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第二章 初学院編

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「そういうローウェルだって、バスローブと眼鏡というおませさんな格好をアースに褒められて喜んでいたじゃないッスか!」


「よ、喜んでねーよ! ………初めて言われたからその、少し驚いただけだ。」



するとお互いに昔のことを引っ張り出したりしながら、何やら言い争っていた。

うん、今日も幼馴染二人は仲がよろしいようで何よりだ。夜の団欒タイムに二人はこうして言い争うことが多いけど、俺はイケメン二人が少年らしさ全開で言い争っているのを見ていつも拝みたい気分なのだ。



「俺は二人のこういう少年らしい姿を見ることができて、色々楽しいよ。ほら、普段だとみんな落ちついているし、しっかりしているから新鮮だよ。」


「「それは俺達が子供という意味(ッス)か!?」」



いやーそういうわけではなく、新鮮で面白いという意味で楽しかったと伝えたかったんだけど………。そう捉えられてもおかしくはない言い方だったかな。

俺はとりあえず苦笑いを返しておいた。



「はー、いつにもましてやかましいな。お前たちは騒がないと生きていけないのか?」


「澄ましてるみたいッスけど、騒ぐと一番うるさいのはキースッスよ。」
「そうだ、そうだー。」



ジールとローウェルがそうニヤニヤしながら言うと、キースも流石にカチンときたようで「殿下、失礼いたします」といい、二人の首根っこを掴んでどこかへと行ってしまった。流石騎士、フィジカルにはかなりの差があるようだ。


………と、先程から不機嫌オーラが漂っているキルに話しかけてみようかな。あった時はそれ程不機嫌でもなかったはずだけどな………。



「キル、騎士の訓練は大変だよね。体調や体は大丈夫?」


俺がそういうと、窓の外を見ていたキルがゆっくりと俺の方を向いた。若干半目なのが気になるけど………。



「………ずいぶんと楽しそうだな。それも、頭を拭いてやるくらいに。」



楽しそうって………。あー、なるほど! 俺たちが楽しい合宿生活を送っているから、羨ましいのかな? キルは外泊したことがないと言っていたし、そういうのが羨ましいのかもしれない。キルも一緒にどうかと言いたいところだけど、ここは他人の家だし王族のキルが泊まるとなると警備やら何やらでいろいろと問題があるのだろう。キルが我慢をしているのかもしれないのに、俺が無神経にキルも泊まったらどうかなど言えるはずがない。



「えーと、うん、楽しいよ。頭を拭いたのは初日の一回だけで、ジールが頭を自然乾燥に任せてうろついていたから捕まえて拭くように言っただけだよ。今はいいかもしれないけど、冬になると風邪をひいてしまうかもしれないからね。」



俺がそういうと、キルは「しまった………」という顔をしてそっぽを向いてしまった。若干すねたみたいになったことに気が付いて、恥ずかしくなったのかな?



「………悪い。今のは忘れてくれ………。」


「合宿がうらやましかったんだよね? 前の俺だったら多分、キルと同じように思っていたから恥ずかしがることはないと思うよ。」


「え、いや………そういうことでは………あ、ある。」


変な言い回しだけど、きっと恥ずかしいからだろう。

あ、そうだ。今思いついたのだけど、外泊が難しいならキルの部屋で合宿をすればいいのではないか? いや、決してキルと泊まりたいとかそういうやましい気持ちがあるわけではなく、王城なら警備の面とかも問題ないかと思っただけだ。それに、皆と一緒なら俺の許容量もオーバーしないだろうから。



「少し提案なんだけど、次は王城で合宿を行うことは可能かな? それなら、キルも外泊よりはハードルが下がると思うんだけど………。」


「か、考えておく………。」



あ、少しうれしそう。ちょっとはさっきの不機嫌オーラが薄れてきたみたいだ。俺は温かい目でキルを眺めた。



「それもいいが、少しはこっちにも顔を出せ。体調を崩さないか心配だ。」


「あ、ごめん。俺もキルたちの所に見学に行くって言ってたのにね。ジールたちとも打ち合わせをして、近いうちに行くよ。」


「ああ。」



それから少し話しているうちに、キルはいつものキルに戻っていった。きっと訓練が大変で、ストレスがたまっていたのだろう。話の流れで俺は、召喚魔法について話を聞いてみた。いろいろな方法を試してはみたけどまったく反応がなかったので、他の人に意見を聞いてみるつもりだ。



「そうだな、俺も詳しくはないから何とも言えないが………。従魔法を参考にしてみたらどうだ? 従魔を従えるあたりで、なにか通じるものがあるような気がする。確か従魔契約の時には、血を使うはずだ。」



血か………。アニメや漫画ではよく血を使って何かをするシーンとかもあったからありかもしれない。変な魔方陣を書いたり、厨二病のような詠唱をしたりするよりは、可能性がありそうな気がする。



「まだ試してみたことがなかったから、やってみるね。何なら今やってみようかな。血は少しでも大丈夫かな?」



「まあ最初にやるなら少量がいいと思うが………自分で切るのか?」


「え、それ以外にどうやって血を出すの? ちょっと切れば問題ないでしょ。」


「自分ではやりにくいだろ? 俺がやる。」



やりにくいって………。ちょっと切るだけだから自分でもできると思うのだけど………。もしかして、俺が不器用すぎてサクッとやると思われているのだろか? いや、キルの方が刃物の扱いに長けているから名乗り出てくれたのかもしれない。別に断る理由もないし、任せようと思うけど………緊張するな。



「えーと、じゃあお願いします。」



俺が左手を差し出すと、メイドから受け取ったナイフを片手にキルが俺の手を掴んだ。いや待って、ドキドキするって! 手汗が出てきそう………。


「行くぞ。」


キルがナイフを俺の手に当てそういうと、扉が開かれ三人が帰ってきた。



「アース、聞いてくださいッスよ! キースのやつが………って、二人とも何しているんッスか?」


「ジール、察してやれよ。あれは特殊な遊びだ。手を取って片手にはナイフを持っているんだ、そういう遊びだ。」



「「どういう遊びだよ!」」



確かに客観的に見れば異常だったかもしれないけど、特殊な遊びとは何だよ! 変なプレイをしているみたいに言うなよな、まったく。俺はあらぬ誤解を訂正するために、貴族スマイルで三人に事情を説明した。


「なーんだ、そういうことだったのか。俺はてっきり二人が、変な遊びを覚えて来たのかと思ったぜ。」


「ちなみに変な遊びとは具体的にどういうものッスか?」



ジールがそういうと、ローウェルはいい笑顔でジールの肩をたたいた。ローウェルのやつ、そういう知識をどこで仕入れているんだ? 文官だから、色々な情報を持っているということだろうか? まだ無垢なローウェルのことを汚さないでほしい。



「よくわからないッスけど、ローウェルが俺のことを馬鹿にしているのはわかるッス。アース、ローウェルのことは放っておいて、早く試してみるッスよ!」



うん、俺も賛成だ。キルは何やら赤くなっていたけど、変なことを想像しでもしたのだろうか? キルも知識あり側のようだ。


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