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王位交代開始編

カマーフィールド伯爵 影の功績 グラナダ視点

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私のアデルは…妖精は妖精でもいたずら妖精ピクシーであったようだ。
私たちの子の代わりに殿下をどうにかするらしい…

怒涛の展開ですべてが進んでいく。
あれよあれよという間に王位交代が共通認識となっていく。いや、決定事項だと言っておったな。異論は許されぬらしい…

いつの間にか歴戦の指揮官のように有無をいわさず指示を出したアデルの号でこの日はいったん解散となった。


しかし、怒って、泣いて、笑って、アデルの表情はくるくると変わる。感情の抑制を美徳とする貴族家の子としては珍しい。
だが、悪くないぞカマーフィールド卿。アデルを能面のような人間にしないでくれたこと、全く以ってお手柄である。
それにしてもアデルの、容姿とはまた違う内包した魅力を知れば知るほど、それに伴い私の中であの朴訥な伯爵の株が際限なく上がっていく。

そうとも、あの魑魅魍魎の跋扈する王宮で私が不快感を持たずにすんだ貴重な御仁だ。
そして魔力の高さも申し分ない…ふむ…義理とはいえ親子になったのだ。どこかに与する事を敬遠しているのは承知のうえだが、アデルがおればこちらに引き込めるのではないか?さすれば王宮での動きは随分と易くなろう…
…それに卿には一言もの申したいことがあったのだ!閨関係!あれだけはいかん!いや良いのだが…いや一言言っておかねば…

アデルの手を引きそんな益体もないことを考える。
膝に座らせ、その重みを堪能しようとしたのだが私の手を引きはがし実に平然と隣に座る。ふむ、隣には座ってくれるのか…
ならば、と腰に手をまわせば…ふふ…身体を預けてくるではないか。アデルのぬくもりを感じるだけで心が満ちていく。


「アデルが戻ってからまだたった2日だというのに…全てが変わりそうだ…」

本当に…私の30年をこのたった2日間があっという間に塗り替えていく。なんという事だ。






「…グラナダ様、あの、…良くないってわかってたら投げ出しちゃ駄目ですよ。」
「絶対変えられない事なんて何一つないんだから。いくら王様の命令だって、本当にダメなことはダメってちゃんと言わないと。」
「国がより良くなるように…王弟って本当はそういうことも出来る立場だったでしょう?」


痛いところを突いてくる。アデルの言葉はいつでも的確に私を責める。その通りだ。今日までの私が無責任でなかったとどうして言えようか。

「じゃぁこれからは僕のところに避難して来てくださいね。ちゃんと守って、ぶっ」

ああ、それでもアデルは私を好いてくれるらしい。なんと愛おしい…このようなことを言われては抱きしめずにおれるわけがないだろう!

そのすでに覚えた柔らかな唇を軽くついばみ離れようとしたとき、なんと!アデルから口づけを仕掛けてくるではないか!
昨日の朝はまだ慣れぬ口づけに身を固くしていたというのに、なんという愛くるしさか!

「ん…ぅ、ふぅ」
「ふ、くちゅ」
「ん…んん?…んーーーーー!ぱぁ」

つい夢中になって貪ると激しすぎると叱られてしまった。
仕方ないだろう!お前が可愛いのが悪い!私のせいではない!当分愛の確認行為を禁止されてしまった以上口づけくらい思う存分して何が悪い!

再度その可憐な唇を捕まえようとしたとき…トマスの視線が突き刺さった。



ーおやめなさいませ旦那様…ー



その目がそう語りかける。むむ…わかった仕方ない…では続きは今夜二人きりで、そう、気が済むまでさせてもらおうか。



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