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第二章 初学院編
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「謹んでお受けいたします。」
13歳までの領地謹慎か……。これを重い罪ととるか軽い罪ととるかは、人次第だろうな。俺個人としては、7年間も領地で謹慎していたんだから、それに比べたら3年間くらいどうってことない。うん、どうってことないよ。
「あ、兄上! 一つだけよろしいでしょうか?」
「うん? なんだ? まさかとは思うが、アースへの処分を軽くしろとは言わないだろうな?」
キルの性格からして、俺の処分の取消や減罰を申し出るかもしれない。だけど、アルベルト殿下は処分を下すときに、「国王の代理として」とおっしゃていた。つまり、俺の処分に意を唱えるということは国王陛下に意を唱えることになる。それは本当にまずい。俺がキルを止めようとすると、キルは首を横に振った。
「いいえ、違います兄上。罰がアース1人ということに反対なのです。アースが筆頭護衛士という理由で処罰されるのなら、今回の任務の責任者の俺も処分を受けるべきだと考えます。」
キルに処罰なんて……。その分は俺が肩代わりすると言いたい、いや、今回の責任は筆頭護衛士の俺だけが負うということになっているはずだ。だけど、今口を挟んだところで、黙ってろと言われるに違いない。
俺は、アルベルト殿下の出方を伺うしかできなかった。
「そうだな、一理あると言えばあるな。では、おまえへの処分は「貴族院入学のその時まで、王都を出る事を禁止」とすることとする。やはり、初学院生の段階では外に出るべきではなかったからな。」
アルベルト殿下のおっしゃることはもっともだ。だけど、キルにとっては全くと言っていいほどダメージのない罰だ。せいぜい、旅行に行けないくらいだ。
しかし……俺は領地で謹慎、キルは王都から出れないということはつまり、俺たちは貴族院に入学するまで会えないということだ。
「兄上……それはつまり、どういうことでしょうか?」
「そのままの意味だが、なにか疑問点があるのか? まあ、友人でもあり側近でもあるアースとは会えないということにはなるが、そもそも謹慎中の者に会おうとするなんて無理な話だろ?」
領地に謹慎でも、誰か会いにきてくれるかな、というのは甘い考えだったな。これで、キルだけでなく側近のみんなにも会えなくなってしまったな……。
「そ、そのようなことは考えておりません。そうではなく、王都から出ないだけではアースと比べて罰が軽すぎます! 何か、何か俺に……」
「甘えるな!」
罰を与えてほしいと食い下がるキルに対して、アルベルト殿下がそう一喝した。
「罰を与えられることで、自分が言い出したことがきっかけだこのようなことになってしまった責任感を少しでも和らげたいのだろ?」
アルベルト殿下がそういうと、キルは悔しそうな顔をして俯いてしまった。
確かにきっかけは、キルが言い出したことだ。だけど、しっかりと許可を受けて行ったことだ。反論したいけど、アルベルト殿下に睨まれて反論は許されないだろう。
「お前は罰が欲しいようだが、すでにもう一つ罰を与えている。まずは、それに気付けるようになれ。じゃあ、俺達は退出する。アース、とりあえずしっかりと体を休めろよ。」
アルベルト殿下はそういうと、兄上たち側近を連れてさっさと退出していった。アルベルト殿下は確かに厳しいが、キルを育てようとしているように思える。だから、誰一人、殿下の側近は止めようとしなかったのだろう。
「ば、罰とは何なんッスかね………。ローウェルなら、わかるッスか?」
「まあ、なんとなくはな………。アースは?」
もう一つの罰とは、自分行動がきっかけで、自分ではなく自分の部下が責任を取らされることによる精神的苦痛のことだろう。王族として、自分の行動に責任を持たせたいとアルベルト殿下はお考えなのだろう。
「答えかどうかはわからないけど、推測ならできるかな。キースもわかってそうな雰囲気だね。」
「ああ。まあ、俺も想像程度だけどな。」
俺たちが頷くと、ジールは「自分だけわからないのは嫌ッス!」と不満げな顔をしていた。それに対してローウェルが、後で教えてやるからとなだめていた。
みんな、俺の領地謹慎が決まってしまったから、気を遣って明るく振舞ってくれているのだろう。するとキルが、フッと自嘲気味笑った。
「みんなはわかっているんだな。俺以外は皆優秀だよな………。それにしても、アース。3年間も領地謹慎が決まったのにもかかわらず、なぜそんなに暢気そうなんだ? 」
「え………。」
俺は一瞬、何を言われたのかわからずに声を漏らしてしまった。
俺が暢気そう? まさか、俺がまったく気にしてないと思われているのだろうか?
「あ、主………。それは違います。アースはただ」
「なにが違うというんだ! また俺だけわかっていないとでもいうのか!」
「いえ、そういうことでは………。主、少し外の空気を吸いに行きませんか? いろいろなことが起こったので、少し間を置きましょう。」
ローウェルがそういうと、キルは奥歯を噛みしめてうつむいてしまった。
俺は、大丈夫。3年間ぐらい、耐えられる。以前だって、それ以上の期間を耐えていたのだから………。
「お取込み中の所わりーなぁ。俺からも大事な話があるんだぜ。」
俺達の沈黙を破るかのように一切悪びれていない声で、俺が召喚したであろう鬼人が現れた。
実際、この鬼人を見るのは初めてだ。だけど、夢で見たあの鬼人とそっくりだ。いや、そっくりではなく本人である可能性が高い。
13歳までの領地謹慎か……。これを重い罪ととるか軽い罪ととるかは、人次第だろうな。俺個人としては、7年間も領地で謹慎していたんだから、それに比べたら3年間くらいどうってことない。うん、どうってことないよ。
「あ、兄上! 一つだけよろしいでしょうか?」
「うん? なんだ? まさかとは思うが、アースへの処分を軽くしろとは言わないだろうな?」
キルの性格からして、俺の処分の取消や減罰を申し出るかもしれない。だけど、アルベルト殿下は処分を下すときに、「国王の代理として」とおっしゃていた。つまり、俺の処分に意を唱えるということは国王陛下に意を唱えることになる。それは本当にまずい。俺がキルを止めようとすると、キルは首を横に振った。
「いいえ、違います兄上。罰がアース1人ということに反対なのです。アースが筆頭護衛士という理由で処罰されるのなら、今回の任務の責任者の俺も処分を受けるべきだと考えます。」
キルに処罰なんて……。その分は俺が肩代わりすると言いたい、いや、今回の責任は筆頭護衛士の俺だけが負うということになっているはずだ。だけど、今口を挟んだところで、黙ってろと言われるに違いない。
俺は、アルベルト殿下の出方を伺うしかできなかった。
「そうだな、一理あると言えばあるな。では、おまえへの処分は「貴族院入学のその時まで、王都を出る事を禁止」とすることとする。やはり、初学院生の段階では外に出るべきではなかったからな。」
アルベルト殿下のおっしゃることはもっともだ。だけど、キルにとっては全くと言っていいほどダメージのない罰だ。せいぜい、旅行に行けないくらいだ。
しかし……俺は領地で謹慎、キルは王都から出れないということはつまり、俺たちは貴族院に入学するまで会えないということだ。
「兄上……それはつまり、どういうことでしょうか?」
「そのままの意味だが、なにか疑問点があるのか? まあ、友人でもあり側近でもあるアースとは会えないということにはなるが、そもそも謹慎中の者に会おうとするなんて無理な話だろ?」
領地に謹慎でも、誰か会いにきてくれるかな、というのは甘い考えだったな。これで、キルだけでなく側近のみんなにも会えなくなってしまったな……。
「そ、そのようなことは考えておりません。そうではなく、王都から出ないだけではアースと比べて罰が軽すぎます! 何か、何か俺に……」
「甘えるな!」
罰を与えてほしいと食い下がるキルに対して、アルベルト殿下がそう一喝した。
「罰を与えられることで、自分が言い出したことがきっかけだこのようなことになってしまった責任感を少しでも和らげたいのだろ?」
アルベルト殿下がそういうと、キルは悔しそうな顔をして俯いてしまった。
確かにきっかけは、キルが言い出したことだ。だけど、しっかりと許可を受けて行ったことだ。反論したいけど、アルベルト殿下に睨まれて反論は許されないだろう。
「お前は罰が欲しいようだが、すでにもう一つ罰を与えている。まずは、それに気付けるようになれ。じゃあ、俺達は退出する。アース、とりあえずしっかりと体を休めろよ。」
アルベルト殿下はそういうと、兄上たち側近を連れてさっさと退出していった。アルベルト殿下は確かに厳しいが、キルを育てようとしているように思える。だから、誰一人、殿下の側近は止めようとしなかったのだろう。
「ば、罰とは何なんッスかね………。ローウェルなら、わかるッスか?」
「まあ、なんとなくはな………。アースは?」
もう一つの罰とは、自分行動がきっかけで、自分ではなく自分の部下が責任を取らされることによる精神的苦痛のことだろう。王族として、自分の行動に責任を持たせたいとアルベルト殿下はお考えなのだろう。
「答えかどうかはわからないけど、推測ならできるかな。キースもわかってそうな雰囲気だね。」
「ああ。まあ、俺も想像程度だけどな。」
俺たちが頷くと、ジールは「自分だけわからないのは嫌ッス!」と不満げな顔をしていた。それに対してローウェルが、後で教えてやるからとなだめていた。
みんな、俺の領地謹慎が決まってしまったから、気を遣って明るく振舞ってくれているのだろう。するとキルが、フッと自嘲気味笑った。
「みんなはわかっているんだな。俺以外は皆優秀だよな………。それにしても、アース。3年間も領地謹慎が決まったのにもかかわらず、なぜそんなに暢気そうなんだ? 」
「え………。」
俺は一瞬、何を言われたのかわからずに声を漏らしてしまった。
俺が暢気そう? まさか、俺がまったく気にしてないと思われているのだろうか?
「あ、主………。それは違います。アースはただ」
「なにが違うというんだ! また俺だけわかっていないとでもいうのか!」
「いえ、そういうことでは………。主、少し外の空気を吸いに行きませんか? いろいろなことが起こったので、少し間を置きましょう。」
ローウェルがそういうと、キルは奥歯を噛みしめてうつむいてしまった。
俺は、大丈夫。3年間ぐらい、耐えられる。以前だって、それ以上の期間を耐えていたのだから………。
「お取込み中の所わりーなぁ。俺からも大事な話があるんだぜ。」
俺達の沈黙を破るかのように一切悪びれていない声で、俺が召喚したであろう鬼人が現れた。
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