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第三章 ウェルカムキャンプ編
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「………いや、俺は大丈夫だ。」
「じゃあ、大丈夫であることを確認させて。側近のみんなも心配しているよ。」
キルは一つ息を吐くと、上に着ていたシャツを脱ぎながら俺に背中を向けるようにして椅子に腰かけた。
よし、とりあえずキルの状態を確認できそうだ。
俺はゆっくりと、キルの背中に触れた。前よりも広くなった背中、そして前よりも姿勢が良くなっている。………だけどこれは、かなり背中が張っている。そして肩も、張っているし、かなり凝っている。
「キル、ゆっくりと右腕を上にあげて。………次に、ゆっくりと腕を横に倒してみて。」
キルは一瞬迷ったようだが、あきらめたように腕を少しずつ横に倒していった。すると、腕を10度くらい倒したところでキルの動きがぴたりと止まった。俺はすぐに、キルの腕を横から支えた。
「やっぱり、肩を少し痛めているね。自覚症状はあった?」
「………ああ。」
「訓練がオーバーワーク気味だったという自覚は?」
「………ああ。焦っていたんだ。だけど、今日のアースの言葉を聞いて改めることにした。周りに心配をかけないように訓練することにするよ。」
キルの背後にいるためキルの表情はわからないが、その声音はいつもよりひどく切なげだった。
っと、キルの腕を上げさせたままにしてしまった。俺は慎重にキルの腕を支えながら、腕を下ろした。
「じゃあ、回復とマッサージをするから………」
「いや、ちょっと待ってくれ。先に俺の方も確認させてほしい。………アースの背中の傷を。」
そうか………キルはずっと俺の背中の傷を気にしていたんだ。3年前、傷は既に完治していたが傷跡は残るとのことだった。キルは、どのくらい傷跡が残っているのか確かめたいのだろう。
………キルが気にすることではないのだけどな。
「わかったよ。………どうかな、背中の傷だから自分では確かめていなかったんだ。もちろん痛みもないし、傷が残っていても俺は全然気にしないよ。」
俺は上着を脱ぎながら、キルにそう尋ねた。実際、痛みがないのは本当だし、傷跡を気にしていないのも本当だ。自分では見えないしな。………だけど、キルが気にするならきれいに治っていればいいな。
「傷跡は………薄くはなっている。だが、まだ痛々し気に残っているな。」
すると、キルが俺の背中にゆっくりと触れた。そして、傷跡をなぞるかのように指をスーッと滑らせた。
いや、ちょっと待って。よくよく考えると、恥ずかしすぎるし、なによりくすぐったい。
「ちょ、ちょっとキル! くすぐったいんだけど………。」
「す、すまない。………そういえば、アースは魔法の訓練だけでなく、身体も鍛えていたのか?」
「へ?」
俺は自分の身体に視線を落とした。
確かに、近接戦になっても最低限動けるように、身体トレーニングも行っていた。もともと筋肉がつきにくい体質だったが、幸い薄く腹筋が割れるようになった。
「い、いや! 昔よりも筋肉がついたなと思ってな。」
「そ、そうだね! 近接戦に対応するために少しね。………キルの方こそ、昔よりも………。」
俺はそういいながら、キルを正面から見つめた。
先程は仕事モードだったから意識しないようにしていたけど、キルの筋肉が眩しくて耐えられそうにない。
もともと筋肉質だったが、3年間の訓練のおかげか見事な6パックになっている。
「触るか?」
「は!? ま、間に合ってるので大丈夫です!」
「………間に合っているという意味について聞きたいが………アースなら構わない。」
キルはそういうと、俺の手を取り自身の身体に押し当てた。
い、いやいや! これって、どういう状況なの? なんで俺が触りたいみたいなことになっているのかわからないし、それにキルの言った意味もよくわからない。
よし、こうなったら筋肉について分析するしかない。うん、仕事モードだ。
俺はゆっくりと手を滑らせた。
剣を振っているためか、胸筋もしっかりと鍛えられている。そして腹筋。6パックに割れていることはもちろんだけど、しっかりとバランスよく鍛えられている。剣を振るだけでなく、筋力トレーニングをきちんと行っている証拠だ。それからこの………骨盤左右から下腹部にV字に伸びているこの通称エロ筋と呼ばれる筋肉。13歳でこの筋肉を身につけているのはいかがなものか?
それにしても見事なエロ筋だな。筋肉がつきにくい俺の身体では一生かかっても手に入れられそうにないな。骨盤からしっかりとV字に線が伸びていて………。
「おい、アース! その先は!」
すると、頭上からキルの焦ったような大きな声が聞こえてきた。
その先ってどういう………いやーーーーー!!
エロ筋は骨盤から下腹部に伸びている筋肉のことだ。つまり骨盤から筋肉をなぞっていくと、その先は………。
俺はすぐに両手を上げて、無抵抗の意思表示をした。
「ご、ごめんね! その………筋肉の分析に夢中になっていただけなんだ。決して、先まで触るつもりはなかったよ!」
「い、いや、俺の方こそ大きな声を出して悪かった。」
ど、どうしよう………。キルと目を合わせることができない。
今日はダメだな、いろいろとおかしいような気がする。これも、久しぶりにキルに会ったことが原因だ。キルも俺も、少し距離感を掴めきれていないだけだ。
すると、扉のノック音が聞こえた。
「ちょっと、待って! 今は!」
「アース、明日の件で話が………」
俺の返事を待たずに開かれた扉の隙間から現れたのはローウェルだった。
明日の件とは、ローウェルの魔力回路の回復の件のことだろう。いや、今はそんなことよりも上裸の俺たちを見て固まっているローウェルに、しっかりと弁明することが大切だ。
「す、すみません………お邪魔しました。」
「「ちょっと、待て!!」」
俺とキルは息の合ったコンビプレーで、素早くローウェルを部屋の中に引き込んだ。
そして、貴族スマイルで事情を説明した。もちろんいかがわしいことをしていたわけではなく、お互いの怪我や傷跡の状態を確かめ合っていたということを。
「じゃあ、大丈夫であることを確認させて。側近のみんなも心配しているよ。」
キルは一つ息を吐くと、上に着ていたシャツを脱ぎながら俺に背中を向けるようにして椅子に腰かけた。
よし、とりあえずキルの状態を確認できそうだ。
俺はゆっくりと、キルの背中に触れた。前よりも広くなった背中、そして前よりも姿勢が良くなっている。………だけどこれは、かなり背中が張っている。そして肩も、張っているし、かなり凝っている。
「キル、ゆっくりと右腕を上にあげて。………次に、ゆっくりと腕を横に倒してみて。」
キルは一瞬迷ったようだが、あきらめたように腕を少しずつ横に倒していった。すると、腕を10度くらい倒したところでキルの動きがぴたりと止まった。俺はすぐに、キルの腕を横から支えた。
「やっぱり、肩を少し痛めているね。自覚症状はあった?」
「………ああ。」
「訓練がオーバーワーク気味だったという自覚は?」
「………ああ。焦っていたんだ。だけど、今日のアースの言葉を聞いて改めることにした。周りに心配をかけないように訓練することにするよ。」
キルの背後にいるためキルの表情はわからないが、その声音はいつもよりひどく切なげだった。
っと、キルの腕を上げさせたままにしてしまった。俺は慎重にキルの腕を支えながら、腕を下ろした。
「じゃあ、回復とマッサージをするから………」
「いや、ちょっと待ってくれ。先に俺の方も確認させてほしい。………アースの背中の傷を。」
そうか………キルはずっと俺の背中の傷を気にしていたんだ。3年前、傷は既に完治していたが傷跡は残るとのことだった。キルは、どのくらい傷跡が残っているのか確かめたいのだろう。
………キルが気にすることではないのだけどな。
「わかったよ。………どうかな、背中の傷だから自分では確かめていなかったんだ。もちろん痛みもないし、傷が残っていても俺は全然気にしないよ。」
俺は上着を脱ぎながら、キルにそう尋ねた。実際、痛みがないのは本当だし、傷跡を気にしていないのも本当だ。自分では見えないしな。………だけど、キルが気にするならきれいに治っていればいいな。
「傷跡は………薄くはなっている。だが、まだ痛々し気に残っているな。」
すると、キルが俺の背中にゆっくりと触れた。そして、傷跡をなぞるかのように指をスーッと滑らせた。
いや、ちょっと待って。よくよく考えると、恥ずかしすぎるし、なによりくすぐったい。
「ちょ、ちょっとキル! くすぐったいんだけど………。」
「す、すまない。………そういえば、アースは魔法の訓練だけでなく、身体も鍛えていたのか?」
「へ?」
俺は自分の身体に視線を落とした。
確かに、近接戦になっても最低限動けるように、身体トレーニングも行っていた。もともと筋肉がつきにくい体質だったが、幸い薄く腹筋が割れるようになった。
「い、いや! 昔よりも筋肉がついたなと思ってな。」
「そ、そうだね! 近接戦に対応するために少しね。………キルの方こそ、昔よりも………。」
俺はそういいながら、キルを正面から見つめた。
先程は仕事モードだったから意識しないようにしていたけど、キルの筋肉が眩しくて耐えられそうにない。
もともと筋肉質だったが、3年間の訓練のおかげか見事な6パックになっている。
「触るか?」
「は!? ま、間に合ってるので大丈夫です!」
「………間に合っているという意味について聞きたいが………アースなら構わない。」
キルはそういうと、俺の手を取り自身の身体に押し当てた。
い、いやいや! これって、どういう状況なの? なんで俺が触りたいみたいなことになっているのかわからないし、それにキルの言った意味もよくわからない。
よし、こうなったら筋肉について分析するしかない。うん、仕事モードだ。
俺はゆっくりと手を滑らせた。
剣を振っているためか、胸筋もしっかりと鍛えられている。そして腹筋。6パックに割れていることはもちろんだけど、しっかりとバランスよく鍛えられている。剣を振るだけでなく、筋力トレーニングをきちんと行っている証拠だ。それからこの………骨盤左右から下腹部にV字に伸びているこの通称エロ筋と呼ばれる筋肉。13歳でこの筋肉を身につけているのはいかがなものか?
それにしても見事なエロ筋だな。筋肉がつきにくい俺の身体では一生かかっても手に入れられそうにないな。骨盤からしっかりとV字に線が伸びていて………。
「おい、アース! その先は!」
すると、頭上からキルの焦ったような大きな声が聞こえてきた。
その先ってどういう………いやーーーーー!!
エロ筋は骨盤から下腹部に伸びている筋肉のことだ。つまり骨盤から筋肉をなぞっていくと、その先は………。
俺はすぐに両手を上げて、無抵抗の意思表示をした。
「ご、ごめんね! その………筋肉の分析に夢中になっていただけなんだ。決して、先まで触るつもりはなかったよ!」
「い、いや、俺の方こそ大きな声を出して悪かった。」
ど、どうしよう………。キルと目を合わせることができない。
今日はダメだな、いろいろとおかしいような気がする。これも、久しぶりにキルに会ったことが原因だ。キルも俺も、少し距離感を掴めきれていないだけだ。
すると、扉のノック音が聞こえた。
「ちょっと、待って! 今は!」
「アース、明日の件で話が………」
俺の返事を待たずに開かれた扉の隙間から現れたのはローウェルだった。
明日の件とは、ローウェルの魔力回路の回復の件のことだろう。いや、今はそんなことよりも上裸の俺たちを見て固まっているローウェルに、しっかりと弁明することが大切だ。
「す、すみません………お邪魔しました。」
「「ちょっと、待て!!」」
俺とキルは息の合ったコンビプレーで、素早くローウェルを部屋の中に引き込んだ。
そして、貴族スマイルで事情を説明した。もちろんいかがわしいことをしていたわけではなく、お互いの怪我や傷跡の状態を確かめ合っていたということを。
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