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42話 明かされた真実
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「洋一さん!」
「ミィちゃん!? どうしたの急に。くるなら来るって連絡くれたらいいのに」
「洋一さん、Dフォン持ってないから。連絡しようにも出来ないのよ」
「あぁ、そう言えばそんなのあったなぁ」
久しぶりの再会に思わず声を上げてしまったが、そう言えばそんなのもあったっけ。
身内同士でしか会話なんてしないものだから失念してたな。
「ハァイ、ミスターヨーイチ」
「ミレイが絶対寄るって言うから一緒にきたぞ」
「リンダさんやマイクさんもお久しぶりです。狭いところですがどうぞ」
立ち話もなんだからと暖簾を潜って入ってもらう。
席は6つ。
一つはヨッちゃんと卯保津さんが座り、ちょうど今お客さんが帰ったところだ。
空いた席に座ってもらい、お通しの空ウツボのソーセージを焼いたものを出す。
「こう言う平凡なものもたまにはいいな」
「ついさっきラ・ベットラによって来たところさ」
「ああ、越智間さんの。随分とオシャレな料理を出すでしょう。俺なんかとは見てる世界が全然違くて、萎縮しちゃうよ。お酒は日本酒でいい? それともワイン? うちはあまり洋酒に合うメニューがないんだけど」
「ビアでいいだろ。リンダはどうする?」
「アタシはウィスキーのロックで!」
「卯保津さん、俺ウィスキーについて詳しくないんで選んで買って来てくれませんか?」
「ちょうど俺の分が切れたところだ。ついでに買って来てやるよ」
そう言って、ダンジョンセンターと直通の転送陣で支部長室に帰った。
そこから電話で職員に買いに行かせるらしい。
オリンに前借りで借金を作ったエネルギーは、そろそろ返し終える頃だ。
新しく転送場所を開拓しようにも、候補は今のところないのがネックだな。
「消えた?!」
「ああ、うちの屋台はダンジョンセンターの支部長質と直通だから」
「そんなスキル聞いたことないわよ? ダンジョンから安全に帰還できるスクロールではないのよね?」
「違いますね、こいつのスキルです」
「キュッ(よろしくな)」
「スライム?」
「うちのスタッフのオリンだ。血抜きや苦味抜きなんかを担当してくれる。こう見えて繊細なので武器や敵意を向けないでくれると助かる」
「キュッキュー(妾のボディは脆いのでよろしく頼むのじゃ)」
「洋一さん、お料理でモンスターのテイムまでしてしまったんですね! あ、このソーセージも美味しいです」
「お口に合うようでよかった。それね、空ウツボのソーセージなんだ」
「えっ」
ミィちゃんが俺とお皿に何度も視線を往復させた。
それくらい驚いたようだ。
やっぱり初見じゃモンスター肉を腸詰めにしたと言ってもピンとこないよな。
「全然気づかなかったわ」
「それとこれはなんのソーセージだと思う?」
「これもソーセージだろ? 豚や牛、または合い挽きじゃないのか?」
マイクが訝しんでまじまじ見た後、バクリと食べて唸る。
美味いよね、リビングアーマーソーセージ。
「ウマッ、なんだこの肉! 今まで食ったことのない味だ!」
「ちょ、大袈裟よマイク。って確かにこれは美味しいわね」
「本当に、食べたことのない味。これはなんのお肉なんですか?」
「リビングアーマーだね」
俺の言葉にヨッちゃんがニヤつき、他三人がわかりやすいくらいに驚いた。
「ホワッツ!? リビングアーマーに肉があったなんて聞いたことないぞ!」
「実はこれ、俺の特殊調理から派生したスキルの仕業でさ。ミンサーと腸詰めというスキルからできたんだ」
「腸詰めって機械でやるのではなくてスキルなの?」
「うん、それがこのスキルの面白いところで、腸も羊のものではなくモンスターのものを使用する。どうもレアリティが関連してるらしくて、腸のランクと同等かそれ以下なら安定して腸詰めされるんだけど……ミィちゃんにもらったミンチ肉は何一つ成功しなかったなぁ。あれって何のお肉なの?」
それを明かした三人は目を見開いて驚く。
「何のお肉だと思いますか?」
「ランクAAの腸でも破けたからそれ以上だとは思うんだけど……」
「ミレイ、何のお肉を渡したのよ?」
「討伐対象の一部を、全部ミンチにしちゃったやつを厳選して」
「オゥ、シット」
「あの、そんなにヤバイ肉だったんですか、アレ。あの中に俺の適合食材があって、レベル上限が上がったから感謝しているんだけど」
「よりによって最低でもS~かぁ」
「S!?!」
今度は俺が驚く番だった。
しかもSはスタートでしかないらしい。
一体最大でどれほどのモンスターが入っているのか聞くのが怖い。
「じゃ、じゃあそのお肉で今の俺の料理を作らせてもらいます」
「お、Sランクの肉なんて市場じゃ滅多にお目にかかれねぇ! 食えるのはここだけだな!」
「そうなんですか?」
「デカすぎて持ち帰れねぇんだ。討伐部位を持ち帰るのでやっとだよ。ミレイのハリケーンミキサーなら問題なくミンチ肉にしちまうが、どのモンスターだったのかの面影を残さねぇからな」
「あー、分かります。俺はその場で調理しちゃうんでまだ分かりますが。ミィちゃん達は討伐がメインだから次へ次へと行っちゃうんでしょ?」
例のミンチ肉にゴーストソルトをまぶして、ゴーレムスパイスを振りかけて練り込む。
熱した鉄板に捏ねたタネを落とす。
最初はハンバーグで優勝していこうと思う。
案の定、ゴーストソルトで余分な肉汁が溢れてくる。
全員が鉄板から立ち上る湯気に全員が顔を突っ込む事態に。
もう匂いだけで美味い。
「ヨッちゃん、換気お願い」
「篭るとよろしくないからな」
「流石、理解者」
「何ヶ月一緒にいると思ってんだよ。という事ですお三方、湯気を堪能するのはお預けです」
「チッ、少しくらい良いじゃねーか」
「もう匂いだけで美味しそうなのがずるいわ!」
「これはビールで正解だな」
ハンバーグでいいならビールが最良だ。
けど宴はまだまだこれからである。
「買って来たぜー! お、うまそうなもん作ってんじゃねーか」
「例の肉のハンバーグです。実はヤバい肉だと判明しました」
「やっぱりか!」
「それを今の俺が調理したら? という体で第一弾を作ってます」
「ちょうどいいタイミングだったな!」
赤ら顔の卯保津さんが到着。
ちょうどハンバーグも焼き上がった。
あとは蓋をして蒸し焼き。
肉厚のハンバーグは中心まで火が通りきらない。
蒸し焼きはその中心に火入れをする為の手段だ。
一つづつ皿に移し、残りの肉汁でソースを作る。
さっきは洋酒に合わないメニューしかないと言っておきながら、赤ワインを取り出す。
それを肉汁に絡め、アルコールを飛ばして肉汁に香りだけ残した。
それをハンバーグに掛けて、後は各種ソーセージを合わせて付け合わせとする。
肉・肉・肉! の肉づくしである。
全員が息を呑む、その間にそれぞれの前にジョッキやコップ、それぞれのアルコールが置かれ、全員がグラスを打ち鳴らした。
「「「「カンパーイ」」」」
これがなければ始まらない。
肉に行きたい気持ちを抑え、アルコールで喉を潤してからそれぞれが思い思いに皿の上の肉を攻略した。
びっくりするくらい無言で、カチャカチャというナイフやフォークを皿へ当てる音だけ響き、満足そうに皿の上を綺麗にした。
あのミンチ肉がどのモンスターのものかはわからないが、極上のひとときであったことは確かである。
でもみんな、これがまだ第一弾だってこと忘れてないか?
俺は意気揚々と次のメニューの準備をする。
客席では、先ほどのメニューについての意見交換会が行われていた。
おかげでアルコールの消耗が早い。
多めに買って来たアルコールも、尽きるのが早そうだと思った。
「ミィちゃん!? どうしたの急に。くるなら来るって連絡くれたらいいのに」
「洋一さん、Dフォン持ってないから。連絡しようにも出来ないのよ」
「あぁ、そう言えばそんなのあったなぁ」
久しぶりの再会に思わず声を上げてしまったが、そう言えばそんなのもあったっけ。
身内同士でしか会話なんてしないものだから失念してたな。
「ハァイ、ミスターヨーイチ」
「ミレイが絶対寄るって言うから一緒にきたぞ」
「リンダさんやマイクさんもお久しぶりです。狭いところですがどうぞ」
立ち話もなんだからと暖簾を潜って入ってもらう。
席は6つ。
一つはヨッちゃんと卯保津さんが座り、ちょうど今お客さんが帰ったところだ。
空いた席に座ってもらい、お通しの空ウツボのソーセージを焼いたものを出す。
「こう言う平凡なものもたまにはいいな」
「ついさっきラ・ベットラによって来たところさ」
「ああ、越智間さんの。随分とオシャレな料理を出すでしょう。俺なんかとは見てる世界が全然違くて、萎縮しちゃうよ。お酒は日本酒でいい? それともワイン? うちはあまり洋酒に合うメニューがないんだけど」
「ビアでいいだろ。リンダはどうする?」
「アタシはウィスキーのロックで!」
「卯保津さん、俺ウィスキーについて詳しくないんで選んで買って来てくれませんか?」
「ちょうど俺の分が切れたところだ。ついでに買って来てやるよ」
そう言って、ダンジョンセンターと直通の転送陣で支部長室に帰った。
そこから電話で職員に買いに行かせるらしい。
オリンに前借りで借金を作ったエネルギーは、そろそろ返し終える頃だ。
新しく転送場所を開拓しようにも、候補は今のところないのがネックだな。
「消えた?!」
「ああ、うちの屋台はダンジョンセンターの支部長質と直通だから」
「そんなスキル聞いたことないわよ? ダンジョンから安全に帰還できるスクロールではないのよね?」
「違いますね、こいつのスキルです」
「キュッ(よろしくな)」
「スライム?」
「うちのスタッフのオリンだ。血抜きや苦味抜きなんかを担当してくれる。こう見えて繊細なので武器や敵意を向けないでくれると助かる」
「キュッキュー(妾のボディは脆いのでよろしく頼むのじゃ)」
「洋一さん、お料理でモンスターのテイムまでしてしまったんですね! あ、このソーセージも美味しいです」
「お口に合うようでよかった。それね、空ウツボのソーセージなんだ」
「えっ」
ミィちゃんが俺とお皿に何度も視線を往復させた。
それくらい驚いたようだ。
やっぱり初見じゃモンスター肉を腸詰めにしたと言ってもピンとこないよな。
「全然気づかなかったわ」
「それとこれはなんのソーセージだと思う?」
「これもソーセージだろ? 豚や牛、または合い挽きじゃないのか?」
マイクが訝しんでまじまじ見た後、バクリと食べて唸る。
美味いよね、リビングアーマーソーセージ。
「ウマッ、なんだこの肉! 今まで食ったことのない味だ!」
「ちょ、大袈裟よマイク。って確かにこれは美味しいわね」
「本当に、食べたことのない味。これはなんのお肉なんですか?」
「リビングアーマーだね」
俺の言葉にヨッちゃんがニヤつき、他三人がわかりやすいくらいに驚いた。
「ホワッツ!? リビングアーマーに肉があったなんて聞いたことないぞ!」
「実はこれ、俺の特殊調理から派生したスキルの仕業でさ。ミンサーと腸詰めというスキルからできたんだ」
「腸詰めって機械でやるのではなくてスキルなの?」
「うん、それがこのスキルの面白いところで、腸も羊のものではなくモンスターのものを使用する。どうもレアリティが関連してるらしくて、腸のランクと同等かそれ以下なら安定して腸詰めされるんだけど……ミィちゃんにもらったミンチ肉は何一つ成功しなかったなぁ。あれって何のお肉なの?」
それを明かした三人は目を見開いて驚く。
「何のお肉だと思いますか?」
「ランクAAの腸でも破けたからそれ以上だとは思うんだけど……」
「ミレイ、何のお肉を渡したのよ?」
「討伐対象の一部を、全部ミンチにしちゃったやつを厳選して」
「オゥ、シット」
「あの、そんなにヤバイ肉だったんですか、アレ。あの中に俺の適合食材があって、レベル上限が上がったから感謝しているんだけど」
「よりによって最低でもS~かぁ」
「S!?!」
今度は俺が驚く番だった。
しかもSはスタートでしかないらしい。
一体最大でどれほどのモンスターが入っているのか聞くのが怖い。
「じゃ、じゃあそのお肉で今の俺の料理を作らせてもらいます」
「お、Sランクの肉なんて市場じゃ滅多にお目にかかれねぇ! 食えるのはここだけだな!」
「そうなんですか?」
「デカすぎて持ち帰れねぇんだ。討伐部位を持ち帰るのでやっとだよ。ミレイのハリケーンミキサーなら問題なくミンチ肉にしちまうが、どのモンスターだったのかの面影を残さねぇからな」
「あー、分かります。俺はその場で調理しちゃうんでまだ分かりますが。ミィちゃん達は討伐がメインだから次へ次へと行っちゃうんでしょ?」
例のミンチ肉にゴーストソルトをまぶして、ゴーレムスパイスを振りかけて練り込む。
熱した鉄板に捏ねたタネを落とす。
最初はハンバーグで優勝していこうと思う。
案の定、ゴーストソルトで余分な肉汁が溢れてくる。
全員が鉄板から立ち上る湯気に全員が顔を突っ込む事態に。
もう匂いだけで美味い。
「ヨッちゃん、換気お願い」
「篭るとよろしくないからな」
「流石、理解者」
「何ヶ月一緒にいると思ってんだよ。という事ですお三方、湯気を堪能するのはお預けです」
「チッ、少しくらい良いじゃねーか」
「もう匂いだけで美味しそうなのがずるいわ!」
「これはビールで正解だな」
ハンバーグでいいならビールが最良だ。
けど宴はまだまだこれからである。
「買って来たぜー! お、うまそうなもん作ってんじゃねーか」
「例の肉のハンバーグです。実はヤバい肉だと判明しました」
「やっぱりか!」
「それを今の俺が調理したら? という体で第一弾を作ってます」
「ちょうどいいタイミングだったな!」
赤ら顔の卯保津さんが到着。
ちょうどハンバーグも焼き上がった。
あとは蓋をして蒸し焼き。
肉厚のハンバーグは中心まで火が通りきらない。
蒸し焼きはその中心に火入れをする為の手段だ。
一つづつ皿に移し、残りの肉汁でソースを作る。
さっきは洋酒に合わないメニューしかないと言っておきながら、赤ワインを取り出す。
それを肉汁に絡め、アルコールを飛ばして肉汁に香りだけ残した。
それをハンバーグに掛けて、後は各種ソーセージを合わせて付け合わせとする。
肉・肉・肉! の肉づくしである。
全員が息を呑む、その間にそれぞれの前にジョッキやコップ、それぞれのアルコールが置かれ、全員がグラスを打ち鳴らした。
「「「「カンパーイ」」」」
これがなければ始まらない。
肉に行きたい気持ちを抑え、アルコールで喉を潤してからそれぞれが思い思いに皿の上の肉を攻略した。
びっくりするくらい無言で、カチャカチャというナイフやフォークを皿へ当てる音だけ響き、満足そうに皿の上を綺麗にした。
あのミンチ肉がどのモンスターのものかはわからないが、極上のひとときであったことは確かである。
でもみんな、これがまだ第一弾だってこと忘れてないか?
俺は意気揚々と次のメニューの準備をする。
客席では、先ほどのメニューについての意見交換会が行われていた。
おかげでアルコールの消耗が早い。
多めに買って来たアルコールも、尽きるのが早そうだと思った。
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