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第二章 初学院編

35(※人目を避けた方が無難です)

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「サール様にご指導いただけるとは、光栄です。よろしくお願いいたします。ジールもよろしくね。」


「もちろんッス! 俺が兄上からアースを守るッスから、安心してくださいッス!」


この二人が本当に仲がいいのかわからなくなってきたけど、ジールがそういってくれるならお言葉に甘えよう。


「ありがとう、お言葉に甘えるよ。」


「さあ、二人とも始めようか!」


サール様はそういうと、楽しそうにしながら進み始めた。俺とジールもサール様のあとに付いて行こうとしたのだが、キルから待ったがかかった。


「サール従兄上、お待ちください! 俺もそちらに同行させていただいてもよろしいでしょうか?」


キルが同行? それはもちろんうれしいけど、キルは魔法よりも剣の方が得意ではなかっただろうか? もしかして、相対的に剣が得意なのであって魔法もすごいのかもしれない。しかし、サール様は笑顔で首を振った。



「キル、それはできない相談だね。俺が指導したいのは、魔導士として光る可能性のある原石だよ。キルは剣士の原石ではあるけど、魔導士の原石とは言い難いね。だからキルは皆と一緒にゆっくりと、魔法を教養として身につけるべきだよ。」



直接的というか間接的というか………いずれにしてもバッサリと切ったな。だけどそれはそうか。魔導士と騎士を両立なんて普通はしない。どちらの才能も持ち合わせているなんてまずないし、両方に時間を割くことになるわけだから非効率だ。だから………サール様の言っていることの方が正しい気がする。



「それは俺もわかっています。ですが………。」


キルはそこまで言うと、俺の方を向いた。


「アースは今日の魔法実技を楽しみにしていました。だから、張り切りすぎて昨日のように倒れるかもしません。従兄上の邪魔はしないと約束します。ですのでどうか、アースの主として初日の今日は監督させてください。」



キルはそういうと、サール様に頭を下げた。俺のため………? そうか、そうだよね………。俺がこんなに簡単に倒れていたら、キルも気が気じゃないよね。うれしいとか思ったけど、キルはまじめに俺の心配をしてくれているんだ。だから、俺がやるべきことは………。



「サール様、俺からもお願いいたします。今回のことは主に心配をかけた俺の責任です。ですからどうか、キルに同行の許可を………。」



俺はそこまで言うと、キルと同様に頭を下げた。サール様は少しの間沈黙していたようだけど、突然ふっと笑った。



「幼い子たちの素晴らしい主従愛だね! うん、美しいから許可しよう! キルもついておいで!」



少し理由があれな気がするけど、許可が出てよかった。これでキルも少しは安心してくれるだろう。






――






「では最初に、アース君の指導から始めよう! まずはアース君に魔力を感じてもらうところから始めないと。魔力に今まで触れてこなかったアース君は、魔力を感じることができないはずだからね。魔法初修者が行う通過儀礼をおこなうよ。」


「わかりました、よろしくお願いします。俺は何をすればよろしいですか?」


「アース君は特に何もする必要がないけど、自分の体内の魔力を感じることに集中してほしいかな。いきなり自分の魔力を感じろと言っても難しいだろうから、最初は他人から魔力を流してもらって、体内の魔力を目覚めさせて、魔力回路に魔力が流れるようにするんだ。ということでアース君、魔力を流してほしい相手はいるかな? 特に希望がなければこの俺が、優しく手ほどきするよ?」



なぜか卑猥に聞こえるのは気のせいだろうか? きっと、俺が煩悩にまみれているためだろう。
特に希望はないけど、キルの場合に意識しすぎて集中できそうにない。ここはサール様にお願いしよう。


「では、サール様に………」


「アース、俺がやってもいいか? アースが楽しみにしていた魔法のはじめの一歩だし、その………記念としてな。」


え、まじでーーー!?  ま、まあキルにやってもらうのはうれしいけど昇天しないかが心配だ。
いや、これはあくまで魔法の実技だ。医療行為みたいなものだ。そう、医療行為医療行為………。


「キルがよければお願いしようかな………。」


「俺がアース君に触りたかったけど、仕方がないね。ではキル、アース君の丹田付近に手を置いて魔力をゆっくりと流し込んで。流し込みすぎてはいけないよ。暴発してしまうからね。」



触りたいって、変態にもほどが………って、暴発!? 風船に空気を入れすぎたら破裂するようなものだろうか?



「アース、安心してくれ。ゆっくりするから………。」



いや、その言い方は完全にアウトだろ。もうだめだ。これは昇天を免れることはできないだろう。

キルはそういうと、俺のお腹に手を置いた。#%$&&%$ーーーーーーーーーーーーー。



すると、お腹が熱くなってくるのを感じた。これが、魔力なのだろうか?? キルの熱いものがお腹に流れ込んでーーー………って、本当にまずい。ここだけ切り取れば、そっち系の作品と遜色ない。


「アース、どうだ………感じるか?」



いや、もう本当にしゃべらないでほしい。
俺は魔力感知に集中するのと、煩悩を抑え込むのに必死で、それ以外になにも反応することができなかった。



「………アース? もっと奥まで流しこんだ方が良いか? アース?」


わざとやっているのか? いや、わざとに決まっている! ちゃんと、「魔力」という主語をつけてほしい。


一言文句を言ってやろうかと思い目を開くと、そこにはキルの顔が至近距離にあった。反応しない俺を心配しているのはわかる。だけど………。




もう我慢の限界だーーー!! 俺の体内の魔力たちよ、早く全身を駆け巡ってくれーーー!!!







その瞬間、空気が震えたのがわかった。そして、あたり一面が凍り付いた。魔力が氷に変換されたのが、感覚でなんとなくわかった。しかし、これは………。一面スケートリンクのようになってしまった。




「これは………半端ないッスね。」


「素晴らしいよ、アース君!! 通過儀礼でここまでの魔法を発揮できるとは………。君は間違いなく魔導士の素質があるよ!」




良かった………。剣術の時のように才能がなかったら、俺は何もできることがなかった。魔導士の素質があったようで安心した。だけど………キルの顔は少しみられそうにない。今は、少し離れてほしい。



「アース、おめでとう。成功してよかった。」


「………ありがとうございます、キルヴェスター殿下。ですが俺はもう大丈夫ですので、ローウェルとキースの方に戻ってください。」


「え、いや………なんでだよ? あと、その口調はなんだ? それに、今日はお前を監督すると言っただろ。」


「………ジ、ジールがいるから大丈夫です。無茶はしませんので、あちらにお戻りください。」


「………そうか、お前がそういうならそうする。ジール、後は頼んだ。」



キルはそういうと、一瞬悲しげな表情を浮かべてローウェルとキースの方へと歩いて行った。

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