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9.-10

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 気が付けば行為に夢中になっていた。
 あとで振り返れば自分でも呆れかえるほどの順応性である。


 ──人生初、と言えば仰々しいが、私にしてみればそのくらいセンセーショナルで、かつ、培ってきた倫理観をすっ飛ばさないと不可能なことのはずだった。
 
 まず手始めにレオン様との行為を第三者に見られたままする、というのも衝撃だったが、私をいれて三人で、というのはもっと衝撃的。
 手順も役割も知識としてはわかるけれど、何しろ奥手な私に縁のある事だと思わなかったのだ。

 でも、レオン様のからだに仰向けで乗せられて、胸に、秘所に執拗な愛撫を施され、シグルド様の滾りを握らされ、熱い飛沫を一度、二度と浴びているうちに、思考することに疲れてしまったようだ。というより、気持ちがよすぎて本能が理性を駆逐してしまった、というのが正しいかもしれない。

 上半身を起こしたレオン様に後ろから抱きかかえられ、両足を大きく開かされて、正面からシグルド様に貫かれたときには、私は殆ど無抵抗だったと思う。こんなことは恥ずかしい、と思っているのに、やすやすとシグルド様のそれを受け容れ、悦んでいるかのように身を捩ってしまった。

 既に私の手だけで二度は精を放っているシグルド様だったけれど、私の胎内の感触に声を殺しながら果てるのを耐え、叩きつけるように腰を動かし始めるころには、私もよがり狂っていたと思う。覚えているのは、背中から悪戯をするレオン様と、激しく突き上げるシグルド様の名前を呼んでいたことくらい。

 求められるまま四つん這いになって、それでも左腕を優しく庇われながらシグルド様に後ろから突かれ、幸せで嬉しくてレオン様のぬくもりも欲しくて、自分からレオン様のものを口にして。

 二人が代わるがわる私に囁きかける。まるで温かい春の雨みたいに降り注がれる、優しい声。
 リーヴァと呼ぶレオン様。姫、と呼び、そのうち初めて「リヴェア」と私の名を呼んだシグルド様。
 数えきれないほどの愛の言葉。

 眩暈がするほどの快楽と幸福感とともに、私が昇りつめレオン様もシグルド様もそれぞれ上と下で達して、口いっぱいになったレオン様の白濁をどうにか飲み下ろしたころ。

 「──美味しかったですか?」

 傍らからレオン様でもシグルド様でもない、今までこの部屋にいなかったひとの声がした。
 快楽に蕩け切った私の耳にも滑らかに響くテノール。

 レオン様に頭を撫でられ、口元を指で拭われ、シグルド様のものがゆっくりと引き抜かれる感触に身震いをしていると、ぎし、と寝台の敷布を踏みしめる音とともにひんやりとした大きな手に耳を撫でられた。

 のろのろと顔を向けると、銀色の髪と紫の瞳を妖しく光らせたオルギールが膝立ちになって傍らにまで来ていた。
 
 いつもは髪を撫でてくれるけれど今はレオン様が私の頭を撫でまわしているから、その代わりと言ってはなんだけれど耳に触れ、乱れた髪をそっと耳にかけてくれている。

 「……!?オル、ギール」

 ひぃ、と私は息を呑んだ。
 春の雨が降っていたと油断していたらいきなり吹雪に見舞われたような感じだ。

 昨日の夜、初めてオルギールが想いを告げてくれた。私も、それに応えた。
 そして、今朝の明け方まで熱烈に抱かれていたことが一気に映像と音声で私の脳裏に蘇る。

 私の奇声は決して大きなものではなかったはずだが、レオン様にもシグルド様にも衝撃は十分に伝わったらしい。

 オルギールか、と意外にもレオン様もシグルド様も冷静にその名を口にした。
 
 オルギールが嫉妬のあまりイヤらしすぎる暴挙に出たらどうしよう、とか。
 ヤキモチ焼きのレオン様、優しいけれど何気に俺様なシグルド様が束になってオルギールを排除しようとしたらどうしよう、とか(もちろん、オルギールが負けるはずはないだろうけれど、いたたまれないのである)。

 色々怯えたけれど、もしかすると杞憂に終わるのかもしれない。

 レオン様の放ったものでべたべたする自分の唇を舐めながら恐る恐るオルギールを見返すと、女の私から見ても艶冶な笑みを浮かべて、

 「可愛らしいですね、リア。……とても美味しそうに飲み込んで」

 笑顔からは乖離したとんでもないことをオルギールは言った。
 そして更に爆弾を投下する。……この世界に爆弾はないけれど。

 「私のも飲んで頂けますか?」
 「……おい、オルギール」

 レオン様は呆れかえったように半目になってオルギールを見やる。

 「来るなり咥えさせるつもりか?さすがにどうかと思うが」
 「俺なんてまだそこまでは」

 公爵様たちはそれぞれ卑猥なことを平然と言う。 
 
 オルギールは声をたてずにふふ、と笑った。
 笑うところではないのでは、と内心首を傾げていると、ちょっと失礼、と声が掛けられ、どうやったのか手品のようにいきなり私はオルギールに引き寄せられた。
 ささっと、公爵様たちの手が振り払われる。

 「オルギール!?」
 「おい、お前」
 「何をする」
 
 抗議の声を華麗にスルーして、オルギールは私をしっかりと抱き締めた。
 言うまでもないが、彼もとっくに一糸纏わぬ姿である。
 抱きしめられると当然オルギールの屹立が私のからだにあたって落ち着かないことこの上ない。
 
 「いきなり咥えさせるなど。そんな下品なことはしませんよ」

 ご心配なさらずに、とオルギールは私の耳元で言って頭やお尻を撫でた。

 あんなにも、今の今までさんざん二人の男性に抱かれていたのに、オルギールのひと撫ででまたも私は反応してしまう。
 気持ちも、からだも。
 恥かしいのに、気持ちがよくて。
 でも、どんな心配?と少々突っ込みたくなるのだけれど。

 「今から私がしっかりリヴェア様を愛して蕩かしてそれから……飲んで頂きましょうか」
 「飲むって、それ、オルギール……」
 
 激しく狼狽する私は当然の反応だと思う。
 盛り上がって気持ちが高まって自然な流れで男性自身を口に含むのはいいけれど、こんなに堂々と宣言されても困る。達するまで、となると顎も口も疲れるから。
        
 けれど氷の騎士、否、寝所では淫魔の王とも言うべきオルギールは、私を誑かすかのように尚もいっそう笑みを深くしてお尻や腰を指でなぞる。

 「私は仲間外れですか、リア?レオン様のはよくて私のはだめ?」
 「いえ、そんなわけでは」

 うっかり、反射的にそう答えてしまった。

 「よかった」

 オルギールは嬉しそうに言って私の髪にくちづけを落した。

 姫、俺もと、なんだか躍起になって主張する声と、張り合うな、お前は次回だ、とたしなめる声が聞こえる。

 オルギールにねっとりと唇を重ねられ、大きな手に抱かれて寝台に沈められながら私は目を閉じた。

 ……なんかまた、彼に乗せられたような気がする。
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