215 / 247
番外編 バーガンディの日常
海水浴⁉
しおりを挟む
ううむ…もう朝か…
昨夜は少々張り切ってしまったな…もっともっととおねだりをするアデルの姿が愛おしすぎて…
今も私の腕にしがみついて極楽気分で眠っている…天国なら夕べさんざん見せてやったと言うのに。
「ぐ、グラナダ様ぁ…海…ムニャ…大胸筋…ムニャムニャ…」
「大胸筋…」
なんの夢を見ているのやら。
愛しのアデルが〝ゴリマッチョ”は嫌だと言うので、それが何かは分からなんだが、では何ならいいのかと聞いたところ〝アスリート寄りナチュラルマッチョ”と、これまた分らぬことを言うではないか。
ともかく、「胸板は厚すぎず薄すぎず、硬すぎないけど柔らかすぎないやや硬め寄り」という、面倒な注文をそれでも喜んで聞いているのだから私も大概始末に負えぬ。
この程度の事でアデルが喜ぶのならいくらでも叶えて見せようではないか。
「しかし、海か…」
この国、リーガル王国に海は無い。国土が海に面してはいないのだ。
海に赴こうと思えば、カマーフィールドと西のグレインジャーの間、南西に5日ほどさらに進んだ、小さな隣国フローアミに行くしかならぬ。
海洋国フローアミ…前王ドノヴァンの治世では海産物の関税を法外にふっかけ良好な関係とは言えなかったが…我が甥クリフトはそれらを見直し、今ではかなりの友好国になってきているはずだ。
海…水着…波しぶきを浴びるアデル…海岸を砂を蹴って駆けるアデル…ふむ…良いな…
こうして私たち5年目にして初の物見遊山が決定した。
「おかーさまぁ!ただいまぁ!」
「アデル!またそんな大きな声を上げて!本当に仕方のない…年々元気になっていくわね?普通逆ではないのかしら?」
「えへへ、ごめんんさい。でもっ、嬉しくて!ローラン義兄さまとミランも一緒に行けるなんて!グラナダ様大好き!ありがとう!」
「良いのだアデル。お前の喜ぶ顔が私の宝なのだからな」
んんー、ちゅぅ。
私の元部下ローランは今ではこのカマーフィールド領主の妻だ。どうしたことか、気が付いたら伯爵夫人になっておった。
ローランは先だって嫡男ミランを産んだばかり。産後の身体を休めるためにと気候の良いフローアミへの同行を勧めたのだ。
幸い1歳になるグレンの乳母も同行している。3歳になるアベニア付きのフラッフィも随分役にたつようになってきたようだ。ローランもゆっくり身体を休めることが出来るであろう。
6台ほどの豪奢な馬車が小国フローミアの民の感嘆を誘う。
フローミアに最もほど近いグレインジャーから先ぶれを出しておいたので逗留地の用意は出来ているだろう。
到着次第、今日は身体を伸ばし休むとするか…
改良されたアデルの短距離転移陣。効率よく使い移動の5日を2日に短縮してみせたが、それでも疲れは取れぬと言うもの。グレインジャーとフローアミの間には碌に休める宿屋もなかったのだ。
「ねぇねぇグラナダ様、着いたらすぐに海見に行ってもいいですか?すっごく楽しみにしてたの~。ああ~ん待ち遠しい~。ね、アベニア♪」
「たのしみ~!」
「…元気だな……いや、まぁよい。共は連れて行くのだぞ。良いな。」
「は~い」
後ろの二人ががっくり肩を落としたのに…アデルは気づいておらぬのだろうな…マカフィー、ジョッシュよ、明日は休息日としてやろう。だが今日は…頼んだぞ…
旅宿につきアデルを見送ると瞬く間に眠りについた。
思いのほか疲れていたらしい。何しろアデルとは頭二つ分は背丈が違う。馬車の中では満足に身体が伸ばせぬのだ。
ーーーんちゅ、ーーー
ーーーぺろーーー
ーーーちゅ…ちゅ…ーーー
身体中に這う生温かい舌の感触に目が覚める。
「……ふっ、何をしておるのだ?」
「ええ~、もう夕食だから起そうと思って…」
「なにを起すつもりだ。しょうのない奴め。」
胸に顔をうずめて悪戯を続けるアデルの両脇から腕を差し込み引き寄せる。
そういえば大胸筋と言っておったな…可愛い妻だ。
「ふむ、潮の香りがするな」
「えへ、明日は一緒に行きましょうね。アベニアもお父様といっしょが良いって言ってましたよ。沖まで連れて行って欲しいって」
「そうか。頼もしい限りだな。」
明日のアデルを思い浮かべ、逸る気持ちで身を起こした。
昨夜は少々張り切ってしまったな…もっともっととおねだりをするアデルの姿が愛おしすぎて…
今も私の腕にしがみついて極楽気分で眠っている…天国なら夕べさんざん見せてやったと言うのに。
「ぐ、グラナダ様ぁ…海…ムニャ…大胸筋…ムニャムニャ…」
「大胸筋…」
なんの夢を見ているのやら。
愛しのアデルが〝ゴリマッチョ”は嫌だと言うので、それが何かは分からなんだが、では何ならいいのかと聞いたところ〝アスリート寄りナチュラルマッチョ”と、これまた分らぬことを言うではないか。
ともかく、「胸板は厚すぎず薄すぎず、硬すぎないけど柔らかすぎないやや硬め寄り」という、面倒な注文をそれでも喜んで聞いているのだから私も大概始末に負えぬ。
この程度の事でアデルが喜ぶのならいくらでも叶えて見せようではないか。
「しかし、海か…」
この国、リーガル王国に海は無い。国土が海に面してはいないのだ。
海に赴こうと思えば、カマーフィールドと西のグレインジャーの間、南西に5日ほどさらに進んだ、小さな隣国フローアミに行くしかならぬ。
海洋国フローアミ…前王ドノヴァンの治世では海産物の関税を法外にふっかけ良好な関係とは言えなかったが…我が甥クリフトはそれらを見直し、今ではかなりの友好国になってきているはずだ。
海…水着…波しぶきを浴びるアデル…海岸を砂を蹴って駆けるアデル…ふむ…良いな…
こうして私たち5年目にして初の物見遊山が決定した。
「おかーさまぁ!ただいまぁ!」
「アデル!またそんな大きな声を上げて!本当に仕方のない…年々元気になっていくわね?普通逆ではないのかしら?」
「えへへ、ごめんんさい。でもっ、嬉しくて!ローラン義兄さまとミランも一緒に行けるなんて!グラナダ様大好き!ありがとう!」
「良いのだアデル。お前の喜ぶ顔が私の宝なのだからな」
んんー、ちゅぅ。
私の元部下ローランは今ではこのカマーフィールド領主の妻だ。どうしたことか、気が付いたら伯爵夫人になっておった。
ローランは先だって嫡男ミランを産んだばかり。産後の身体を休めるためにと気候の良いフローアミへの同行を勧めたのだ。
幸い1歳になるグレンの乳母も同行している。3歳になるアベニア付きのフラッフィも随分役にたつようになってきたようだ。ローランもゆっくり身体を休めることが出来るであろう。
6台ほどの豪奢な馬車が小国フローミアの民の感嘆を誘う。
フローミアに最もほど近いグレインジャーから先ぶれを出しておいたので逗留地の用意は出来ているだろう。
到着次第、今日は身体を伸ばし休むとするか…
改良されたアデルの短距離転移陣。効率よく使い移動の5日を2日に短縮してみせたが、それでも疲れは取れぬと言うもの。グレインジャーとフローアミの間には碌に休める宿屋もなかったのだ。
「ねぇねぇグラナダ様、着いたらすぐに海見に行ってもいいですか?すっごく楽しみにしてたの~。ああ~ん待ち遠しい~。ね、アベニア♪」
「たのしみ~!」
「…元気だな……いや、まぁよい。共は連れて行くのだぞ。良いな。」
「は~い」
後ろの二人ががっくり肩を落としたのに…アデルは気づいておらぬのだろうな…マカフィー、ジョッシュよ、明日は休息日としてやろう。だが今日は…頼んだぞ…
旅宿につきアデルを見送ると瞬く間に眠りについた。
思いのほか疲れていたらしい。何しろアデルとは頭二つ分は背丈が違う。馬車の中では満足に身体が伸ばせぬのだ。
ーーーんちゅ、ーーー
ーーーぺろーーー
ーーーちゅ…ちゅ…ーーー
身体中に這う生温かい舌の感触に目が覚める。
「……ふっ、何をしておるのだ?」
「ええ~、もう夕食だから起そうと思って…」
「なにを起すつもりだ。しょうのない奴め。」
胸に顔をうずめて悪戯を続けるアデルの両脇から腕を差し込み引き寄せる。
そういえば大胸筋と言っておったな…可愛い妻だ。
「ふむ、潮の香りがするな」
「えへ、明日は一緒に行きましょうね。アベニアもお父様といっしょが良いって言ってましたよ。沖まで連れて行って欲しいって」
「そうか。頼もしい限りだな。」
明日のアデルを思い浮かべ、逸る気持ちで身を起こした。
応援ありがとうございます!
23
お気に入りに追加
2,973
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる