異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

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しばらくすると、キルがこちらを向いた。キルも涙が収まるのを待ちながら、心の中でヴィーナ様と会話をしていたのだと思う。しかし当の俺は、涙があふれにあふれてしまい、自分ではどうすることもできずにただ立ちながら静かに泣いていた。

その俺に気づいたキルは、一瞬驚いた表情をしていたけどすぐに穏やかな笑顔になり、俺のそばまで近づいてきた。



「どうしてアースが泣いているんだよ、まったく。………泣いてくれてありがとう。………今回だけ、特別だ。」



キルはそういうと俺のことをそっと、胸に抱き寄せてくれた。そして、俺が前にやったように頭を静かに撫でてくれた。

しばらく俺は、感情のままキルの胸の中で涙を流し続けた。










――








泣き止みました。


待て待て待て! 俺、恥ずかしすぎないか? 当の本人よりも泣いていたし、それにキルに頭をなでられて………。

うがーーーーー! 俺はしゃがみこんで、頭を抱えた。



「えーと、アース………。俺もその………あれだ。何回か泣いてしまっているし、さっきも少し泣いたからお互い様じゃないか?」



まあ確かにそうなんだけど………。泣いたのももちろん恥ずかしいけど、それ以上にキルに頭をなでられて、胸に抱き寄せられて………。


いや、ダメだダメだ! ヴィーナ様のお墓の前で、キルとのあれこれを妄想するのはいくらなんでも失礼すぎる。よし、深呼吸して普通に戻ろう。俺は大きく深呼吸して、そして立ち上がった。



「も、もういいのか? まだ大丈夫でないなら、もう少し待つが………。」


「もう大丈夫だよ! 俺のことよりも、キルはもうヴィーナ様とお話しなくていいの?」


「ああ、今日はもう十分だ。報告したいことができたら、また来るよ。………このあとなんだが、少し時間は空いてるか? よければ、先週延期になった王都見学にいかないか?」



二人で!? それはもう、もはやデート………。
いや、煩悩よ出てくるな! キルは善意で王都見学に連れて行ってくれると言っているんだ。素直にうれしいし、まだまだ知らないお店もたくさんあるだろうから、お言葉に甘えようかな。

あ、その前に俺もヴィーナ様の墓前に手を合わさせてもらおう。ここまで来といて何もしないなんて失礼すぎる。



「ありがとう、お願いしようかな。………その前に、俺もヴィーナ様に挨拶させてもらってもいいかな?」


「ああ、もちろんだ。」



俺はお墓の前で手を合わせた。



『ヴィーナ様初めまして、アース・ジーマルと申します。キルは………キルヴェスター殿下は本当に素晴らしい方ですね。アルベルト殿下も………素晴らしい方だと思います。ヴィーナ様にはおわかりかもしれませんが、俺はキルのことが好きです。ただ、この気持ちは胸にしまっておこうと思います。キルの幸せを見届けたら、俺はここを去りたいと思います。………身勝手ながら一つお願いをさせてください。俺が側近の間にキルが窮地に立たされた時、キルを守りきるためのお力をほんの少しで構いませんのでお貸しください。ヴィーナ様の宝物は、俺が側近の間は何が何でも守り抜くと誓います。………また、ご挨拶をさせてください。失礼いたします。』




俺は一礼して、キルの方を振り返った。キルは遠くの方を眺めていたが、俺の挨拶が済んだことに気づくと俺に微笑みかけた。



「結構長い間、話していたな。何を話していたんだ?」


「そうだね………。キルが窮地に立たされた時、キルを守りきるためのお力をお貸しくださいと、お願いしていたんだよ。」


「え、いや………そうか。………じゃあ、いこうか。」





それから俺たちは王都見学をした。キルは色々な店や観光場所を紹介してくれた。キルは妙にテンション高めで終始、少年らしさ全開だった。そのお陰で俺は楽しく、王都見学をすることができた。










――















それから数か月の時が経過した。いまだに剣術の授業は筋トレや外周をしていることと、魔法実技での魔力制限の習得に苦労していること以外は普通の初学院生活を送っている。今は夏休みを一か月前に控えた七月、魔法実技の時間に初学院に激震が走った。


七月の最初の週の魔法実技の時間。俺たちはいつものように魔法訓練場へと向かった。普段通り魔導士団長のサール様をはじめ、魔導士団員が待機していて………。

うん? 妙に緊張感があるような気がするな………って、ものすごく貫禄のある方がサール様の隣にいるんですけど! 

いや、あの方どこかで………。あのいい感じの日焼け具合でダンディーな感じのご老人は………まさか!



「アース君たち! こちらに来てくださーい!」


キルとジールの緊張感が増している様に思えたが、呼ばれたからにはいかないわけにはいかない。

そう、俺たちを待っていたのは前公爵で前々魔導士団長のカーナイト・バルザンス様だ。カーナイト様は俺に腕時計を渡してくれた人だ。………あの時の非礼をお詫びしないと。




「では、今日からの特別講師を紹介するね! 祖父上のカーナイト・バルザンス前公爵です。祖父上ならアース君の魔力制限について何か知っているかと思って、四月の段階で依頼を出していたんだよ。アース君とジールはものすごいね! 現・前々魔導士団長から指導を受けられるのだからね!」


ちなみに、前魔導士団長はカーナイト様の息子であり、サール様とジールの父親でもある方が務めていたけど、サール様が成人したのと同時に魔導士団長を退き、今は外務大臣を担当している。

それよりも、確かに豪華なのはわかる。だけど、ハードルを上げすぎですよ、サール様………。すると、キルとジールが頭を下げた。



「「ご無沙汰しております、祖父上。」」


「久しぶり、キルヴェスター殿下そしてジール。二人とも元気そうで何より。………殿下、お顔が晴れやかになられましたね。あなたの笑顔をこうしてもう一度見ることができて、私は幸いです。それもこれもアース様、あなたのおかげにございます。もう一度、一族を代表して感謝を申し上げます。」


カーナイト様はそういうと、俺に一礼した。まさにあの時、腕時計をもらった時と同じ礼だ。すると、魔導士団員や周りの生徒が息をのむ音が聞こえてきた。それもそのはずだ、一生徒に対して前公爵で前々魔導士団長が頭を下げているのだから。


「あ、頭をお上げください! むしろ、このような素敵な腕時計をつくっていただきまして、私がカーナイト様にお礼を申し上げたいと思っております。本当にありがとうございました。それから、あの時はカーナイト様だと知らずに失礼な態度をとってしまって、申し訳ございませんでした。」



俺はそういい終わると、カーナイト様に頭を下げた。すると、穏やかな笑いとともにカーナイト様が頭を上げるようにと俺に言った。俺はゆっくりと頭を上げた。



「あの時は私が素性を明かさなかったので、アース様はなにも謝ることはありません。本日はアース様のお役に立てる良い機会だと思い、参りました。以前からサールより声がかかっていたのですが、抱えている仕事がなかなか落ち着かず、時間がかかってしましました。私がアース様に教えたいのは、娘のヴィーナが行っていた方法です。ヴィーナも魔力量が多く魔法の扱いに苦労していましたが、今からお教えする方法で私にも迫る魔導士となりました。時間はかかるかと思いますが、私が全力でサポートさせていただきます。」



ヴィーナ様も魔力量が多かったとのことで、俺と同様の苦労をされたのだろう。しかし、とある方法で一流の魔導士になることができた。その方法をお礼に教えてくださるということか………。

それは俺にとって、願ってもない話だ。この三か月訓練をしているが、あの氷山は最初の三分の二くらいにはなったものの、依然として大きすぎる。あと何年かかるかと心配していたけど、俺と同じ境遇だったヴィーナ様のとある方法を教えていただけれるとのことで、俺もカーナイト様の期待にこたえられるように頑張りたい。



「ありがとうございます! 私も全力で取り組みますので、よろしくお願いいたします!」


「良い返事ですね。では、早速訓練開始といたしましょう。」


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