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第七章「虚像」
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しおりを挟む「ぁっ……」
中で出されてしまったのが分かり、僕は半ば放心状態で神近くんを見上げる。
「先輩が締め付けるから……」
神近くんが荒い呼吸で言うなり、ぐったりと倒れこんでくる。しっとりとした肌が重なり合い、僕たちはしばらくそのままの状態で荒い呼吸を繰り返した。
「バレなかったですね」
どこか残念そうな神近くんの口ぶりに、僕は汚れた箇所をティッシュで拭いながら神近くんを睨んだ。
「バレたらまずいよ。お母さん気絶しちゃうんじゃない?」
「しないですよ。ドラマの見過ぎです」
「そんなにドラマ見ないよ」
「はいはい。わかりましたから、早くお風呂に行ってください」
さっきまでの睦言を交わし合った時間は、夢だったのかもしれない。そう思わされるぐらいに神近くんはいつも通りに、僕をあしらってきた。
言い返しても勝てない僕は、ムッとした顔でお風呂に向かう。家の中は相変わらず静まり返っていて、まだ誰も帰ってきてはいないようだった。僕はホッと胸を撫でおろす。
神近くんはあんなことを言っていたけれど、本気でばれてもいいと思っているのだろうか。逆に僕は自分の家族にバレてもいいと思えるだろうか。
好きな人とずっとに一緒にいるのは幸せなことかもしれないけれど、同性同士の恋愛を家族がどう思うか。世間がどう思うか。それを考えると胸がずんと重たくなるように感じた。
僕はさっきまでの幸せで浮き立った気持ちとは反対に、暗澹とした気持ちも込み上げてしまったのだった。
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