異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
上 下
146 / 151
第三章 ウェルカムキャンプ編

143

しおりを挟む
『我、契約に従いて鬼神の顕現を欲す』


『俺様、鬼神の名のもとに斬の顕現を承諾す』


『鬼神化 阿修羅』



俺と阿修羅丸の詠唱が重なると阿修羅丸の大きな身体が収縮を始めて、人のフォルムへと姿を変えていった。
この世界では見ることのないであろう着物を纏い、額に1本の角を生やし刀を帯剣している。
人の姿はしているが、人とは異なる存在であることが否応なく伝わってくる姿だ。



「あれはあの時の姿の……」


「そうだね、キル。鬼神といって、まあ鬼と言われる存在だよ。刀を用いた物理攻撃が主体の姿だ。」


「この姿では久しぶりだな、赤髪。まあ、今はそんなことはどうでもいいか。とりあえず、あのデカブツをぶった切るぜ。」


阿修羅丸は緊張感がみじんも感じられない軽い口調でそう言うと、刀に手をかけた。


「マ、マッテクレ……」

「待ってなんかやんねーよ。」

『修羅の道』

阿修羅丸は不敵な笑みを見せながら、目にもとまらぬ速さで刀を振りぬいた。
ナレハテの大きな身体は、ゆっくりと切り口にそって地面へと崩れ落ちた。



「竜といっても、所詮はまがい物だったな。偽物は偽物でしかないな。とりあえず、終わったぜ。」


「うん、ありがとう。ご褒美に前に行きたがっていたスイーツのお店に連れていくよ。」


「当然だな。食べ放題で頼む。」


「お店に迷惑をかけないようにね。とりあえず、いつもの姿に戻ろうか。」


「そうだな。魔力の消費が大きいしな。」


『解』


俺と阿修羅丸の詠唱が重なると、いつものプリティな姿へともどった。
阿修羅丸の姿が元に戻ると、少し離れていたところにいたキルたちが駆け寄ってきた。




「アースと阿修羅丸、ナレハテを討伐してくれてありがとう。……その初めて見るものばかりで、色々聞きたいことがあるんだが。」


「そうだよね、キル。だけど、ごめん。召喚魔法の代償で当分は目を……阿修羅丸、キルたちにちゃんと説明を」


そこまで言うと、俺の意識はぷっつりと途切れてしまった。







ーー





※キルヴェスター視点



阿修羅丸はナレハテを圧倒し、一撃で倒してしまった。
阿修羅丸の複数の姿のことについて、アースにいろいろと聞こうとした途端に、アースの意識を失い倒れてしまった。



「アース! どうしたんだ!? 返事をしろ、アース!!」


「殿下、アースはナレハテの攻撃で毒を受けたんッスよね? もしかして、毒の効果がまだ残っているんじゃないッスか?」

「殿下、後始末は俺達に任せてすぐにアースを回復魔導士の所にお連れください。」


「……ああ、わかった。すまない、後は任せた。」



俺は倒れてしまったアースを抱え、残りの魔力を総動員し走り出そうとした。
しかし、不意に肩に重さがかかり頬をくすぐるように動物の毛が当たった。


「まあ、落ちつけよ赤髪。アースをよく見てみろ。ただ寝ているだけだ。」


「……は?」



阿修羅丸に言われたとおりアースをよく見てみると、確かに寝息を立てている。
顔色も特に悪くないし、異常がないように見えるが……。



「どういうことだ? 確かに激しい戦いで疲弊しているが、倒れるように寝てしまうなんて普通ではない。何か知っているなら、聞かせてくれ。」


「はー、めんどくさい。だけど、アースはさっき説明しろと言っていたしな……。仕方ないな。その代わり、スイーツをたくさん貢げよ。」


阿修羅丸は短い脚で俺の肩をぽふぽふと叩きながらそう言った。
そんなもので説明を得られるなら安いものだ。俺は首を縦に振り了解を意を示した。



「ところでさっきの戦いを見てどう思った? 俺様、強かっただろう? 惚れたか?」


「……確かに強かった。だけど、今はそんなことどうでも」


「それが何の代償もなしに使えると思うか? 」
















しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!

ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

処理中です...