96 / 179
第二章 初学院編
95
しおりを挟む
「お前ら、第一王子を差し置いて楽しそうだな。そろそろ、俺が話してもいいか?」
俺たちは内心ドキッとしながらも、すぐに頷いた。
「まあいい。すでにアース以外の者には伝えているが、とりあえずアース。回復おめでとう。それから、よくキルや側近たちを守り抜いた。A級やB級複数体相手に、よく生き残った。」
………。俺は一瞬固まってしまった。なにせ、あのアルベルト殿下に褒められたのだから。怪我して未熟だの、A級を何体かとり逃したことを説教されるかと思っていた。す、素直にうれしいな。
「あ、ありがとうございます。」
「なんだ? 俺に褒められたのに不服か? 俺個人としては、よくやったと思っているんだぞ?」
「ふ、不服ではありません! うれしいです!」
俺はすぐに取り繕った。危ない危ない、この人を相手にするときは、かなり気を付けなければいけないからな。………うん? 「俺個人としては」とは、どういうことだろうか? まるで、アルベルト殿下自身以外の意見も持ち合わせていると言わんばかりの言い方のような気がするな………。
「………と、楽しい話はこれまでだ。これからは、お前たちの任務失敗の責任及び第二王子を危険にさらした責任の所在について話をする。」
アルベルト殿下がそういった瞬間、部屋の温度が一気に下がった。アルベルト殿下はさっきとは打って変わり、第一王子殿下の、王族の真剣な顔をしている。
アルベルト殿下の言葉に、兄上やアルフォンスさんといった側近の方々は下を向き苦い顔をしている一方で、キルを含めてキルの側近たちはひどく驚いた顔をしていた。ローウェル以外は………。
「兄上、責任とはいったいどういうことですか! 責任なら俺が!」
「キルヴェスター。責任なんて簡単に口に出すな。お前は祖母上に、いったい何を学んでいるんだ? ………お前は少し黙っていろ。」
キルがアルベルト殿下に向かって叫ぶと、アルベルト殿下は酷く冷たい声でそう言った。キルは、一瞬ひるんだ顔をした後にうつむいてしまった。
責任の所在か………。俺が目覚めてからその話をするということは………そういうことだよな。
「まずは、お前たちの任務失敗の責任についてだ。今回、後方支援の物資を前線まで届けるという任務だったが、物資及び馬車を失い任務失敗となった。さらに、同行した護衛団の内、お前たち以外の新人たちは全員殉死した。」
殉死………。あの新人の皆さんが、全員亡くなったのか………。キルたちは視線を下にさげるだけだったので、既に知っていたが俺にはあえて伝えなかったのだろう。
「さて、その責任についてだが………。敵の強さ及びその状況、そしてお前たちの戦闘力を鑑みて、よく生き残ったと言える。したがって、この件については不問とする。」
アルベルト殿下がそういった瞬間、俺たちは深く息を吐いた。ふ、不問か………。A級複数体かつ睡眠中を襲われたということで、そう判断されたのだろう。だけど、亡くなった新人の皆さんのことを思うと………素直によかったとは全く言えない。それに、「この件は」ということは、もう一つの方は………。
「次に、アーキウェル王国第二王子を危険にさらした責任ついてだ。これについては、結果だけを見れば第二王子は五体満足で帰還している。しかし、王族を危険にさらすというのはそれだけで大きな罪になる。これについては、ここにる側近がみな、肝に銘じていることだろう。さて、今回の件についてみると第二王子が危険にさらされただけではなく、危うく王族の血が魔物に利用されるところだった。本来は第二王子の側近全員に責任を取らせるのが妥当だが、今回の相手や状況及びナレハテや透明化ができるという稀有な魔物の情報を持ち帰ったこと、そしてナレハテどもに殺されたメース男爵次男の情報を持ち帰ったことにより、メース男爵家から第二王子とその側近に深く感謝しているとの情報があったことを考慮し、全員に責任をとらせるのは妥当ではないという結論に至った。そこで、お前たち側近のリーダー、つまり筆頭護衛士のみを罰することとなった。お前たちは側近見習いだが、今回、筆頭護衛士を任された者がいると聞いている。筆頭護衛士を任された者は、いったい誰だ?」
「私です。」
俺はアルベルト殿下の問いに、間髪入れずに答えた。先ほどの流れで覚悟はできていたし何より、俺一人が罰せられるだけで済むなら安いものだ。
「ほう。すぐに自分だと答えるとは、流石は俺が側近に加えたいと思っただけはあるな。それでは、アーキウェル王国第一王子である俺が、国王の代理としてお前に罰を与える。」
「ア、アルベルト兄上………。ア、アースさんは、まだ回復したばかりで………。」
それまで、泣きそうな顔をしながら一連の話を聞いていたウェル殿下が、震える手を自分で押さえながらアルベルト殿下と向きあった。しかし、そういう途中でアルベルト殿下に冷たい視線を向けられて口を閉ざしてしまった。
「回復したばかりだからなんだというんだ? 今は、第一王子が沙汰を言い渡している途中だ。黙っていられないなら、退出しろ。」
アルベルト殿下がピシャリとそういうと、ウェル殿下は申し訳なさそうな顔で俺のことを見つめた。俺は大丈夫だよ、ありがとうという気持ちを込めて微笑んだ。
「ところで、アース。お前の大切なものはなんだ?」
いきなり、どういうことだろうか? まあ、俺には答えるという以外選択肢はないんだけど………。俺にとっての大切なものか。それは考えるまでもないな。
「こうして皆さんと過ごす時間です。………私は、皆さんが知っているとおり療養地にて7歳まで、使用人と家族以外とは話すことがない生活を送っていました。ですからこうして、大切な皆さんと過ごす時間が私にとっての大切なものです。」
アルベルト殿下は、「俺もそれに入っているのか。」と言ってふっと笑った後に、先程までの真剣な顔となった。
「では、その大切なものを取り上げることでお前への罰としよう。アース・ジーマル、貴族院入学のその時まで、領地での謹慎を命じる。お前は貴族院への入学権をすでに持っていたな。貴族院入学時まで初学院に通わなくても、試験を受ける必要がないので、問題ないだろう。それに、独学で勉強していたくらいだ。初学院に通わないからといて、サボることはしないだろうしな。」
俺たちは内心ドキッとしながらも、すぐに頷いた。
「まあいい。すでにアース以外の者には伝えているが、とりあえずアース。回復おめでとう。それから、よくキルや側近たちを守り抜いた。A級やB級複数体相手に、よく生き残った。」
………。俺は一瞬固まってしまった。なにせ、あのアルベルト殿下に褒められたのだから。怪我して未熟だの、A級を何体かとり逃したことを説教されるかと思っていた。す、素直にうれしいな。
「あ、ありがとうございます。」
「なんだ? 俺に褒められたのに不服か? 俺個人としては、よくやったと思っているんだぞ?」
「ふ、不服ではありません! うれしいです!」
俺はすぐに取り繕った。危ない危ない、この人を相手にするときは、かなり気を付けなければいけないからな。………うん? 「俺個人としては」とは、どういうことだろうか? まるで、アルベルト殿下自身以外の意見も持ち合わせていると言わんばかりの言い方のような気がするな………。
「………と、楽しい話はこれまでだ。これからは、お前たちの任務失敗の責任及び第二王子を危険にさらした責任の所在について話をする。」
アルベルト殿下がそういった瞬間、部屋の温度が一気に下がった。アルベルト殿下はさっきとは打って変わり、第一王子殿下の、王族の真剣な顔をしている。
アルベルト殿下の言葉に、兄上やアルフォンスさんといった側近の方々は下を向き苦い顔をしている一方で、キルを含めてキルの側近たちはひどく驚いた顔をしていた。ローウェル以外は………。
「兄上、責任とはいったいどういうことですか! 責任なら俺が!」
「キルヴェスター。責任なんて簡単に口に出すな。お前は祖母上に、いったい何を学んでいるんだ? ………お前は少し黙っていろ。」
キルがアルベルト殿下に向かって叫ぶと、アルベルト殿下は酷く冷たい声でそう言った。キルは、一瞬ひるんだ顔をした後にうつむいてしまった。
責任の所在か………。俺が目覚めてからその話をするということは………そういうことだよな。
「まずは、お前たちの任務失敗の責任についてだ。今回、後方支援の物資を前線まで届けるという任務だったが、物資及び馬車を失い任務失敗となった。さらに、同行した護衛団の内、お前たち以外の新人たちは全員殉死した。」
殉死………。あの新人の皆さんが、全員亡くなったのか………。キルたちは視線を下にさげるだけだったので、既に知っていたが俺にはあえて伝えなかったのだろう。
「さて、その責任についてだが………。敵の強さ及びその状況、そしてお前たちの戦闘力を鑑みて、よく生き残ったと言える。したがって、この件については不問とする。」
アルベルト殿下がそういった瞬間、俺たちは深く息を吐いた。ふ、不問か………。A級複数体かつ睡眠中を襲われたということで、そう判断されたのだろう。だけど、亡くなった新人の皆さんのことを思うと………素直によかったとは全く言えない。それに、「この件は」ということは、もう一つの方は………。
「次に、アーキウェル王国第二王子を危険にさらした責任ついてだ。これについては、結果だけを見れば第二王子は五体満足で帰還している。しかし、王族を危険にさらすというのはそれだけで大きな罪になる。これについては、ここにる側近がみな、肝に銘じていることだろう。さて、今回の件についてみると第二王子が危険にさらされただけではなく、危うく王族の血が魔物に利用されるところだった。本来は第二王子の側近全員に責任を取らせるのが妥当だが、今回の相手や状況及びナレハテや透明化ができるという稀有な魔物の情報を持ち帰ったこと、そしてナレハテどもに殺されたメース男爵次男の情報を持ち帰ったことにより、メース男爵家から第二王子とその側近に深く感謝しているとの情報があったことを考慮し、全員に責任をとらせるのは妥当ではないという結論に至った。そこで、お前たち側近のリーダー、つまり筆頭護衛士のみを罰することとなった。お前たちは側近見習いだが、今回、筆頭護衛士を任された者がいると聞いている。筆頭護衛士を任された者は、いったい誰だ?」
「私です。」
俺はアルベルト殿下の問いに、間髪入れずに答えた。先ほどの流れで覚悟はできていたし何より、俺一人が罰せられるだけで済むなら安いものだ。
「ほう。すぐに自分だと答えるとは、流石は俺が側近に加えたいと思っただけはあるな。それでは、アーキウェル王国第一王子である俺が、国王の代理としてお前に罰を与える。」
「ア、アルベルト兄上………。ア、アースさんは、まだ回復したばかりで………。」
それまで、泣きそうな顔をしながら一連の話を聞いていたウェル殿下が、震える手を自分で押さえながらアルベルト殿下と向きあった。しかし、そういう途中でアルベルト殿下に冷たい視線を向けられて口を閉ざしてしまった。
「回復したばかりだからなんだというんだ? 今は、第一王子が沙汰を言い渡している途中だ。黙っていられないなら、退出しろ。」
アルベルト殿下がピシャリとそういうと、ウェル殿下は申し訳なさそうな顔で俺のことを見つめた。俺は大丈夫だよ、ありがとうという気持ちを込めて微笑んだ。
「ところで、アース。お前の大切なものはなんだ?」
いきなり、どういうことだろうか? まあ、俺には答えるという以外選択肢はないんだけど………。俺にとっての大切なものか。それは考えるまでもないな。
「こうして皆さんと過ごす時間です。………私は、皆さんが知っているとおり療養地にて7歳まで、使用人と家族以外とは話すことがない生活を送っていました。ですからこうして、大切な皆さんと過ごす時間が私にとっての大切なものです。」
アルベルト殿下は、「俺もそれに入っているのか。」と言ってふっと笑った後に、先程までの真剣な顔となった。
「では、その大切なものを取り上げることでお前への罰としよう。アース・ジーマル、貴族院入学のその時まで、領地での謹慎を命じる。お前は貴族院への入学権をすでに持っていたな。貴族院入学時まで初学院に通わなくても、試験を受ける必要がないので、問題ないだろう。それに、独学で勉強していたくらいだ。初学院に通わないからといて、サボることはしないだろうしな。」
279
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
追放された出来損ないアルファですが、魔力相殺の力で孤高の天才魔術師と最強パーティーを組みました〜二人で無双して下剋上します〜
水凪しおん
BL
名門剣士一族のアルファとして生まれながら、魔力も筋力も乏しく「出来損ない」と冷遇されてきた青年、ルーク。
息苦しい家を飛び出し、冒険者として生きていくことを決意した彼は、森で一人の特級魔術師と出会う。
彼の名はシリウス。
圧倒的な才能と魔力を持つエリートアルファだが、その強大すぎる魔法の余波が味方をも巻き込むため、誰ともパーティーを組めず孤高を貫いていた。
「俺の魔法の余波を消せる人間なんて、今まで一人もいなかった」
ルークが持つ、実家では無用の長物と見なされていた精密な「魔力相殺」の技術。
それは、シリウスの破壊的な魔力を完璧にコントロールするための唯一の鍵だった。
交わることのない波長。欠けた器と、あふれすぎる中身。
いびつな二つの歯車は互いの弱点を補い合い、完璧な連携で次々と規格外の魔物を討伐していく。
アルファ同士という本能の反発を越え、対等な関係で背中を預け合ううちに、二人の間には深く熱い絆が芽生え始める。
やがて、ルークを連れ戻そうと迫る冷酷な実家の兄。
圧倒的な武力を誇る一族の刺客を前に、ルークとシリウスは真の共鳴を果たし、運命の逆転劇を巻き起こす――。
家柄やオメガバースの運命にとらわれない。
これは、無能と蔑まれた青年と孤独な魔術師が、互いの魂を救済し、世界でただ一つの最強のパートナーシップを築き上げるまでの下剋上ファンタジー。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
有能副会長はポンコツを隠したい。
さんから
BL
2.6タイトル変更しました。
この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。
こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。
ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる