53 / 149
第二章 初学院編
52
しおりを挟む
「誰だ!!」
男性二人の警戒度が一気に上がったのを感じた。
うーんこの感じ、キルに初めて会った時のことを思い出すな………。ここは素直に自己紹介から………と思った矢先、少年が二人の男性を手で制した。
「もしかしてその銀色の髪は………「白銀の狼」様でいらっしゃいますか?」
おっと、その呼び名を聞くのは夏休み前以来だな………。その呼び方は何というか、厨二心をくすぐられるような気持ちになるので、できれば知らないうちに忘れ去られてくれるといいな。
「えーと、一部ではそう呼ばれているらしいですね。改めまして、アース・ジーマルと申します。訓練のお邪魔をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「いえ、構いませんよ。僕の方こそ、初学院で噂のジーマル様にお会いできて光栄です。あ、僕は初学院の一年生です。」
やはり年下だったらしい。初学院では他学年とはあまり会うことはなく、会うことがあるとすれば食堂くらいだ。アルベルト殿下や兄上たちとも、会おうとしなければ会うことはめったにないのだ。
「俺はただの学生ですよ。では、俺はもう行きますね。訓練を邪魔しては悪いですから。それでは、頑張ってください!」
長くあの場を離れてしまえば、キルとキースに心配をかけてしまうかもしれない。そうなる前に、元の場所に戻ろう。
俺がお辞儀をしてその場から去ろうとすると、少年が俺を引き留めた。何か俺と話したいことがあるのだろうか? まあ、自身が初学院で少し有名であるという自覚はあるけど………。
「あの………ジーマル様は、キルヴェスター殿下の側近でいらっしゃいますよね? よろしければ、側近になった経緯と言いますか、決め手をお聞かせ願いますか?」
うん? 初めてされる質問だな。こういう質問をするということは、この少年は誰かの側近になりたいのだろうか? まあ、それくらいなら答えるけど………。
経緯に関しては、色々あったよな………。渡された腕時計が側近の証付きで、そのまま側近になったわけだからあまり参考にはならないと思う。決め手は………下心がないと言えばうそになるけど、それだけではもちろんない。キルの力になりたいと思ったし、キルに必要とされることがうれしかったから側近になろうと決めた。
「いいですよ。俺が殿下の側近になろうと思った理由は、殿下の力になりたいと思ったからです。あとは、殿下に必要とされることがうれしかったからです。………ありきたりな理由で、あまり参考にならないかもしれませんね。」
「いえ、そんなことはありませんよ! 必要とされるのはうれしいですよね。だけど………王族の方に側近にならないかと誘われたら、断れないという一面もありますよね?」
うーん、まあ確かに王族に言われたら断れる貴族はほとんどいないと思うけど………。この少年は、側近になりたくないのかもしれないな。あまり、無責任なことはいえないけど………。
「ないとはいえませんね。それだけ王族の方は強い力を持っていいますからね。………ただ俺自身は、側近側にも主を選ぶ権利はあると思うのです。私が知っているのはアルベルト殿下とキルヴェスター殿下の側近の方々だけですが、全員が実力があり努力を怠らない方たちです。側近として求められる者には、それ相応の何かを持っていると思います。だからこそ、それに見合うだけの主を選ぶ権利はあると思います。………無責任なことはいえないですが、もしかするとあなた自身が側近について色々悩んでいるのかもしれません。ですが、この国の殿下方、第三王子殿下のことはよく存じ上げませんが、他のお二人はとても素晴らしい方たちですよ。」
俺がそういうと、少年は少しフリーズした後に何かを考えこんでしまった。選ぶ権利があるとはいっても、実際はそうはいかない場面の方が多いような気がする。アルベルト殿下とキルなら、断られたからと言って罰することはないとは思うけど、どちらかというと少数派なような気もする。
「側近側にも選ぶ権利がある、ですか………。その発想はなかったです。主側も欲しい側近を手に入れるために、努力をしなければいけませんね。ジーマル様は、思った通り面白い方ですね。」
「え、えーと、お力になれたのなら光栄です。」
俺は面白い人だと思われていたようだ。まさか変なイメージが独り歩きして、問題児のようなイメージが俺についているわけではないよな?
「よろしければ、機会がありましたら魔法についてもアドバイスをいただけますか? ジーマル様の魔法のお話も聞いてみたいです。実は僕、魔導士志望でして騎士の訓練は教養として取り組んでいるのですよ。」
あーそういうことだったのか。騎士の訓練が初心者向けだったのは、魔導士志望だったからか。納得はしたけど、俺にアドバイスは適任ではないと思うけど………。なぜなら、俺が訓練を始めたのは今年の四月からだから、一年生とあまり変わりはないと思う。
「私でよろしければいいですけど………。今年から訓練を始めた俺は、一年生とあまり変わりはないと思いますよ?」
「僕はジーマル様とお話ができれば充分ですよ。」
「えーと、わかりました。俺でよければ、お話ししましょう。あ、ジーマルって呼びにくいですよね? よろしければ、アースと呼んでください。」
俺がそういうと、待ってましたと言わんばかりに少年の雰囲気が明るくなったのを感じた。もしかして、この少年は俺のファンだったりするのだろうか?
「はい、アース様! 僕のことは………ウェルと呼んでください!」
「ウェル君ですね、わかりました。」
すると、騎士たちの訓練の音が徐々に止み始めた。そろそろ休憩時間だから、キルたちが俺のいないことに気づいてしまう。戻らないと、心配をかけてしまうな………。
「ウェル君、そろそろ戻りますね。休憩時間になったみたいだから、俺がいないと心配をかけてしまいますから。」
「わかりました。またお会いできることを楽しみにしています!」
一瞬彼が大きな尻尾を振っているように見えるけど、きっと気のせいだろう。
俺はウェル君に手を振って、元の場所へと急いで戻った。
男性二人の警戒度が一気に上がったのを感じた。
うーんこの感じ、キルに初めて会った時のことを思い出すな………。ここは素直に自己紹介から………と思った矢先、少年が二人の男性を手で制した。
「もしかしてその銀色の髪は………「白銀の狼」様でいらっしゃいますか?」
おっと、その呼び名を聞くのは夏休み前以来だな………。その呼び方は何というか、厨二心をくすぐられるような気持ちになるので、できれば知らないうちに忘れ去られてくれるといいな。
「えーと、一部ではそう呼ばれているらしいですね。改めまして、アース・ジーマルと申します。訓練のお邪魔をしてしまい、申し訳ございませんでした。」
「いえ、構いませんよ。僕の方こそ、初学院で噂のジーマル様にお会いできて光栄です。あ、僕は初学院の一年生です。」
やはり年下だったらしい。初学院では他学年とはあまり会うことはなく、会うことがあるとすれば食堂くらいだ。アルベルト殿下や兄上たちとも、会おうとしなければ会うことはめったにないのだ。
「俺はただの学生ですよ。では、俺はもう行きますね。訓練を邪魔しては悪いですから。それでは、頑張ってください!」
長くあの場を離れてしまえば、キルとキースに心配をかけてしまうかもしれない。そうなる前に、元の場所に戻ろう。
俺がお辞儀をしてその場から去ろうとすると、少年が俺を引き留めた。何か俺と話したいことがあるのだろうか? まあ、自身が初学院で少し有名であるという自覚はあるけど………。
「あの………ジーマル様は、キルヴェスター殿下の側近でいらっしゃいますよね? よろしければ、側近になった経緯と言いますか、決め手をお聞かせ願いますか?」
うん? 初めてされる質問だな。こういう質問をするということは、この少年は誰かの側近になりたいのだろうか? まあ、それくらいなら答えるけど………。
経緯に関しては、色々あったよな………。渡された腕時計が側近の証付きで、そのまま側近になったわけだからあまり参考にはならないと思う。決め手は………下心がないと言えばうそになるけど、それだけではもちろんない。キルの力になりたいと思ったし、キルに必要とされることがうれしかったから側近になろうと決めた。
「いいですよ。俺が殿下の側近になろうと思った理由は、殿下の力になりたいと思ったからです。あとは、殿下に必要とされることがうれしかったからです。………ありきたりな理由で、あまり参考にならないかもしれませんね。」
「いえ、そんなことはありませんよ! 必要とされるのはうれしいですよね。だけど………王族の方に側近にならないかと誘われたら、断れないという一面もありますよね?」
うーん、まあ確かに王族に言われたら断れる貴族はほとんどいないと思うけど………。この少年は、側近になりたくないのかもしれないな。あまり、無責任なことはいえないけど………。
「ないとはいえませんね。それだけ王族の方は強い力を持っていいますからね。………ただ俺自身は、側近側にも主を選ぶ権利はあると思うのです。私が知っているのはアルベルト殿下とキルヴェスター殿下の側近の方々だけですが、全員が実力があり努力を怠らない方たちです。側近として求められる者には、それ相応の何かを持っていると思います。だからこそ、それに見合うだけの主を選ぶ権利はあると思います。………無責任なことはいえないですが、もしかするとあなた自身が側近について色々悩んでいるのかもしれません。ですが、この国の殿下方、第三王子殿下のことはよく存じ上げませんが、他のお二人はとても素晴らしい方たちですよ。」
俺がそういうと、少年は少しフリーズした後に何かを考えこんでしまった。選ぶ権利があるとはいっても、実際はそうはいかない場面の方が多いような気がする。アルベルト殿下とキルなら、断られたからと言って罰することはないとは思うけど、どちらかというと少数派なような気もする。
「側近側にも選ぶ権利がある、ですか………。その発想はなかったです。主側も欲しい側近を手に入れるために、努力をしなければいけませんね。ジーマル様は、思った通り面白い方ですね。」
「え、えーと、お力になれたのなら光栄です。」
俺は面白い人だと思われていたようだ。まさか変なイメージが独り歩きして、問題児のようなイメージが俺についているわけではないよな?
「よろしければ、機会がありましたら魔法についてもアドバイスをいただけますか? ジーマル様の魔法のお話も聞いてみたいです。実は僕、魔導士志望でして騎士の訓練は教養として取り組んでいるのですよ。」
あーそういうことだったのか。騎士の訓練が初心者向けだったのは、魔導士志望だったからか。納得はしたけど、俺にアドバイスは適任ではないと思うけど………。なぜなら、俺が訓練を始めたのは今年の四月からだから、一年生とあまり変わりはないと思う。
「私でよろしければいいですけど………。今年から訓練を始めた俺は、一年生とあまり変わりはないと思いますよ?」
「僕はジーマル様とお話ができれば充分ですよ。」
「えーと、わかりました。俺でよければ、お話ししましょう。あ、ジーマルって呼びにくいですよね? よろしければ、アースと呼んでください。」
俺がそういうと、待ってましたと言わんばかりに少年の雰囲気が明るくなったのを感じた。もしかして、この少年は俺のファンだったりするのだろうか?
「はい、アース様! 僕のことは………ウェルと呼んでください!」
「ウェル君ですね、わかりました。」
すると、騎士たちの訓練の音が徐々に止み始めた。そろそろ休憩時間だから、キルたちが俺のいないことに気づいてしまう。戻らないと、心配をかけてしまうな………。
「ウェル君、そろそろ戻りますね。休憩時間になったみたいだから、俺がいないと心配をかけてしまいますから。」
「わかりました。またお会いできることを楽しみにしています!」
一瞬彼が大きな尻尾を振っているように見えるけど、きっと気のせいだろう。
俺はウェル君に手を振って、元の場所へと急いで戻った。
128
お気に入りに追加
3,569
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる