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エンタメ充実編

宴再び

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2日間ほどしっかりと休養をとり血色の良くなった僕を確認すると、お母様は領地に戻ることを決めた。

「いつまでもここに居られませんからね。トールキンはしっかり者ですし、ローランにも色々と言いつけてはありますが、それでもまだしばらくは私の助言が必要でしょう。それに…」
「それに?」
「ここから王都はいささか遠いのです。領地にならヨシュアもふた月に一度は帰ってこられますからね」
「お、お母様///仲が良くて安心しましたっ///」


明日お母様はお帰りになる…今日は身内だけの僕の生還祝いとお母様の送別会。だけど…お母様とここで過ごせる最後の夜…くすん…

「アデル、何もこれが最後ではなかろう。」
「だって、瘴気が濃くなったらまた来れなくなっちゃう…。グラナダ様は僕を帰してくれないし…」
「う、それは…」
「自分は王都から2か月も戻ってこなかったくせに…僕はすごく寂しかった…」
「いや、あれは…」
じーーーーーーー
「…考えておく…」「大好きグラナダ様♡」


グラナダ様とみんなの所を順番にまわっていく。今日は一瞬たりとも離れ無いというグラナダ様の確固たる意志を感じる…。腰に回された腕が力強い。

「ジョッシュさん!マカフィーさん!身体はっ、身体大丈夫ですか?マカフィーさん傷いっぱいだったって聞いて僕っ!」
「伯爵夫人がヒールをかけてくださいましたしね。もう大丈夫です。出現場所がほんの少しずれ、岩に激突しただけですよ。ご心配おかけしました」
「息苦しくなり始めて…少しヤバイなって焦ったんですけどね、どこからか空気の流れを感じたら息が楽んなって。そしたら今度はこいつが現れて、まあ驚いたといえば驚いたけど…最初から、必ず助けにくるってどこかで思ってたんで、ははっ全然余裕でしたよ。」
ジョッシュさんもマカフィーさんも大丈夫だったはずがないのに…。本当に守ってくれてありがとう。

「ところで子供たちはどうなったの?」
「ギルドに捜索が出されていた子供2人はすでに親元へ帰しました。残りの4人の子供は…孤児や親に売られた帰るところがない子供だったので…」
「ここでしばらく面倒を見て、瘴気への耐性が付かないようならカマーフィールドへと話がついたみたいですよ。ねぇ閣下?」
「うむ、このままカマーフィールドへとも話は出たが、あそこも今は人手不足なようでな」
「ああ、まぁ…お父様もワイアットお兄様も居ませんもんね…そっかでも、ここでちゃんとお世話してあげられるなら良かった!」


ホールの一角に数人の兵隊さんがやって来た。この人たちは…募集で数か月前に入隊したばかりの新参者だね。顔と名前がまだ一致しない。
手に何か持っている…笛だ!大小の横笛、縦笛、え?よく見ると最後にバンさんが入ってきて僕に親指を突き出してきた。

手を鳴らしてもみんなの注目を集めると一斉に笛を構える。そしてバンさんの指揮で始まるその演奏は…僕がハミングで教えたハイホーして勤労にいそしむの小人の歌!

すごい!演奏になってる!あ、アレンジ出来てる…ハーモニーになってる!

曲の終わりを待って僕は手のひらがかゆくなるほど拍手を送った。

「すごいすごいバンさん!どうしたのこれ?いつの間にこんなに吹けるようになったの?」
「猛特訓したんですよ。アデル様が無事お帰りになるその時に…これでお慰め出来るようにと。いかがでしたか?お気に召していただけましたか?」
「お気に召したなんてもんじゃないよっ!すごく感激した!」




娯楽文化の少ないこの異世界に誕生したエンタメ第一号だ!










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