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第二章 初学院編
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「ジャスパーさん、走り込みにまでお付き合いいただいてありがとうございます。」
「いえ、とんでもないですよ! このウォーキング………じゃなかった。走り込みくらい、騎士ならみんなやってますから!」
ウォーキングって言ったのなら、わざわざ訂正しなくても………。ジャスパーさんはとても明るく、元気のいい人だ。いや、素直すぎると言った方が良いかもしれない。
「もし筋力が付けば、皆と同じくらいには剣を振れるようになると思いますか?」
俺がそういうと、ジャスパーさんの笑顔が凍り付いた。素直すぎる彼には、少々酷な質問をしてしまったみたいだ。
「申し訳ございません、やっぱり何でもないです。それにしても、ご令嬢方はすごいですね。普段から動きが俊敏だとは思っていましたが、ここまで動けるのですね。」
男子だけでなく女子生徒も、剣術が義務付けられている。前から動きが素早いと思っていたけど、この訓練の賜物だったらしい。騎士団員の中にも女性騎士が三分の一程いるため、才能が有れば男女の区別がないのだろう。
「そうですね。俺も敵わない女性騎士の方が、団には何人もいらっしゃいますよ!」
それは頼もしい限りである。俺は体力が尽きたところで、休憩に入った。人の剣術を見学するのも訓練の一環らしい。大体の人が体を動かすの楽しみながら、剣術を行っているようだ。
しかし、一部次元が違うところがあるようだ。それは、キルとキースだ。速さや威力、ともに周りの生徒と比較にならない。二人とも真剣だけど、それを楽しんでいる様に見受けられた。
やっぱりかっこいいな………キル。好きな人が何かをしている姿って、輝いて見えるよな。あ、キルのキラキラと体力を使ってしまった反動で意識が飛ぶ………。
「ジャスパーさん、すみません。ちょっといってきます………。」
「アース君―――!?」
――
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。医務室かな、白を基調としていて前世の病院のような印象を受ける。
「よかった、起きましたね。アース君、気分はどうですか?」
俺に付き添ってくれていたのはモール先生だった。みんながいないということは、授業時間内なのだろうか?
「すみませんモール先生、お手数をおかけしてしまいました。体調は少し眠ったので大丈夫そうです。今は授業時間中でしょうか?」
「はい、今は午後の授業の音楽の時間です。授業時間ギリギリまで殿下方がいらっしゃったのですが、私が授業へ行くように促しました。」
「では私も音楽の授業へ………」
「いえアース君。授業自体はもうすぐ終わってしまいますので、もう少し休んでいてください。今日は初回の授業ですので、オリエンテーションと少し授業をするくらいで終わるでしょうから、また来週から頑張りましょう。」
午前の授業の途中から、午後の授業の終盤まで眠っていたのか。初学院が始まったことによる疲れも、自分で気づけなかっただけで、たまっていたのかもしれない。俺はモール先生の言葉に素直に従って、もう少し休むことにした。
授業の終了を告げるチャイムが聞こえてきた。先ほど腕時計でも確認したけど、十数分ほどですぐに午後の授業が終わってしまった。モール先生は俺が起きたのを見届けると、俺が少しでも休めるようにと席を外してくれた。
すると、廊下の方から足音が聞こえてきた。誰かが廊下を走って、こちらに向かってきているようだ。そして、勢いよく扉が開かれた。
「アース!」
キルだった。息を切らせながら、俺のことを心配して走ってきてくれたのだ。キルは俺が倒れることで、キルの母上のことがフラッシュバックしてしまうのではないかと前から考えていた。だから倒れないようにと気を付けていたのに、今回は失敗したな………。少し遅れて、側近のみんなも駆けつけてくれた。
「みんな、心配してくれてありがとう。俺は、ほら! 寝たら元気になったよ。」
俺がそういうと、キル以外の三人は安心した顔をした。だけどキルは………。
「………あれだけ、あれだけ体調には注意しろと言っただろ! それなのに、初学院のこんな序盤で倒れてたら………。」
キルはそういうと、俺がいるベッドの上に伏せてしまった。これは本当に弁明のしようがないくらい、俺が悪い。体力を使い切っても倒れることはほとんどなくなったけど、今回はキルの剣士姿がかっこいいなどと浮かれていた俺が悪いのだ。
「キル、本当にごめん。でもキル、聞いて。………俺はちゃんと生きるから。何回倒れても俺は、生きるから。………だから、そんな顔はしないで………。」
「………まず倒れない努力から始めろよ。ちゃんと生きるのは当たり前だ。心配をかけずに生きろ。………無事で何よりだ。」
もう倒れない。ここで、固く誓おう。俺は好きな人になんて顔をさせているんだ。キルに笑顔になってほしいと思っていたのに、俺がこんな顔にさせていたら元も子もない。
「わかった。もう倒れないから。」
キルは俺の言葉を聞くと、ゆっくりと立ち上がった。
「主、アース………。その、生きるとか死ぬとかってどういう意味ですか? 俺達には何のことだかさっぱりで………。」
ローウェルの言葉にキースとジールも頷いた。確かに、いきなり生き死にの話をされたら困るよな………。まだ調査中だと聞いたけど、三人には話した方が良いと思う。
「キース、その様子だとアルフォンスさんとまだ話す時間をとれていない?」
「ああ。兄上は最近忙しそうで、王城のアルベルト殿下の所に通っている。」
マクウェル兄上も忙しそうだし、キースが時間をとれなくても仕方がない。なら、ここでもう話してしまった方が良いかもしれない。俺がキルの方を向くと、キルもまた頷いた。
「いいか、今から話すことはまだ調査中だから他言厳禁なのだが………。」
そうしてキルは、あの日行われた会話の内容をかいつまんで三人に話した。三人は事の重大さに気づいたようで、聞いているうちに顔が曇っていった。
「いえ、とんでもないですよ! このウォーキング………じゃなかった。走り込みくらい、騎士ならみんなやってますから!」
ウォーキングって言ったのなら、わざわざ訂正しなくても………。ジャスパーさんはとても明るく、元気のいい人だ。いや、素直すぎると言った方が良いかもしれない。
「もし筋力が付けば、皆と同じくらいには剣を振れるようになると思いますか?」
俺がそういうと、ジャスパーさんの笑顔が凍り付いた。素直すぎる彼には、少々酷な質問をしてしまったみたいだ。
「申し訳ございません、やっぱり何でもないです。それにしても、ご令嬢方はすごいですね。普段から動きが俊敏だとは思っていましたが、ここまで動けるのですね。」
男子だけでなく女子生徒も、剣術が義務付けられている。前から動きが素早いと思っていたけど、この訓練の賜物だったらしい。騎士団員の中にも女性騎士が三分の一程いるため、才能が有れば男女の区別がないのだろう。
「そうですね。俺も敵わない女性騎士の方が、団には何人もいらっしゃいますよ!」
それは頼もしい限りである。俺は体力が尽きたところで、休憩に入った。人の剣術を見学するのも訓練の一環らしい。大体の人が体を動かすの楽しみながら、剣術を行っているようだ。
しかし、一部次元が違うところがあるようだ。それは、キルとキースだ。速さや威力、ともに周りの生徒と比較にならない。二人とも真剣だけど、それを楽しんでいる様に見受けられた。
やっぱりかっこいいな………キル。好きな人が何かをしている姿って、輝いて見えるよな。あ、キルのキラキラと体力を使ってしまった反動で意識が飛ぶ………。
「ジャスパーさん、すみません。ちょっといってきます………。」
「アース君―――!?」
――
目を覚ますと、そこはベッドの上だった。医務室かな、白を基調としていて前世の病院のような印象を受ける。
「よかった、起きましたね。アース君、気分はどうですか?」
俺に付き添ってくれていたのはモール先生だった。みんながいないということは、授業時間内なのだろうか?
「すみませんモール先生、お手数をおかけしてしまいました。体調は少し眠ったので大丈夫そうです。今は授業時間中でしょうか?」
「はい、今は午後の授業の音楽の時間です。授業時間ギリギリまで殿下方がいらっしゃったのですが、私が授業へ行くように促しました。」
「では私も音楽の授業へ………」
「いえアース君。授業自体はもうすぐ終わってしまいますので、もう少し休んでいてください。今日は初回の授業ですので、オリエンテーションと少し授業をするくらいで終わるでしょうから、また来週から頑張りましょう。」
午前の授業の途中から、午後の授業の終盤まで眠っていたのか。初学院が始まったことによる疲れも、自分で気づけなかっただけで、たまっていたのかもしれない。俺はモール先生の言葉に素直に従って、もう少し休むことにした。
授業の終了を告げるチャイムが聞こえてきた。先ほど腕時計でも確認したけど、十数分ほどですぐに午後の授業が終わってしまった。モール先生は俺が起きたのを見届けると、俺が少しでも休めるようにと席を外してくれた。
すると、廊下の方から足音が聞こえてきた。誰かが廊下を走って、こちらに向かってきているようだ。そして、勢いよく扉が開かれた。
「アース!」
キルだった。息を切らせながら、俺のことを心配して走ってきてくれたのだ。キルは俺が倒れることで、キルの母上のことがフラッシュバックしてしまうのではないかと前から考えていた。だから倒れないようにと気を付けていたのに、今回は失敗したな………。少し遅れて、側近のみんなも駆けつけてくれた。
「みんな、心配してくれてありがとう。俺は、ほら! 寝たら元気になったよ。」
俺がそういうと、キル以外の三人は安心した顔をした。だけどキルは………。
「………あれだけ、あれだけ体調には注意しろと言っただろ! それなのに、初学院のこんな序盤で倒れてたら………。」
キルはそういうと、俺がいるベッドの上に伏せてしまった。これは本当に弁明のしようがないくらい、俺が悪い。体力を使い切っても倒れることはほとんどなくなったけど、今回はキルの剣士姿がかっこいいなどと浮かれていた俺が悪いのだ。
「キル、本当にごめん。でもキル、聞いて。………俺はちゃんと生きるから。何回倒れても俺は、生きるから。………だから、そんな顔はしないで………。」
「………まず倒れない努力から始めろよ。ちゃんと生きるのは当たり前だ。心配をかけずに生きろ。………無事で何よりだ。」
もう倒れない。ここで、固く誓おう。俺は好きな人になんて顔をさせているんだ。キルに笑顔になってほしいと思っていたのに、俺がこんな顔にさせていたら元も子もない。
「わかった。もう倒れないから。」
キルは俺の言葉を聞くと、ゆっくりと立ち上がった。
「主、アース………。その、生きるとか死ぬとかってどういう意味ですか? 俺達には何のことだかさっぱりで………。」
ローウェルの言葉にキースとジールも頷いた。確かに、いきなり生き死にの話をされたら困るよな………。まだ調査中だと聞いたけど、三人には話した方が良いと思う。
「キース、その様子だとアルフォンスさんとまだ話す時間をとれていない?」
「ああ。兄上は最近忙しそうで、王城のアルベルト殿下の所に通っている。」
マクウェル兄上も忙しそうだし、キースが時間をとれなくても仕方がない。なら、ここでもう話してしまった方が良いかもしれない。俺がキルの方を向くと、キルもまた頷いた。
「いいか、今から話すことはまだ調査中だから他言厳禁なのだが………。」
そうしてキルは、あの日行われた会話の内容をかいつまんで三人に話した。三人は事の重大さに気づいたようで、聞いているうちに顔が曇っていった。
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