98 / 149
第二章 初学院編
97
しおりを挟む
「俺を召喚したお前の名は、アースと言ったか? まあ、名前なんかどうでもいい。そんなことよりもお前、俺を召喚したときの代償に何をささげたか覚えているか?」
遂に来てしまったか、この時が………。
あの時俺は、皆を守るために「俺のすべてを代償にする」と言った。そのツケを払えということだろう。すべてと口にしてしまった以上、命をとられてもおかしくない。そうなれば謹慎どころの話ではなくなるな。
せっかく転生したのに………もう少し、もう少し生きたかったな………。
「覚えています。俺のすべてを代償にする、と言いました。………覚悟はできています。」
俺がそういうと、鬼人はニターッと醜悪な笑みを浮かべた。人の命をとることが楽しいのだろうか? あの夢が現実に起こったことなのだとしたら、この鬼人は本当は優しい人なのではないかと思う。
「口では何とでも言えるなぁ。まあ、いい。すべてを代償にするということで、魂を食らいつくしてやろうかと思ったのだが、せっかく生き残る手助けをしたんだ。もっと、面白い方がいいだろ? ………ということで、いつ殺されるのかわからない恐怖に、おびえてもらおうかと思うのだがどうだぁ? 殺されるのは明日か、来年か? それとも、婚姻の前か、誕生日の前か? そんな恐怖におびえる毎日を過ごしてもらう。死ぬのは変わりないし、死ぬ時を選ぶのも俺だ。どうだ、面白いだろう?」
………いや、悪趣味すぎて面白くもなんともない。俺たちは、ただただドン引きするしかなかった。
ま、まあ、すぐに殺されることはないというをポジティブに捉えよう。
「………わかりました。ただ、1日前でもいいので、予告が欲しいです。引継ぎや挨拶等があると思いますので、よろしくお願いします。」
「………はぁ? それだけか?」
「え………。あ、そうですね。俺たちを助けてくださって、ありがとうございました。俺が生きていられるのは、あなたのおかげです。本当に、ありがとうございます。」
「………はぁ? も、もっと何かあるだろう! 俺は、好きな時にお前を殺すと言っているんだぞ!」
「い、いえ………。あなたを召喚したときに、その代償に俺の命はなくなるものだと思いましたので、その………少しでも生きられるのならうれしいです。」
俺がそういうと鬼人は、引きつった笑みを浮かべた。
もちろん、いつ殺されるのかわからないのはとてつもなく恐い。だけど、だからこそ、その時まで精一杯生きよう。
「チッ………。あー、冷めたわ。こんなつまらないガキだとは思わなかったぜ。お前、妙に大人びているな。………うん? よく見ると、お前の魂の色は………。」
鬼人はそういうと、俺の両肩を掴んで見分し始めた。
近いって、本当に近い。和装に角と目立つ部分が多くて一瞬気にならないけど、まぎれもないイケメンだ。あと、角が刺さりそうだから距離感を大切にしてほしい。
「ふははははははっ。お前は、そうか、そうなのか! うまそうな魂だなぁ。」
近い、近いって!
……それよりも、俺が転生者だということに気づいたみたいだから、変なことを言わないように阻止しなければならない。俺が口止めをしようとすると、キルが俺と鬼人の間に入ってきた。
「アースから離れてください!」
「なんだぁ? あー、役立たずの王子様か。どうしたんだ、そんなに情けない顔をして?」
見ると、キルは涙を流していた。
「お願いします。………アースの命を奪わないでください。」
「ふははははは。お前は泣くことしかできないのかぁ? まったく、泣くことしかできない王族は使い物にならないな。お前がいくら頼もうがわめこうが、こいつの魂をもらうことに変わりはない。それが、こいつとの契約だからな。」
「俺のすべてを代償に」と口に出してしまっている以上、この鬼人がいくら悪趣味だろうと言い返すことはできない。俺はキルの肩を掴んで、ゆっくりと首を振った。
「だが、少し面白そうなことが分かったからなぁ。ほんのわずかな間だが、退屈しのぎにはなりそうだ。じゃあ、気が向いたらまた来るぜぇ。」
鬼人はそういうと、姿を消してしまった。
気が向いたらまた来るということは、召喚の主導権はあちらにあるということだろうか? 現時点では、俺が召喚すれば来るというシステムではなないようだ。
それはそうと、俺が転生者であることがあの鬼人に知られたことが幸か不幸か、わずかな間だけど生きていられる猶予につながったようだ。
「………しばらく、頭を冷やしてくる。」
俺が鬼人のことを考えていると、キルはボソッとそういうと、部屋をあとにしてしまった。
引き留めようかと思ったけど、この短い間に色々とあったし、俺も頭を整理する時間が欲しかったから、引き留めなかった。
「ジールは、アースの側にいてやってくれ。俺とキースは、主の様子を見に行ってくる。俺たち側近にとっても、今は、あらゆることの転機だと思う。各々、やるべきことを整理しよう。」
「ありがとう、ローウェル。キルのこと、よろしくね。」
「………アース。また、あとでな。」
ローウェルはそういうと、俺の肩に手をのせた後、部屋をあとにした。キースも同じく、俺の肩に手をのせた後に部屋をあとにした。
今は少し、距離を置いた方がよさそうだね………。
「ア、アース………。俺、何と声をかければいいかわからなくて………。すまないッス………。」
見ると、申し訳なさそうな顔をしたジールが涙を浮かべていた。
「ジールが謝ることは何もないよ。でも、参っちゃうよね。アルベルト殿下もとても厳しかったし………。」
「本当にそうッスよね! 本来ならば、敵の戦力や状況を考えて、殿下を守り切ったことを称えられるべきなのに、罰が与えられるなんておかしいと思うッス………。アルベルト殿下の側近の皆さんも、納得しているんッスかね?」
うーん、どうだろうか………。兄上やアルフォンスさんなら、アルベルト殿下に意見を述べてくれたかもしれないけど、何も言わなかったということは、事前に納得していたのだろうか? それとも何か、他に事情があるのだろうか?
「何か、事情があるのかもしれないね………。」
「事情ッスか? というと、やむを得なく、罰を与えたということッスか?」
遂に来てしまったか、この時が………。
あの時俺は、皆を守るために「俺のすべてを代償にする」と言った。そのツケを払えということだろう。すべてと口にしてしまった以上、命をとられてもおかしくない。そうなれば謹慎どころの話ではなくなるな。
せっかく転生したのに………もう少し、もう少し生きたかったな………。
「覚えています。俺のすべてを代償にする、と言いました。………覚悟はできています。」
俺がそういうと、鬼人はニターッと醜悪な笑みを浮かべた。人の命をとることが楽しいのだろうか? あの夢が現実に起こったことなのだとしたら、この鬼人は本当は優しい人なのではないかと思う。
「口では何とでも言えるなぁ。まあ、いい。すべてを代償にするということで、魂を食らいつくしてやろうかと思ったのだが、せっかく生き残る手助けをしたんだ。もっと、面白い方がいいだろ? ………ということで、いつ殺されるのかわからない恐怖に、おびえてもらおうかと思うのだがどうだぁ? 殺されるのは明日か、来年か? それとも、婚姻の前か、誕生日の前か? そんな恐怖におびえる毎日を過ごしてもらう。死ぬのは変わりないし、死ぬ時を選ぶのも俺だ。どうだ、面白いだろう?」
………いや、悪趣味すぎて面白くもなんともない。俺たちは、ただただドン引きするしかなかった。
ま、まあ、すぐに殺されることはないというをポジティブに捉えよう。
「………わかりました。ただ、1日前でもいいので、予告が欲しいです。引継ぎや挨拶等があると思いますので、よろしくお願いします。」
「………はぁ? それだけか?」
「え………。あ、そうですね。俺たちを助けてくださって、ありがとうございました。俺が生きていられるのは、あなたのおかげです。本当に、ありがとうございます。」
「………はぁ? も、もっと何かあるだろう! 俺は、好きな時にお前を殺すと言っているんだぞ!」
「い、いえ………。あなたを召喚したときに、その代償に俺の命はなくなるものだと思いましたので、その………少しでも生きられるのならうれしいです。」
俺がそういうと鬼人は、引きつった笑みを浮かべた。
もちろん、いつ殺されるのかわからないのはとてつもなく恐い。だけど、だからこそ、その時まで精一杯生きよう。
「チッ………。あー、冷めたわ。こんなつまらないガキだとは思わなかったぜ。お前、妙に大人びているな。………うん? よく見ると、お前の魂の色は………。」
鬼人はそういうと、俺の両肩を掴んで見分し始めた。
近いって、本当に近い。和装に角と目立つ部分が多くて一瞬気にならないけど、まぎれもないイケメンだ。あと、角が刺さりそうだから距離感を大切にしてほしい。
「ふははははははっ。お前は、そうか、そうなのか! うまそうな魂だなぁ。」
近い、近いって!
……それよりも、俺が転生者だということに気づいたみたいだから、変なことを言わないように阻止しなければならない。俺が口止めをしようとすると、キルが俺と鬼人の間に入ってきた。
「アースから離れてください!」
「なんだぁ? あー、役立たずの王子様か。どうしたんだ、そんなに情けない顔をして?」
見ると、キルは涙を流していた。
「お願いします。………アースの命を奪わないでください。」
「ふははははは。お前は泣くことしかできないのかぁ? まったく、泣くことしかできない王族は使い物にならないな。お前がいくら頼もうがわめこうが、こいつの魂をもらうことに変わりはない。それが、こいつとの契約だからな。」
「俺のすべてを代償に」と口に出してしまっている以上、この鬼人がいくら悪趣味だろうと言い返すことはできない。俺はキルの肩を掴んで、ゆっくりと首を振った。
「だが、少し面白そうなことが分かったからなぁ。ほんのわずかな間だが、退屈しのぎにはなりそうだ。じゃあ、気が向いたらまた来るぜぇ。」
鬼人はそういうと、姿を消してしまった。
気が向いたらまた来るということは、召喚の主導権はあちらにあるということだろうか? 現時点では、俺が召喚すれば来るというシステムではなないようだ。
それはそうと、俺が転生者であることがあの鬼人に知られたことが幸か不幸か、わずかな間だけど生きていられる猶予につながったようだ。
「………しばらく、頭を冷やしてくる。」
俺が鬼人のことを考えていると、キルはボソッとそういうと、部屋をあとにしてしまった。
引き留めようかと思ったけど、この短い間に色々とあったし、俺も頭を整理する時間が欲しかったから、引き留めなかった。
「ジールは、アースの側にいてやってくれ。俺とキースは、主の様子を見に行ってくる。俺たち側近にとっても、今は、あらゆることの転機だと思う。各々、やるべきことを整理しよう。」
「ありがとう、ローウェル。キルのこと、よろしくね。」
「………アース。また、あとでな。」
ローウェルはそういうと、俺の肩に手をのせた後、部屋をあとにした。キースも同じく、俺の肩に手をのせた後に部屋をあとにした。
今は少し、距離を置いた方がよさそうだね………。
「ア、アース………。俺、何と声をかければいいかわからなくて………。すまないッス………。」
見ると、申し訳なさそうな顔をしたジールが涙を浮かべていた。
「ジールが謝ることは何もないよ。でも、参っちゃうよね。アルベルト殿下もとても厳しかったし………。」
「本当にそうッスよね! 本来ならば、敵の戦力や状況を考えて、殿下を守り切ったことを称えられるべきなのに、罰が与えられるなんておかしいと思うッス………。アルベルト殿下の側近の皆さんも、納得しているんッスかね?」
うーん、どうだろうか………。兄上やアルフォンスさんなら、アルベルト殿下に意見を述べてくれたかもしれないけど、何も言わなかったということは、事前に納得していたのだろうか? それとも何か、他に事情があるのだろうか?
「何か、事情があるのかもしれないね………。」
「事情ッスか? というと、やむを得なく、罰を与えたということッスか?」
178
お気に入りに追加
3,569
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる