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最終章「久遠」
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しおりを挟む朝早くに目が覚めた僕は、隣で眠る神近くんを横目にこっそりと布団を抜け出した。
音を立てないように慎重に身支度を整えると、部屋を出て玄関へと向かう。静まり返った家の中は、まだ薄暗くて緊張感に満ちていた。
こっそり玄関の隙間から抜けると、日差しが全身を覆い尽くしていく。周囲は清々しい朝の空気に包まれて、気持ちがいい。
最終日である今日、これまでお世話になったお礼を言いに神社に行こうと思い立ったのだ。
神社の石階段を上がると、誰もいない境内は少しだけ寂しい空気が漂っていた。
手水で手を清め、本殿のお賽銭箱の前に立つ。五百円を入れると大きな鈴を鳴らし、静かに手を合わせた。確か自分の住所と名前を言うんだろうなと、少し緊張した面持ちで頭の中で思
い浮かべていく。
お世話になったお礼と、神近くんが抱えている問題が解決しますようにと祈願して静かに目を開いた。本当だったら目の間には大きな神棚が見えるはずだったけれど、今は閉じられて見えない。それでも僕はどこか清々しい気分だった。
この神社は今までだってずっと、神近くんのことを見守り続けてくれていたはずだ。だからこそ、後は神近くんの心掛けしだいとなるだろう。
僕も神近くんの心の支えぐらいにはなれたらいいのに……そう思いつつ僕が振り返ると、神近くんが少し離れた場所から僕を見つめていた。
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