夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
52 / 100
第1章

第48話 遠距離攻撃はズルい。

しおりを挟む
弓を構えた小鬼射手ゴブアーチャー達は、地面に伏せている俺を見て、かすかに笑ったように見えた。
距離にして15mもない…奴らの持っている小型の弓でも、この距離なら十分に射程範囲内だろう…
避けられるの…か…?
何か…

『蔦玉を!』

ナビさんの声で、俺は慌てながらも急いでストレージリングを操作する。

GIGYAAAAA!!!

痩身鬼ライトオーガが声を上げるのとほぼ同時に、残っていた蔦玉を取り出すことが出来た。

ザン!ズカッ!ズド!ドスッ!

「ぐが!」

殆どの矢を受けきることができたが、残っていた蔦玉は、自分の身長くらいしかないものだったので、全ての矢を防ぐ事が出来なかった…
最後の1本が、蔦玉の端を抜けて、俺の右肩を切り裂いていく。
焼けるような痛みに、俺は尻餅をついてしまった。

「クソ!ナビさん!指示を!!」

GIGYAAAAA!!!

『指示提示。2歩後退。テーブルを正面に出し、壁にして下さい。』

ナビさんの指示通りに倒れたまま少し後ろに下がり、ストレージリングからリビングテーブルを出して地面に立てる。

ガン!ドン!ドン!ザン!

先程と違う角度で矢が飛んできて、立てたテーブルに突き刺さった。
ギリギリ…

『次弾きます!下がって下さい!』

ホッとする間も無く、ナビさんから警告を受け、急いで体を後ろに下げる。

ジュッ!バン!ドスッ!ザス!

矢の飛んで来る向きが、さっきよりも更に左右に広がり、テーブルのカバー範囲外から、さっきまでいた所に矢が突き立って…

『テーブルを追加、左右に壁を作って下さい!』

考える時間はない。ストレージリングを急いで操作し、ダイニングテーブルを取り出して右側…

ガン!ドスッ!ビュッ!シュドッ!

「が…!っらー!!」

1本が左腕に命中。激しい痛みに体が硬直してしまう。
まるで、焼けた鉄の棒でも押し当てられたような最悪な感じだ…
それでも、これ以上攻撃を受けるわけには行かない…
気合で体を動かし、先に出していたテーブルを自分の左側に引き倒す。

安全地帯で一息つけるかと思ったが、そうもいかない…
ガン!ドン!と一定の間隔で矢が飛んで来て、その度にテーブルの後ろで身を縮ませることになってしまった。

GIGYAAAAA!!!

KIRRRRRR…
GUGAAAAAA!!!
WOOOOOOO!!!

声の感じからすると、さっきの痩身鬼ライトオーガだろうか…1体の魔物モンスターが吠えると、他の魔物モンスターが呼応して移動し始めたような振動が伝わって来た。

「ナビさん!どうなってる!?」

『情報提示。乗獣小鬼ゴブライダー疾風蟷螂サイマンティスが左右に展開、村の方に進んで行きます。』

俺からの反撃がないことで、村に向けての進行を再開できると思ったんだろう。
しかし、そちらは放置しても対処済みだから問題ない…はずだ。

問題は…他の魔物に指示を出している痩身鬼ライトオーガ達と、遠距離から攻撃できる小鬼射手ゴブアーチャー達だ…
立ち位置的にも、痩身鬼ライトオーガ達がリーダー格…今回の元凶がこいつなのは間違いないだろうが、今も続いている遠距離からの攻撃…小鬼射手ゴブアーチャーがいる限り、ここから顔を出すことすら出来ない…

「ナビさん、次は!?」

『情報提示。そのまま動かず、生体魔素転換路エーテルリアクターの活性化を待って下さい。』

ナビさんは状況が落ち着いたことで、音声速度が元に戻った。
飛んで来る矢の数は変わらないが、今のところ机を貫通するようなことはなく、なんとか追加の被弾は防げている…
しかし、魔法がまだ撃てないのは辛いところだ…

「あークソ!った!!!ナビさん!この矢どうしたらいいんだよ!?」

腕に刺さった矢が、少しのことで腕の中を動き、その度に鋭い痛みと熱さを追加して来る…
痛みで大声を出すと、それすら痛い…

『行動指示。失血の恐れがあるため、そのままにしておいて下さい。』

「く…この痛みを我慢しろってことかよ…それで、いつになったら魔法が使えるんだ…?」

『情報提示。使用推奨魔法、砂礫旋風バレットストームの使用まで、15分。毒液の檻ベノムケージの使用まで、5分です。』

おそらく、ナビさんは複数を巻き込める魔法を推奨してくれているんだろうが…
どちらも随分時間が…

GOGA!
GAGYA!

ナビさんと話していると、村の方から魔物モンスターの叫び声が聞こえてきた。
それと同時に、今まで飛んできていた矢も止まる…



ーーーー
作者です。
まだもう少し、戦い?は続きます。
感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...