36 / 149
第二章 初学院編
35(※人目を避けた方が無難です)
しおりを挟む
「サール様にご指導いただけるとは、光栄です。よろしくお願いいたします。ジールもよろしくね。」
「もちろんッス! 俺が兄上からアースを守るッスから、安心してくださいッス!」
この二人が本当に仲がいいのかわからなくなってきたけど、ジールがそういってくれるならお言葉に甘えよう。
「ありがとう、お言葉に甘えるよ。」
「さあ、二人とも始めようか!」
サール様はそういうと、楽しそうにしながら進み始めた。俺とジールもサール様のあとに付いて行こうとしたのだが、キルから待ったがかかった。
「サール従兄上、お待ちください! 俺もそちらに同行させていただいてもよろしいでしょうか?」
キルが同行? それはもちろんうれしいけど、キルは魔法よりも剣の方が得意ではなかっただろうか? もしかして、相対的に剣が得意なのであって魔法もすごいのかもしれない。しかし、サール様は笑顔で首を振った。
「キル、それはできない相談だね。俺が指導したいのは、魔導士として光る可能性のある原石だよ。キルは剣士の原石ではあるけど、魔導士の原石とは言い難いね。だからキルは皆と一緒にゆっくりと、魔法を教養として身につけるべきだよ。」
直接的というか間接的というか………いずれにしてもバッサリと切ったな。だけどそれはそうか。魔導士と騎士を両立なんて普通はしない。どちらの才能も持ち合わせているなんてまずないし、両方に時間を割くことになるわけだから非効率だ。だから………サール様の言っていることの方が正しい気がする。
「それは俺もわかっています。ですが………。」
キルはそこまで言うと、俺の方を向いた。
「アースは今日の魔法実技を楽しみにしていました。だから、張り切りすぎて昨日のように倒れるかもしません。従兄上の邪魔はしないと約束します。ですのでどうか、アースの主として初日の今日は監督させてください。」
キルはそういうと、サール様に頭を下げた。俺のため………? そうか、そうだよね………。俺がこんなに簡単に倒れていたら、キルも気が気じゃないよね。うれしいとか思ったけど、キルはまじめに俺の心配をしてくれているんだ。だから、俺がやるべきことは………。
「サール様、俺からもお願いいたします。今回のことは主に心配をかけた俺の責任です。ですからどうか、キルに同行の許可を………。」
俺はそこまで言うと、キルと同様に頭を下げた。サール様は少しの間沈黙していたようだけど、突然ふっと笑った。
「幼い子たちの素晴らしい主従愛だね! うん、美しいから許可しよう! キルもついておいで!」
少し理由があれな気がするけど、許可が出てよかった。これでキルも少しは安心してくれるだろう。
――
「では最初に、アース君の指導から始めよう! まずはアース君に魔力を感じてもらうところから始めないと。魔力に今まで触れてこなかったアース君は、魔力を感じることができないはずだからね。魔法初修者が行う通過儀礼をおこなうよ。」
「わかりました、よろしくお願いします。俺は何をすればよろしいですか?」
「アース君は特に何もする必要がないけど、自分の体内の魔力を感じることに集中してほしいかな。いきなり自分の魔力を感じろと言っても難しいだろうから、最初は他人から魔力を流してもらって、体内の魔力を目覚めさせて、魔力回路に魔力が流れるようにするんだ。ということでアース君、魔力を流してほしい相手はいるかな? 特に希望がなければこの俺が、優しく手ほどきするよ?」
なぜか卑猥に聞こえるのは気のせいだろうか? きっと、俺が煩悩にまみれているためだろう。
特に希望はないけど、キルの場合に意識しすぎて集中できそうにない。ここはサール様にお願いしよう。
「では、サール様に………」
「アース、俺がやってもいいか? アースが楽しみにしていた魔法のはじめの一歩だし、その………記念としてな。」
え、まじでーーー!? ま、まあキルにやってもらうのはうれしいけど昇天しないかが心配だ。
いや、これはあくまで魔法の実技だ。医療行為みたいなものだ。そう、医療行為医療行為………。
「キルがよければお願いしようかな………。」
「俺がアース君に触りたかったけど、仕方がないね。ではキル、アース君の丹田付近に手を置いて魔力をゆっくりと流し込んで。流し込みすぎてはいけないよ。暴発してしまうからね。」
触りたいって、変態にもほどが………って、暴発!? 風船に空気を入れすぎたら破裂するようなものだろうか?
「アース、安心してくれ。ゆっくりするから………。」
いや、その言い方は完全にアウトだろ。もうだめだ。これは昇天を免れることはできないだろう。
キルはそういうと、俺のお腹に手を置いた。#%$&&%$ーーーーーーーーーーーーー。
すると、お腹が熱くなってくるのを感じた。これが、魔力なのだろうか?? キルの熱いものがお腹に流れ込んでーーー………って、本当にまずい。ここだけ切り取れば、そっち系の作品と遜色ない。
「アース、どうだ………感じるか?」
いや、もう本当にしゃべらないでほしい。
俺は魔力感知に集中するのと、煩悩を抑え込むのに必死で、それ以外になにも反応することができなかった。
「………アース? もっと奥まで流しこんだ方が良いか? アース?」
わざとやっているのか? いや、わざとに決まっている! ちゃんと、「魔力」という主語をつけてほしい。
一言文句を言ってやろうかと思い目を開くと、そこにはキルの顔が至近距離にあった。反応しない俺を心配しているのはわかる。だけど………。
もう我慢の限界だーーー!! 俺の体内の魔力たちよ、早く全身を駆け巡ってくれーーー!!!
その瞬間、空気が震えたのがわかった。そして、あたり一面が凍り付いた。魔力が氷に変換されたのが、感覚でなんとなくわかった。しかし、これは………。一面スケートリンクのようになってしまった。
「これは………半端ないッスね。」
「素晴らしいよ、アース君!! 通過儀礼でここまでの魔法を発揮できるとは………。君は間違いなく魔導士の素質があるよ!」
良かった………。剣術の時のように才能がなかったら、俺は何もできることがなかった。魔導士の素質があったようで安心した。だけど………キルの顔は少しみられそうにない。今は、少し離れてほしい。
「アース、おめでとう。成功してよかった。」
「………ありがとうございます、キルヴェスター殿下。ですが俺はもう大丈夫ですので、ローウェルとキースの方に戻ってください。」
「え、いや………なんでだよ? あと、その口調はなんだ? それに、今日はお前を監督すると言っただろ。」
「………ジ、ジールがいるから大丈夫です。無茶はしませんので、あちらにお戻りください。」
「………そうか、お前がそういうならそうする。ジール、後は頼んだ。」
キルはそういうと、一瞬悲しげな表情を浮かべてローウェルとキースの方へと歩いて行った。
「もちろんッス! 俺が兄上からアースを守るッスから、安心してくださいッス!」
この二人が本当に仲がいいのかわからなくなってきたけど、ジールがそういってくれるならお言葉に甘えよう。
「ありがとう、お言葉に甘えるよ。」
「さあ、二人とも始めようか!」
サール様はそういうと、楽しそうにしながら進み始めた。俺とジールもサール様のあとに付いて行こうとしたのだが、キルから待ったがかかった。
「サール従兄上、お待ちください! 俺もそちらに同行させていただいてもよろしいでしょうか?」
キルが同行? それはもちろんうれしいけど、キルは魔法よりも剣の方が得意ではなかっただろうか? もしかして、相対的に剣が得意なのであって魔法もすごいのかもしれない。しかし、サール様は笑顔で首を振った。
「キル、それはできない相談だね。俺が指導したいのは、魔導士として光る可能性のある原石だよ。キルは剣士の原石ではあるけど、魔導士の原石とは言い難いね。だからキルは皆と一緒にゆっくりと、魔法を教養として身につけるべきだよ。」
直接的というか間接的というか………いずれにしてもバッサリと切ったな。だけどそれはそうか。魔導士と騎士を両立なんて普通はしない。どちらの才能も持ち合わせているなんてまずないし、両方に時間を割くことになるわけだから非効率だ。だから………サール様の言っていることの方が正しい気がする。
「それは俺もわかっています。ですが………。」
キルはそこまで言うと、俺の方を向いた。
「アースは今日の魔法実技を楽しみにしていました。だから、張り切りすぎて昨日のように倒れるかもしません。従兄上の邪魔はしないと約束します。ですのでどうか、アースの主として初日の今日は監督させてください。」
キルはそういうと、サール様に頭を下げた。俺のため………? そうか、そうだよね………。俺がこんなに簡単に倒れていたら、キルも気が気じゃないよね。うれしいとか思ったけど、キルはまじめに俺の心配をしてくれているんだ。だから、俺がやるべきことは………。
「サール様、俺からもお願いいたします。今回のことは主に心配をかけた俺の責任です。ですからどうか、キルに同行の許可を………。」
俺はそこまで言うと、キルと同様に頭を下げた。サール様は少しの間沈黙していたようだけど、突然ふっと笑った。
「幼い子たちの素晴らしい主従愛だね! うん、美しいから許可しよう! キルもついておいで!」
少し理由があれな気がするけど、許可が出てよかった。これでキルも少しは安心してくれるだろう。
――
「では最初に、アース君の指導から始めよう! まずはアース君に魔力を感じてもらうところから始めないと。魔力に今まで触れてこなかったアース君は、魔力を感じることができないはずだからね。魔法初修者が行う通過儀礼をおこなうよ。」
「わかりました、よろしくお願いします。俺は何をすればよろしいですか?」
「アース君は特に何もする必要がないけど、自分の体内の魔力を感じることに集中してほしいかな。いきなり自分の魔力を感じろと言っても難しいだろうから、最初は他人から魔力を流してもらって、体内の魔力を目覚めさせて、魔力回路に魔力が流れるようにするんだ。ということでアース君、魔力を流してほしい相手はいるかな? 特に希望がなければこの俺が、優しく手ほどきするよ?」
なぜか卑猥に聞こえるのは気のせいだろうか? きっと、俺が煩悩にまみれているためだろう。
特に希望はないけど、キルの場合に意識しすぎて集中できそうにない。ここはサール様にお願いしよう。
「では、サール様に………」
「アース、俺がやってもいいか? アースが楽しみにしていた魔法のはじめの一歩だし、その………記念としてな。」
え、まじでーーー!? ま、まあキルにやってもらうのはうれしいけど昇天しないかが心配だ。
いや、これはあくまで魔法の実技だ。医療行為みたいなものだ。そう、医療行為医療行為………。
「キルがよければお願いしようかな………。」
「俺がアース君に触りたかったけど、仕方がないね。ではキル、アース君の丹田付近に手を置いて魔力をゆっくりと流し込んで。流し込みすぎてはいけないよ。暴発してしまうからね。」
触りたいって、変態にもほどが………って、暴発!? 風船に空気を入れすぎたら破裂するようなものだろうか?
「アース、安心してくれ。ゆっくりするから………。」
いや、その言い方は完全にアウトだろ。もうだめだ。これは昇天を免れることはできないだろう。
キルはそういうと、俺のお腹に手を置いた。#%$&&%$ーーーーーーーーーーーーー。
すると、お腹が熱くなってくるのを感じた。これが、魔力なのだろうか?? キルの熱いものがお腹に流れ込んでーーー………って、本当にまずい。ここだけ切り取れば、そっち系の作品と遜色ない。
「アース、どうだ………感じるか?」
いや、もう本当にしゃべらないでほしい。
俺は魔力感知に集中するのと、煩悩を抑え込むのに必死で、それ以外になにも反応することができなかった。
「………アース? もっと奥まで流しこんだ方が良いか? アース?」
わざとやっているのか? いや、わざとに決まっている! ちゃんと、「魔力」という主語をつけてほしい。
一言文句を言ってやろうかと思い目を開くと、そこにはキルの顔が至近距離にあった。反応しない俺を心配しているのはわかる。だけど………。
もう我慢の限界だーーー!! 俺の体内の魔力たちよ、早く全身を駆け巡ってくれーーー!!!
その瞬間、空気が震えたのがわかった。そして、あたり一面が凍り付いた。魔力が氷に変換されたのが、感覚でなんとなくわかった。しかし、これは………。一面スケートリンクのようになってしまった。
「これは………半端ないッスね。」
「素晴らしいよ、アース君!! 通過儀礼でここまでの魔法を発揮できるとは………。君は間違いなく魔導士の素質があるよ!」
良かった………。剣術の時のように才能がなかったら、俺は何もできることがなかった。魔導士の素質があったようで安心した。だけど………キルの顔は少しみられそうにない。今は、少し離れてほしい。
「アース、おめでとう。成功してよかった。」
「………ありがとうございます、キルヴェスター殿下。ですが俺はもう大丈夫ですので、ローウェルとキースの方に戻ってください。」
「え、いや………なんでだよ? あと、その口調はなんだ? それに、今日はお前を監督すると言っただろ。」
「………ジ、ジールがいるから大丈夫です。無茶はしませんので、あちらにお戻りください。」
「………そうか、お前がそういうならそうする。ジール、後は頼んだ。」
キルはそういうと、一瞬悲しげな表情を浮かべてローウェルとキースの方へと歩いて行った。
220
お気に入りに追加
3,569
あなたにおすすめの小説
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う
らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。
唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。
そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。
いったいどうなる!?
[強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。
※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。
※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!
あ
BL
16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。
僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。
目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!
しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?
バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!
でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?
嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。
◎体格差、年の差カップル
※てんぱる様の表紙をお借りしました。
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる