異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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※キルヴェスター視点



今からアースとの模擬戦が始まる。今朝はアースとカーナイト様への配慮が足りず、失敗してしまったが、この機会を本当に楽しみにしていた。同世代で、魔導士として実力のある者はほとんどいない。ウェルはなかなか強いが、ウェルと模擬戦を行うのは少し癪だ。

王子である俺に対して、忖度なしに戦ってくれるのは側近のみんなや一部の大人くらいだ。だからこそ、こういう機会は大切にしたい。………それに、アースとは一度真剣に戦ってみたかった。



「それでは、キルヴェスター殿下とアース様の模擬戦を始めます。立会人は、私、カーナイトが務めさせていただきます。」


俺とアースが模擬戦をするということで、祖父上が立会人を名乗り出てくれた。王子である俺の立会人を引き受けることができる人は限られているから、非常にありがたい。………だけど、話を聞きつけた兄上たち、自称保護者組やクラスメイト達も多く見物に来ている。なぜ、このような大ごとになっているのかわからない。俺はただ、アースや側近たちと真剣に訓練がしたいと思っていただけなんだが………。一方アースはというと、見物人なんかいてもいなくても構わないというような、余裕のある笑みを浮かべている。アースは緊張しないのだろうか、こんなにもみられているにもかかわらず。………主として、俺はまだまだのようだ。



「では、双方、礼を。」


祖父上の声で、俺とアースは互いに礼をした。

「よろしくね、キル。手加減をしてはそれこそ失礼だから、全力で行くよ。怪我をしたら、俺が治すからさ。」


「それはありがたいな。………だけど、模擬戦後に回復ができるくらいの余裕を、アースに残させるつもりはない。」



俺が不敵に笑うと、アースも不敵に笑って見せた。正直、アースの実力はジールから聞いたものしか情報がない。一緒に訓練をしていたが、それは基礎訓練のみだ。アースの魔導士としての本気を、俺はまだ知らない。………それは少々、主としてどうかと思ったんだ。主としてな。


俺達は少し離れて、互いに位置に着いた。その距離はと言うと、遠すぎると魔導士に、逆に近すぎると騎士に有利なため、中間の位置となっている。

俺は剣を構えて、祖父上の開始の合図を待った。アースはというと、目を瞑っていた。騎士ではありえないことだ、敵を前に目瞑るなど。だけど、アースには、ひいては師匠の祖父上には考えがあるのだろう。


「始め。」


祖父上の静かな声とともに、俺はアースとの距離をつめようと身体強化で走り出した。

騎士が魔力を何に使うかというと、主に身体強化に使う。属性によって強化される種類が異なるが、俺の様に火属性の場合は火力が上がり、筋力が向上する。キースのように雷属性だと、スピードが上がるといった具合だ。


俺が接近しても、アースに特に動きはなかった。………試合を放棄しているわけではないよな? 魔導士が騎士に接近されて、何もしないというのは異常だ。何か考えがあるのかもしれないが、その前に一気に決めてやる。


『魔力展開』


アースの元まであと少しというところで、アースが静かにそうつぶやいた瞬間に、俺は反射的に後ろに飛びのいた。

魔力展開。アースがその練習をしていたことも、アースに必要なことも知っている。だけど、こんな膨大で濃密な魔力を展開できるようになっていたのか。



「流石、キルだね。これは一種の威圧みたいなもので、魔力をしっかりと感じられる人に対して、有効な猫だましなんだよ。」


「ああ、そうみたいだな。」


展開することによる効果は猫だましかもしれないが、展開後はそんなものではない。この魔力が展開されている場所は、アースの領域だ。展開後の魔力をどのように使うのかは、その人次第だ。アースがどのように魔力を利用してくるのかは、俺はまだ知らない。だけど、それでこそフェアというものだ。


『氷弾』



アースがそういうと、三メートル近い氷が俺に向かって飛んできた。通常の氷弾よりは確実に大きいが、俺は、俺達はこれ以上の氷をすでに見ている。この程度の大きさで驚くようなことではない。だけど、三メートル近い物体が高速で飛んでくるだけでも相当の脅威だ。………並の相手ならな。

俺は飛んできた氷弾を、正面から叩き潰した。たたき潰された氷は、俺の周囲に細かく飛び散った。アース、初級魔法程度ならいくら大きかろうと俺は叩き潰すぞ。

アースの警戒しなければならない攻撃は、やはりあの巨大な氷山だが、おそらくあの攻撃はしない。すきが大きいし、避けれたときに自身の視界や行動範囲を狭める邪魔者ものしかならないからだ。


俺は再び距離をつめようと、駆け出した。近づきさえすれば、体術などの心得のないアースに勝ち目はほとんどない。


『氷弾―五月雨』



アースがそういうと、今度は小さな氷の礫が大量に出現した。すると、正面だけではなく、様々な方向から氷の礫が俺に向かって飛んできた。

なるほど、そう来たか。今度は質ではなく、量で勝負ということか。だけど、これくらいなら余裕だ。

俺はあらゆる方向から飛んでくる氷を、剣で叩き潰した。俺を威力だけの騎士だと思ってもらっては困る。だが………数が多すぎる。というよりも、アースの魔力が桁違いすぎる。切っても切っても、アースが氷弾を生み出していくからキリがない。動き回って、アースに狙いをつけさせないような方向に、シフトしたほうがいいかもしれない。

俺はタイミングを見計らい、身体強化でアースを中心に、大きく回るように走りだした。しかし、思ってもみないことが起こった。アースの氷弾が、俺を追ってくるのだ。追尾する魔法なんて、見たことがない。おそらく、アースの領域内で可能な技なのだろう。それに加えて、身体強化を使う俺に対して、アースは正確に氷弾で狙ってくる。追尾と正確な氷弾の二つで、俺は完全に後手に回っている。対処に力をそがれてしまい、攻撃に転じることができない。

動き回りつつ、少し様子を見るしかない。アースもアースで、攻め手に欠けているだろう。初級魔法しか使えないというのは、やはり攻撃という面においては威力不足だ。



しばらくの間、アースの氷弾と俺の剣戟の応酬が続いた。どちらも、現状維持しかできないという感じだ。アースは攻めを緩めると、俺に近づかれてしまうため、攻撃を継続する必要がある。俺は俺で、その攻撃に対処する必要があるのだ。

すると、アースが先ほどまでの量よりも多くの氷弾を放った。そして、直接俺のことを狙うのをやめて、追尾の魔法のみに攻撃をゆだねた。チャンスではあるが、追尾の氷弾が多すぎるため攻めに行くことができない。………次の詠唱を許してしまうな。



『恣意雪』


は?
アースがそう詠唱すると、空から雪が降り始めた。天候操作の初級補助魔法か。これも初めて見たな。天候に干渉するため、膨大な魔力を要するのだ。アースならば、このくらい造作もないということか。

………ただ、この状況で雪を降らせることに、何の意味があるんだ?


『水弾』


クッ、今度は水弾か! 有形の氷弾と違い、無形の水弾はガードが難しい。………だが、氷よりは難しいという話だ。俺は氷弾と同様に、無数の水弾を切り払った。

アースの方に視線を移すと、アースは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

アース、楽しいか? 俺もこれまでの模擬戦の中で、一番楽しいぞ!

だが、楽しんでばかりもいられない。このままだと、アースの魔力と俺の体力の持久戦の戦いになる。先に尽きるのは………考えるまでもないな。いったん、領域外まで出て、攻めなおした方が良いかもしれない。

俺はすきを見計らって、足に力を入れた。その瞬間、体勢が崩れてしまった。

な、なんだ? いきなりのことで、なぜ自分の体勢が崩れたのが理解できなかった。しかし、大勢が崩れたことによって地面へと視線が移った。俺の目に飛び込んできたのは、降り積もった雪と水弾の水が混ざり合ったみぞれだった。そう、俺は滑ってしまったのだ。今思うと、アースの攻撃は上からのものが多くなっていた。今の地面の状態を悟られないように、アースは俺の視線を上の方へと誘導していたのだ。

アースはやはり賢いな。前から気づいてはいたが、アースは作戦を立てたり、指揮をしたりする立場も適しているのではないだろうか?

俺はすぐに剣を地面に突き刺し、体勢を何とか整えた。その瞬間、初手よりも数倍大きな氷弾が俺の目の前に迫ってきた。

アースはえげつないな………。だが、あれから俺はアースの巨大な氷を切れるように訓練していたのだ。そう、騎士団長に向かってアースが巨大な氷を放って、団長が見事に切った時、アースはたいそう感心していた。あの時、自分があの芸当をできないということに、ものすごく焦った。だから、次にこういう機会があったら、俺にも切れるということをアースに見せたかった。………だから、しっかり見ていろよ、アース!

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