浮き上がる。
浮いた小石は、意思を持っているように前方に向かって勢い良く飛び出していった。

GYA?GAGYAー!
GAGOGA!!
GAGOGA!!

魔物モンスター達は、ガチャガチャと音を立てて動き始めたが、もう遅い。

石の降ってくる音と不快な声が止み、少しだけ気が晴れた。

『行動提案。移動を開始して下さい。』

ナビさんに言われ、テーブルの下から外に出ると、目の前には大きな竜巻が発生していた。
激しい風の音と、石や土塊が魔物モンスターに当たるバシバシという音は聞こえてくるが、奴等の悲鳴は聞こえてこない。

「ナビさんが言っていたのはこういう事か…」

悲鳴が聞こえないってことは、殆どダメージも無いんじゃないか?

突然飛び出してくることも考えられたが、その時はナビさんが警告してくれる。
ほんの少しだけ慎重になりながら、竜巻に向かって歩いて行った。

蔦玉の横を通り、魔物モンスターの成れの果てを踏み越える。
魔物モンスターとはいえ、血や肉片の山を踏み抜くのは精神的にくるものはあったけど、迂回している場合じゃないので、我慢して乗り越えた…

毒液の檻ベノムケージの囲いを抜け、竜巻に向かって数歩歩くと、ナビさんの声が聞こえた。

『行動提案。毒液の檻ベノムケージを使用して下さい。』

竜巻に巻き込まれるんじゃないかと、少し不安になったが、ここはナビさんを信じよう。

「…毒液の檻ベノムケージ!」

魔法はいつも通り発動し、地面から毒液の柱が…竜巻に巻き上げられていった…

「やっぱり…竜巻が消えてからじゃないと囲いにならな…」

GAGYAー!!
GUOOOー!!
GAAAー!!

「え?」

いきなり魔物モンスターの悲鳴が聞こえ始める。
それと同時に竜巻の色も、本来のグレーっぽい色から、毒液の檻ベノムケージのような薄黄色へと変化していく。

「ナビさん?…どういう…いや、何をしたんだ?」

『回答提示。砂礫旋風バレットストームの内部に毒液の檻ベノムケージを展開、展開完了前の毒液の檻ベノムケージの毒液を、砂礫旋風バレットストームの風により飛散させました。
これにより、砂礫旋風バレットストームは、特殊状況魔法、毒液の旋風ベノムストームへと変化しました。』

…うん。よく分からんけど、そんなこと出来たのね…

GAGYA…GIGAーーー!!



ナビさんの説明が終わると同時に、魔物モンスターの声は聞こえなくなった…

…早くね…?



ーーーー
作者です。
やっと終わった…
次回戦後処理になります。
感想その他、お時間あれば是非。
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