異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
76 / 179
第二章 初学院編

75

しおりを挟む
俺は身体強化をさらに強くし、そして、剣を素早く振りぬいた。その瞬間、巨大な氷はきれいに割れ、方々へと飛んでいった。アースの方を見ると、アースはうれしそうな、そして悔しそうな表情をしていた。………成長しているのは、お前だけではないからな。アース、お前の魔法を利用させてもらうぞ。


俺は腕に最高レベルの身体強化をかけて、地面をえぐるようにアースに向かって剣を振りぬいた。それによって、地面のみぞれや土がアースに向かって飛んでいった。それに加えて、アースが降らせている雪もある。アースの視界を一瞬奪うことが可能だ。俺はそれと同時に、剣をアースに向かって投げた。俺の最高レベルの身体強化で投擲した剣だ、身体強化をしていないアースには避けることは難しいだろう。遠距離攻撃がないと思っている騎士からの投擲だ。予期していない攻撃による反応の遅れもあるだろう。

俺は剣を投げるとすぐに、足に身体強化をかけアースの所に向かって駆け出した。視界はふさがっており、アースの状態はわからないが、剣で気絶しているならよし、していないようなら視界がふさがっている今のうちに距離を詰め、体術で拘束する。

俺はまだ空中位ある土やみぞれに構わず、アースの所に向かって最速で移動した。すると、俺の剣が空中に浮いているのが見えた。ま、まさかアースに刺さっているということはないだろうな? 一応は先は潰しているため、刺さることはないはずだ。しかし、俺はこの状態を一瞬で理解した。アースの手前で、剣が浮いているのだ。つまり、アースの『氷壁』、ガードで出した氷にささっているのだ。流石アース、この投擲に反応するとは………。だけど、この距離に近づけば騎士の勝ちだ。


俺は刺さっている剣を引き抜き、アースの首筋に向かって剣を振りぬいた。



「そこまで!」


俺はその声で、というかもともと寸止めするつもりだったが、アースの首に触れるギリギリのところで、剣を止めた。


………俺の勝ちだな。



「この勝負、引き分けとする。」


………は? 
祖父上、何をおっしゃっているんだ? 俺の攻撃が、アースの首筋に届いているのが見えていらっしゃらないのだろうか?

俺は祖父上に抗議するために動こうとすると、首筋に冷気を感じた。………これは、先程からずっと当たっている雪だろうか。いや、もっと冷たいような………。俺はゆっくりと後ろを振り返った。

すると、刃上の氷が俺の首筋に二本、ぎりぎりのところで止まっていた。俺の攻撃とほぼ同時に、アースの攻撃が届いていたということだろうか? それよりも、いつ俺に攻撃をしたんだ。視界は俺が塞ぎ、俺の姿を確認できなかっただろうし、アースが魔法を発動した様子もなかった。


「………アース、いつの間に攻撃したんだ? それに、俺の姿はギリギリまで見えていなかったはずだ。」



俺がそういうと、アースはゆっくりと息を吐いて、俺の剣があるのとは反対側の首筋を示して叩いた。

あ………。確かに、お互いに武器を互いの首筋に突き付けている状態だ。万が一があってはいけない、俺とアースは同時に武器を解除した。


「攻撃したのは、キルが俺に向かって突っ込んできたときからだよ。氷は序盤の時に出した氷弾を、上空に温存しておいたんだ。キルの姿を見なくても位置を把握できたのは、魔力展開で感知ができるからだよ。魔力が微量でもあれば大体は感知できるよ。例えば、身体強化の残滓が残っている剣とかね。だから、見えなくても領域内なら感知はできるんだ。」


あの無数の氷弾のうちのいくつかを上空に隠したうえで、さらに領域内で感知もしていたのか。なんというか、引き分けにはなったものの、色々な意味で俺の負けな気がするな。



「なんというか、すごいな。初級魔法以外も使えていたら、俺は受けきれずに負けていたな。」


「何言っているんだよ、キル。剣一本で、俺の攻撃をしのぎ切って、引き分けに持ち込んだんだ。キルの実力があってこその結果だよ。」


………そんな笑顔で褒められたら、何も言えないじゃないかよ。それにしても、さっきまで本気で戦っていたとは思えないほどアースはいつも通りだな。

俺がアースについて考察していると、アースは一転して半目で俺に詰め寄ってきた。



「にしても、キル。さっきの戦いで剣を本気で投げてきたようだけど、俺が感知できずに刺さりでもしたら、どうするつもりだったんだよ!」


うっ………。それを言われると、言い訳のしようがない。アースなら防げると思っていたし、刃先をつぶしているから刺さらないと思っていた。だけど、本気の身体強化で投げたのだから、刺さらずとも大事故になっていたかもしれない。



「………それについては、俺の配慮が足りなかった。刃先も潰していたし、アースなら何とかすると思っていたんだ。すまなかった。………だが、俺もアースに言いたいことがある。俺よりも、アースの方がえげつなかったぞ! なんだよ、あのとんでもない量の氷弾や水弾は! それに、巨大な氷弾も俺が斬れなかったたら、どうしていたんだ!」


俺も負けじとアースに詰め寄ると、アースは目を泳がせて、「だって、キルなら何とかすると思っていたから、つい」などど、つぶやいていた。


お互い勝負に集中しすぎて、危険な綱渡りをしてしまったようだ。………まだまだ、未熟のようだ。


「はい、そこまで。お二人とも、勝負が終わった後の挨拶を、まだしていないのではないですか?」


すると、穏やかな口調でそう言いながら、カーナイト様が俺たちの間に割って入った。模擬戦でのはじめと最後の挨拶は、重要なことだ。俺とアースはすぐに居住まいを正して、向かい合った。



「アース、今日はありがとう。とてもいい経験になった。よかったら、また模擬戦をしてくれるか?」


「うん、もちろんだよ! 俺の方こそ、勉強になったよ。本当にありがとう、楽しかったよ。」



俺達は互いの健闘をたたえ合い、握手をした。すると、観客から大きな拍手が沸き起こった。そういえば、こんなにも多くの人たちに見られていたんだよな………。戦いに集中しすぎて、忘れてしまっていた。



「二人とも、お疲れッス! 十歳とは思えない、高レベルな戦いでしたッスよ!」



ジールの明るい声を先頭に、側近たちが駆け寄ってきた。俺とアースは、笑顔で側近たちを迎えた。


「ありがとう、ジール! やっぱり、騎士との戦闘は全然違うね! ジールにもぜひ、体験してほしいな。というよりも、定期的に行った方が良いかもしれないね。」


「俺ももちろん騎士との模擬戦はやりたいッスよ! 定期的に行うのもよさそうっスね。将来的にも騎士との連携が必要っスから、お互いのことを把握しておくのは大切ッスね。」


アースとジールの意見には、俺も賛成だ。普段とは違う相手や戦い方に触れておくのは、成長につながるだろう。

すると、キースがアースの肩を掴んだ。




「アース、次は俺と模擬戦をしてほしい。アースの攻撃をしのげれば、どんな魔導士の攻撃にも対応できる気がする。」


「それは俺からもお願いしたいけど、買いかぶりすぎだよ。俺の攻撃はまだまだ、初学院生レベルの戯れくらいだよ。」



………これには、周りにいる全員が少し引き気味の笑みを浮かべながら、頷くことしかできなかった。

微妙な空気を換えるように、ジールが俺に向かって声をかけた。


「殿下、俺と模擬戦をしてもらってもいいッスか?」

「ああ、もちろんだ。」


それから、ずっとジールに言いたかったことがある。今日、アースと戦って言わずにはいられなくなった。


「ジール、アースのライバル枠は俺がもらう。お前には絶対に負けないからな。」


俺がそういうと、ジールは一瞬目を瞬かせた後、不敵に笑ってみせた。

「もちろん、受けて立つッスよ。………ですけど、殿下にアースのライバルが務まるッスかね? 俺は現在進行で、アースと勝って負けてを繰り返しているッス。アースにまだ勝っていない殿下には、荷が重いんじゃないッスか?」


………言うようになったじゃないか、ジール。久しぶりに、ジールにカチンと来たぞ。俺は笑顔で、ジールに手を差し出した。それに対してジールは、笑顔で俺の手を握り返した。「受けて立つ」、ということだろう。


すると、アースが俺たちに駆け寄ってきた。


「ちょっと二人とも、貴族スマイルで何やってんだよ? 何があったかはわからないけど、仲よくしよう、ね? あ、そうだ。騎士と魔導士が二人ずついるし、騎士対魔導士で二対二の模擬戦をしようか! うん、そうしよう!」


アースが屈託のない笑顔でそう言った。………アース、何かが違うと思うぞ。だけど、俺たちはすっかり毒気を抜かれてしまって、頷いた。





そしてその後、少しの休憩をはさんでアースの提案通りの模擬戦が始まった。その試合では、気合の入ったアースの、まるで二度目の試合とは思えないほどの氷弾が、空中に無数に舞っていた。

しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...