【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

文字の大きさ
149 / 497
3章 お爺ちゃんと古代の導き

128.お爺ちゃん達と[三の試練]①

しおりを挟む

 空に人がやってきてリアルで数週間経つ。
 雲の上で行動できる人もできてきて、いくつか試練クリア者も出てきた。
 攻略は出来ても、得られるスキルの使い道がないと困り果てる声もある。
 いよいよ私たちも動く頃か。
 記念コインも大体捌けた。店を畳んで攻略でもしようかと思い腰を上げる。


「どこに向かうつもりなんです?」

「そうだね。三の試練はエネミーを倒していくマップらしい。今回はそこに向かってみようと思う」

「なるほど、僕の水操作が役に立つ時がきたか!」


 何故かそう言いながらポーズを取る探偵さん。
 私達が出店している間、暇を持て余した探偵さんやスズキさんは二の試練を突破しており、水をいつでも操れるようになっていた。
 スズキさんはともかく、探偵さんまで取れるとは思わなかったよ。
 ちなみに一の試練のクリア者は意外と少なかったりする。
 私含めて3人だよ。そんなに難しいかな、あの場所?
 まぁそれは今問題ではない。
 探偵さんがウザ絡みしてくるので鬱陶しそうにしながら対応する。


「そうですね。私のAPが切れたらお願いします」

「そうやって、ウチの奥さんのご飯食べてればAP切れないの知っててそんな事言うんだから。どれだけ目立ちたがり屋なんですか。もっとメンバーにチャンスをくださいよ」


 ジキンさんが吠えた。
 うん、まあ彼の言い分はごもっとも。
 ランダさんの開発した赤の禁忌ご謹製『ダークマター』はサクサクとしたクッキーの中に少し緩めの胡麻団子が入った調理アイテムだ。
 見た目の暗黒物質感から取ってつけたネーミングだが、普通に美味しくて腹持ちも良く、天空人の非常食として重宝されている。
 お値段も“ランダさんにしては”お手頃で、5個入りでアベレージ500相当で販売している。
 これらの旨みは先ほども言われた通り、30分間APが消費されないと言う優れものだ。けどENは全然増えないのでおやつみたいな感覚で食べる人が多い。


「チャンスは与えられるものじゃなく、掴み取るものだよ? 私より先に活躍してみればいいだけじゃない。何でもかんでも与えてもらえると思わないでくださいよ。それに私も初めていきますからね。楽しみです」

「やっぱり情報仕入れてないんですね」


 ジキンさんは唸る。けれど、直ぐにくたびれたようにうなだれた。
 言っても無駄だと理解してくれたのだろう。


「はっはっは。ジキンさん、彼の無謀は今に始まった事ではないよ? 諦めたまえ。それに最善を尽くすより、もしもの時のためにと準備をするのも探偵道だ!」

「そうそう。ハヤテさんは思いつきで動くから準備しない人だよ?」

「僕は別に探偵になりたいわけじゃないんですけどね……まあいいです。それで? ランダムでたどり着くこの鯨さんがどうやってその場所に連れてってくれるんです?」

「なーに、こう言う時のコネクションてね? ランダさん、オババ様はどちらにいらっしゃいましたか?」

「ああ、あの人ならまだ広場で鍋突いてると思うよ?」

「ならば会いに行ってきます」

「何をしにいくんです?」

「実はあの人はこの鯨さんの運転手さんなんです。とある試練を乗り越えた人だけがその人にお目通りできて、そして要望を聞いてもらえる権利を得る」

「それ、古代語関連ですか?」


 スズキさんの鋭い指摘に私は頷き、ある程度纏めておいた画像をパーティメンバー全員にメール送信した。
 受け取ったスズキさんとジキンさんが頷き、探偵さんは興奮気味に私に擦り寄った。


「少年! 私に隠れてこんな面白いことやってたなんてずるいよ!」

「だから今回誘ったじゃないですか」

「ああ、今やってるクエストの?」

「現在進行形ですね。これによってフィールドが増える可能性があります。今の試練はそこに到達するまでの試練かもしれないと言うことです」

「なるほど……」

「あの、あなた?」


 そこでさっきまで黙認していた妻がようやく口を開いた。


「何かな?」

「私達は特にそっち系に興味はないのだけど」


 うん、まぁそうだよね。


「別に無理して付き合ってくれなくてもいいよ。イベントはこっちでやっとくから、君達は好きな事をしてたらいい。新しい素材を集めたり、自分たちに旨味のある事を優先するのも大事だよ。私たちの場合はそっちの方が面白いからやってるだけなのさ。あ、でも。戦闘面では助けてくれると嬉しい」

「そうね、好きにさせてもらうわ。ランダさんもそれで構わない?」

「アタシはどっちでも良いよ。今は食材が欲しいね。そこのフィールドに行けば新しい素材が見つかるってんなら嬉しいね」

「じゃあ私達は食材優先で」

「うん、こっちはイベントを紐解くことを優先にするよ」


 フィールドに赴く際に確認事項を終え、鍋を突いていたオババ様に新作料理の是非を問いながら耳打ちする。
 

(そろそろウチの調理スタッフが新しい食材を欲しがっているので三の試練へ移動お願いしても良いですか?)

(なんと、ランダ殿が? 今すぐ手配しよう!)


 慌てるように遺跡に向かっていくオババ様には、あの時のような威厳は一切見当たらなくなっていた。
 完全に胃袋掴まれてるとこうなるのか。
 気持ちはわかるけどね。


「オババ様はなんと?」

「ランダさんの新作が食べられるかもしれないと耳打ちしたら、こうしちゃいられないと急いで行かれました」

「なんだい、そりゃ」

「それだけウチの奥さんの料理が大好きだってことだよね。ウンウン」

「恥ずかしいこと言わないでおくれよ」


 ジキンさんがしたり顔で頷いてる。
 あなたの手柄じゃないでしょうに。

 少ししてオババ様が戻ってきた。
 あとは待つだけと私に話して鍋を突きに戻った。
 どれだけ夢中なんですか。
 そのうち鍋をつかんで飲み出しそうなほど真剣な顔つきである。
 まぁオババ様と名乗っていても見目麗しいお方だからね。
 天使さんもそうだったけど、20代にしか見えないんだ。
 そんな彼女たちが美味しそうに食べている姿はほっこりしてしまうよね。


 少しして何か空気が切り替わる感覚があった。
 スクリーンショット越しに街の景色が、配置換えされ、そこに浮かび上がった文字は[三の試練:蜃気楼の迷宮、ゴールは遠くて近い場所にある]

 
「さて、これから向かうのは蜃気楼の迷宮らしい。みんな、気を引き締めて行くように」

「そんな情報どこに出てました?」

「この街さ。スズキさんに分かるように言えば、海底にあった黄金宮殿があったろう?」

「はい……あぁ、そういうことですか。なる程。この鯨さんにも同じ仕掛けが?」

「そうです。背景がフィールドごとに様変わりし、私の目に古代語で持って教えてくれる。その答えがこれさ」


 先ほど写した画像を添付して送信、受け取ったジキンさんが渋い顔をした。


「またなんとも面倒な仕掛けを」

「古代イベントって最初っから手間しかないですよ。ね、スズキさん?」

「そうですね。でも足場が安定しない分、難易度は随分上がってる気がしますけど」


 スズキさんはそう言うけどね?
 海底だって普通は足場が安定しないよね。
 そういうと、彼女は忘れてましたと自分の特性を棚上げした。
 なんだか難しそうな話で盛り上がってる私達四人をよそに、妻たちは「行かないの?」と痺れを切らしている。


「今行くよ。ほら、みんな急いで」

「今僕たちじゃなくてハヤテさんに言いましたよね?」

「ですねー。でもハヤテさんはこういう人ですし」

「少年と一緒にいると本当に飽きないな!」


 三者三様の返事で、私達のパーティーは[三の試練]へと辿り着いた。

しおりを挟む
感想 1,316

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...