異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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アースへの魔力供給が終わった後、俺たちは食事と風呂を済ませた。

そして、次の日の移動へと備えて、まだ早い時間ではあるが休むことにした。主は、アースの傍から離れないと言ったが、俺たちが何とか嗜めて寝室へと誘導した。

こういう時、アースならば主を簡単に御せるだろうな。俺たちはどちらかというと、主を主人として意識している。それに対してアースは、友人と従者をよく使い分けているように思える。主はそれが心地いいのだろうな。そう思うと、やはり、アースは不思議だと思う。言い方を選ばなければ、普通ではないと思う。まあ、8歳まで俗世を離れていたら、そうなっても何ら不思議ではないと思うけどな。

さあ、俺も寝るとするか……。







ーー







次の日、朝食を済ませた後、俺たちは早速王都へと向かうことにした。嬉しいことに、俺たちと一緒に、テレシー領騎士団が護衛として一緒に来てくれることになった。テレシー家には、多大な恩ができてしまったな。


「グート殿、ただないなる支援に感謝します。このお礼は、必ずお返しします。」

「とんでございません、殿下。この国の貴族として当然のことをしたまでです。それから、アース様に何かあっては妹やその友人が悲しんでしまいますからね。」


「……ええ、そうですね。」


主はアースを抱え直してそう言うと、ぎこちない笑みを浮かべた。この笑みの意味を本当の意味でわかっているのは、俺くらいだろな。まあ、それは置いておくとしてと、俺はグート様に手紙を渡した。


「こちらを早馬でお願いできますか? 現状報告と回復魔導士の手配について記してあります。」

「かしこまりました。すぐに向かわせましょう。」


グート様はそう言うと、速やかに早馬を手配して、送り出した。

「今回の護衛は、強さと移動速度を持ち合わせた精鋭を揃えております。殿下方を最速で王都まで送り届けると保証しましょう。」

「重ね重ね感謝します。では、俺たちは行きます。本当にありがとうございました。」


殿下の一礼に合わせて、俺たちをグート様に一礼をした。そして、馬車へと乗り込んだ。






ーー






馬車での移動から3日後、ようやく王都に辿り着いた。

城門の近くまで行くと、人影が複数見えた。そこには、主の教師役のカーラ様、そしてタームウェル殿下とその側近、そしてジーマル辺境伯夫人つまり、アースの母上がいた。

俺たちが馬車から降りて、アースの姿を見た瞬間、アースの母上は泣きながら崩れ落ちてしまった。


「ジーマル辺境伯夫人、アースをこのような姿にしてしまい申し訳ない。本当に、申し訳ない……。」

「キル兄上! アースさんは、アースさんは生きておられるのですよね⁉︎」


そう言いながら、タームウェル殿下が主へと詰め寄った。タームウェル殿下は、アースとことをたいそう慕っている。アースとジールの訓練によく混ざっているのだ。



「殿下、アース様を心配するお気持ちは痛いほどわかりますが、ここはキルヴェスター殿下方をすぐにご案内しましょう。アース様の回復が、何よりも大切ではないですか?」



カーラ様がそう言いながら、タームウェル殿下をたしなめた。
タームウェル殿下はカーラ様の言葉に頷いたものの、半泣き状態だ。


「キル坊っちゃま。大変辛い思いをいたしましたね……。息子のザールが戻っております。すぐに回復に取り掛かりましょう。」


「叔父上が⁉︎」
「父上がッスか⁉︎」

カーラ様の言葉に、主とジールが驚きの声を上げた。
ザール様といえば、ジールの父上で、ヴィーナ様の兄上だ。そして、現バルザンス公爵でかつ外務大臣だ。前魔道師団長でもあるお方だ。ザール様は自他共に認める外交の才の持ち主だが、それと同じくらいに一流の回復魔導士としても有名だ。稀有魔法の血液魔法を操ると聞く。

ザール様は普段から外国を飛び回っており、この国には滅多に帰ってこない。俺もほとんど会ったことがなく、片手で数えられるくらいだ。


「我がバルザンス家の恩人であるアース様のため、ザールには何をおいてでも帰ってくるように命じました。ザールも一度アース様とお話がしたかったようなので、すぐに帰って参りました。さあ、急いで治療部屋へと参りましょう。」


カーラ様は、崩れ落ちて涙を流し続けるジーマル辺境伯夫人を支えながら、俺たちを誘導した。


「……ありがとうございます、祖母上。」


「いえ、とんでもございません。わたくしは、坊っちゃま方の今回の任務への参加を後押し致しました。ですから、わたくしにも責任の一端があるのです。」


「祖母上に責任など! ……俺に、俺に責任があるのです。」


「王族に連なる者が、そう簡単に責任をとるなどというものではございません。今回責任をとるとすれば……いえ、今はやめておきましょう。」


王族が責任をとるというときはそれは、国家に関わるような余程のときだ。今回のような任務の失敗の責任及び王族を危険にさらした責任を負うのは……。


「祖母上、それはいったいどういう意味ですか? 俺以外に、誰に責任があると言うのですか!」


主がそう言うと、カーラ様は歩みを止めて主をまっすぐと見つめた。


「今、キル坊っちゃまが考えるべきことは責任の所在ではございません。今は、何よりもアース様を回復させることが大切ではないですか?」


主は奥歯を強く噛み締めた後に、再び歩き始めた。
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