異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第三章 ウェルカムキャンプ編

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阿修羅丸。
俺が召喚の契約を結んだ存在だ。
どのような存在かと言われると、はっきりと答えることはできない。人のような形をしたり、カピバラのような動物の形をしたりすることができる。
ただし、明確に言えることがある。
それは、人外の力を持っているということ。


「俺様、参上ーー!!」



召喚魔法で呼び出そうとした途端、頭上からプリティなフォルムの生物が降ってきた。
行動範囲が広い阿修羅丸は、近くで様子を探っていたらしい。


「阿修羅丸! ……召喚魔法で召喚されるところを初めて見たな。」


「……いいや、キル。俺は召喚魔法を発動していないよ。自然に降ってきたんだ。」



俺がそういうと、キルたちは何とも言えない表情で俺と阿修羅丸を交互に見た。
そんな顔をされても……自由行動ができる阿修羅丸の行動は予測できないよ。



「よう、アース! 俺様が来てやったぜ。面白そうなやつを相手にしているようだな。」


「……面白い相手が出てくるまで様子を見ていた、の間違いじゃないの?」


「別にどっちでも同じだろ? そういう契約だ。」



阿修羅丸が戦いに参加する条件がある。
それは、俺が勝てない相手と戦っている時だ。
何をもって勝てないと判断するかは明確ではないが、明らかに格上を相手にするとき。
まあ要は、阿修羅丸が満足する相手ではないと、召喚に応じないのだ。
今回のナレハテは、阿修羅丸のお眼鏡にかなったらしい。



「ヒヒヒヒヒヒヒ。白髪、ソノチンケナ生物ハオ前ノ手下カ?矮小ナ人間ニ、フサワシイミスボラシサダナ。」


「お前のような猿真似しか能のない魔物には、俺様のこのプリティさはわからないだろうよ。」


「……猿真似ダト? ヒヒヒヒヒヒヒ、知能ノ低イ雑魚ニハワカラナクテモシカタガナイ。雑魚ハ雑魚ラシク、跡形モナクキエサルガイイ。」


ナレハテはそういうと、大きく息を吸い込むような動作をした。


「アース! あいつ、ブレスを吐こうとしているッスよ! すぐに俺とアースで壁の展開を」


「お前たちの障壁で、竜のブレスを防げるわけがないだろう? いいから俺様に任せて、お前たちは指をくわえてそこで見ていろ。」



阿修羅丸は何の威厳もない姿で意地悪い笑みを浮かべて、キルたちを後ろへと追いやった。
見た目のとおり、今の阿修羅丸には竜と渡り合う力はない。現在の姿は、阿修羅丸の複数ある形態のうち、日常使い用の姿でしかないのだ。


「さあ、アース! さっさとやろうぜ!」


「わかったよ、阿修羅丸。周囲に被害が出ないように、やりすぎ注意で頼むよ。」


「おう、任せとけ!」


阿修羅丸は短い脚を了解とばかりに振り上げると、堂々とブレスを吐こうとしているナレハテの前に立ちふさがった。



『我、契約に従いて獣神の顕現を欲す』


『俺様、獣神の名のもとに雷の顕現を承諾す』


『獣神化 麒麟』




俺と阿修羅丸の詠唱が重なると、阿修羅丸の姿はたちまち膨張し、金色に光り輝いた。
阿修羅丸の形態の1つ、「獣神 麒麟」。龍の顔を持ち、牛の尾と馬の蹄を持っている。頭部には2本の立派な角を持っている。雷を司る獣神であり、2本の角から人外の雷を放つ。中遠距離戦に向いた、戦闘形態だ。


「アース、お前も下がっていろ。魔法が利かなそうなら、ぶった切る。」


「了解。」


威厳のある姿には似つかわしくない指示を出した後、阿修羅丸は2本の角の間に紫色の雷を発生させた。
その瞬間、ナレハテの巨大な口から、黒い炎が発射された。


『紫電の壱』


対する阿修羅丸の角から、紫色の雷が一直線にナレハテに向かっていった。
雷は黒い炎を難なく吹き飛ばし、ナレハテの身体に直撃した。



「グアアアアアアアアア!!!」


人からは発せられることのないおぞましい声音が辺りに響き渡る。


『紫電の弐』



攻撃の手を緩めることなく、紫の雷が地面を這うようにナレハテに襲い掛かる。
その雷はナレハテの身体に巻き付くように断続的に雷のダメージを与える。



「グアアアアアアアアア!!!」



ナレハテは白目をむき、断続的な雷のショックに耐えている。
体の表面は煙を上げて、雷の跡に沿って焦げながら黒く変色している。



「ふむ。流石、竜を名乗るだけはあるな。魔法耐性がとんでもなく高い。俺様の雷をもってしても、表面をあぶるくらいに抑えられてしまうな。よし、アース、あいつが痺れているうちに切り刻む。姿を変えるぞ。」


「了解。」


魔法がだめなら、物理で切り刻むということらしい。
もちろん断る理由はないので、俺は再び詠唱を始めた。











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