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寝室の扉を閉め、リヴェアの居間へ抜けると、ふうぅ、とユリアスは大きく息を吐いた。
十分に豪華だが、決して華美ではない、どちらかといえば温かみのある部屋。
この部屋の主そのもののようだな、とユリアスは頬を緩めた。
華やかな美女なのに冷たくも、権高にも見えない。まっすぐに自分を見つめる瞳、屈託なく笑う顔。
初めて引き合わされたときから、なんと鮮やかな印象の女だろう、とひそかに思ったものだ。美女は見慣れている。けれども、清廉なすっきりとした立ち姿、自分と似た色の艶やかな髪。強い光と意思を秘めた黒曜石の瞳。なんと言えばいいのだろう。一目みたら絶対に忘れない。そんな印象を与える女。
その彼女が、いざ自分の前にでると丁寧で完璧な挨拶をするくせに微妙に目を逸らし、表情を消していた。猛烈に腹が立ち、思わず酷い言葉を投げつけてしまった。
初対面の人間に攻撃的な言葉を投げてしまうのは自分の悪いクセだとわかってはいるが、レオンに頼るしかない、弱い立場の彼女にあそこまでの物言いをするべきではなかったのだ。
自分なりに反省し、次に会ったら詫びよう、きちんと話をしよう。そう思ったのに、最悪の初対面だったせいか、彼女はその後も自分と顔を合わせるたびに目を逸らす。いや、傍から見れば礼儀は完璧だった。しかし、いつもほんのちょっとずらし、真意を読まれまいとするかのように、あるいは、こちらのことなど興味もないというような態度をとる。
それに腹が立って、結局いつもあえて怒らせるような、傷つけるような物言いをしてしまったのだが。
戦勝祈願の宴のとき、ようやくまともに彼女と言葉を交わし、彼女の態度の理由を知ってからは。
……歯止めが利かないくらい彼女に惹かれてしまった。
短い間に、こんなにも彼女に囚われてしまうとは。
ユリアスは自嘲気味に笑って、リヴェアの居間のソファに腰を下ろした。
すぐ帰ろうと思ったのだが、正直に言えば少々歩きづらい。つまり、先ほどまでの光景で己が反応してしまっているのだ。うずくまるほどではないが、まあ無理して急いで帰ることもなかろう。
……やれやれ、色々な意味でとんでもない一日だ。
もう一度深く息を吐きながら座り心地のよいソファに背を預け、黒褐色の髪をかき上げながら上を向いて軽く目を瞑る。
エヴァンジェリスタ城の最上階、最奥の部屋はとても静かだ。
耳をすませば、寝室のあれこれが聞こえてくるのではないかと思うほど。
今頃はシグルドに組み敷かれているのか。いきなり手を咥えるのは彼らしいと言えば彼らしいが、別に手だけで満足する男ではない。
レオンの激しい愛撫は、止めに入ろうかと思うほどのものだったが、杞憂だったらしい。
始めのうちはこちらを気にして何度も出て行ってほしい、見ないでと言い、羞恥に全身を紅色に染めながらも、結局は与えられる快感に酔い、可愛らしく啼いて喘いでレオンの名を呼んでいた。
今はシグルドの名を呼んでいるのだろうか。俺も閨で名を呼ばれてみたいものだが。
それとも、声を封じられているだろうか。上から下から、欲望を同時に埋め込まれて……。
「ラムズフェルド公閣下」
いつのまにか侍女が入室していて膝をつき、恭しく首を垂れていた。
礼はいい、と簡単に返して顔を上げさせると、何かお飲み物は、と言う。
酒でも飲みたい気分だったが、彼女の部屋で、さらに隣の寝室ではあまり想像もしたくない光景が繰り広げられているかと思うとさすがにそこまでくつろぐ気にはなれない。
茶を所望し、一杯目だけ淹れさせて下がらせ、二杯目を飲んだら行くか、と椀を傾けていると、静かに扉が開いた。
取次ぎもなしに入室か、と音のする方へ目を向ければ、黒に銀を散らした綺羅綺羅しい礼装、銀色に輝く髪。
「オルギールか」
「これは……閣下」
紫の瞳が軽く見開かれ、そして慇懃に礼をとるべく目を伏せる。
ユリアスは肩をすくめた。
「もうそんな礼はいい、オルギール。お前は侯爵となるのだし、そもそも案内も乞わず姫の部屋へ入る間柄なのだろう?」
事実だけを述べているのかわずかな皮肉を孕んでいるのか。
どのようにでもとれるユリアスの言葉を、オルギールは礼儀正しく黙殺した。
それよりも、と呟いて寝室の扉へわずかに顔を向ける。
「後の方々は」
「真っ最中だ」
ごくり、と二杯目の最後のひと口を、ユリアスは大きく飲み下ろした。
そして、少し音をたてて椀を置き、じろりとオルギールを見上げる。
「お前も行くんだろう?」
「もちろん」
ごく当然と言わんばかりに、オルギールは頷いた。
もちろんて、お前な、と多少脱力してユリアスは呟く。
オルギールはちょっと首を傾げ、
「閣下もご一緒かと思っておりましたのに」
「それも悪くないと思ったんだが」
ユリアスは茶と一緒に出された小菓子をひとつつまみ、口に放り込んだ。
「……初回くらいは独占したいと思ったんだ。明日の日没までのあいつらの業務代行と引き換えだ。だから今は引き上げることにした。」
「なるほど」
「お前もそう思ったから昨晩のうちに、シグルドの帰還よりも一足先に姫の元へ来たんだろう?」
「どのようにでも。……まあ、一刻も早くお会いしたかったのは事実ですが」
「は、まったく、お前」
ユリアスは呆れたように首を振った。
氷の騎士。鉄壁の無表情。心さえも凍てついて、ひょっとすると人間ではないのではないか。
そう噂された男は無表情は変わりがないが、今ではひとりの女性への執着を隠そうともしなかった。
変われば変わるものだな、と、同じ女性に思いを寄せていることも一瞬忘れ、奇妙に感心してしまう。
「茶を、淹れなおしましょうか」
椀が空になっているのを見かねてか、オルギールは申し出た。
「侍女の淹れたものよりご満足頂けるかと」
「有難いが俺はもう行く」
オルギールの万能はとどまるところを知らず、茶芸も得意分野の一つであることは有名な話だ。
魅力的な話ではあったが、ユリアスは腰を上げた。
これからこの男までも加わるとなると、それこそ自分の思考が乱れて何も手につかなくなりそうだ。
いろいろと自分のからだの事情も落ち着いたことだし、彼は引き上げることにした。
ただ、これだけは言っておかねば。
扉へと向かいながら、ユリアスはしっかりとオルギールを見据えた。
「明日の晩は俺が彼女と寝所を共にする」
「……」
「くれぐれも、姫に無理をさせるな。俺は健康な彼女を抱きたい。病人の看病ではない。……が」
ユリアスはここまで言ってふとみずからの言葉を脳内で反芻するように押し黙り、いや、俺の城で看病するのも悪くないか、と小声で言った。治るまではと引き留められるし、とこれは心中でのみ付け足す。
「肝に銘じることと致しましょう」
地獄耳のオルギールに、ユリアスの独白が聞こえないはずがない。
オルギールはもともと意に沿わぬ言葉には沈黙をもって応じることが常だが、今回ははっきりと応答した。つまり、抱き潰すことはしない=看護と称してラムズフェルド城に長逗留などさせない、という一応の意思表示であろう。
氷の無表情の下にこれほど複雑な感情も、顔も隠していたとは。
「お前、変わったな」
扉を開ける前、もう一度振り返ってユリアスは言った。
オルギールは何も言わずまっすぐに彼を見返す。
不遜な男だが、嫌悪感はない。オルギールはユリアスよりも一つ年長であり、あらゆることに長じた彼に尊敬の念はあっても刺々しい対抗心はない。かえって、身分が同じ「公爵」であるレオンとシグルドのほうが、彼らが四つ年長とはいえ何かにつけ比較され、自分でも内心比較し、追いつけ追い越せとあがいてきたくらいだ。
この男が四人目の夫なのは構わない。もともと、三百年ぶりの「妻の共有」自体が、この男が姫の自立心を後押しし、グラディウスの表舞台に立つことを選択させたからこそなのだ。自分はこの男のおかげで姫の夫に納まったと言える。
「ではな、侯爵」
「……お気をつけてお帰りを」
姫を襲った曲者共のこと。その背後についての詮議。
応急処置はオルギールが終えただろうが、それらは最優先事項だろう。
誇り高い銀色の頭が心持ち下げられるのを視界の隅に捉えつつ、ユリアスはリヴェアの部屋を後にした。
******
音を極力立てないよう気配を消して寝室へと足を踏み入れると、薄明りの中、広大な寝台の上で、オルギールの、いや、ユリアスも想像していたとおりの光景があった。
男たちの荒い息遣い、くぐもった細い声、肌のぶつかる音、それと同調して高まる水音。
たちこめる汗と、精の匂い。
彼がもう少し寝台に近づくと、その様子はよりはっきりと彼の視界に飛び込んでくる。脳裏に直接焼き付けられるようだ。
四つん這いになって獣の姿勢で後ろから激しくシグルドに突き上げられ、仰け反った顎をとられて口いっぱいにレオンのものを含まされている。
負傷した彼女の左腕は、打ち付ける腰の勢いとは裏腹にやわらかくシグルドの左手で彼女の胴ごと抱き込まれている。寝台に手をついて負担をかけては、と、これほどの無体を強いながらも気遣いは忘れないらしい。
ある程度は予想しつつも、もしも彼女の傷へのいたわりが無いようなら止めに入らなくては、と考えていたオルギールは、内心安堵しつつ、冷静にリヴェアの顔を、姿を観察した。
──全身を赤く染め、火照らせて、レオンの分身を頬張りながら喘ぐように甘く鼻を鳴らしている。
ときおり、シグルドの手が結合部に回され、過敏に飛び出しているであろう粒を擦りあげるたび、抗議するように、けれどもそれさえも媚態にしか見えないような婀娜めいた様子でしなやかな肢体をくねらせて、与えられた刺激に反応を返している。レオンは比較的ゆっくりと己の分身をリヴェアの咥内に抜き差しし、愛おしそうに髪を撫で、たまに重く揺れる胸をそっと愛撫している。
口に納めるには相当辛いであろう長大なレオンのそれを咥えさせられながらも、寄せられた眉には嫌悪の色がないこと、顔中に涙と精液の痕があっても苦悶の表情では決してないことを確かめてから、オルギールは自分の上衣をゆっくりと脱ぎ去った。
十分に豪華だが、決して華美ではない、どちらかといえば温かみのある部屋。
この部屋の主そのもののようだな、とユリアスは頬を緩めた。
華やかな美女なのに冷たくも、権高にも見えない。まっすぐに自分を見つめる瞳、屈託なく笑う顔。
初めて引き合わされたときから、なんと鮮やかな印象の女だろう、とひそかに思ったものだ。美女は見慣れている。けれども、清廉なすっきりとした立ち姿、自分と似た色の艶やかな髪。強い光と意思を秘めた黒曜石の瞳。なんと言えばいいのだろう。一目みたら絶対に忘れない。そんな印象を与える女。
その彼女が、いざ自分の前にでると丁寧で完璧な挨拶をするくせに微妙に目を逸らし、表情を消していた。猛烈に腹が立ち、思わず酷い言葉を投げつけてしまった。
初対面の人間に攻撃的な言葉を投げてしまうのは自分の悪いクセだとわかってはいるが、レオンに頼るしかない、弱い立場の彼女にあそこまでの物言いをするべきではなかったのだ。
自分なりに反省し、次に会ったら詫びよう、きちんと話をしよう。そう思ったのに、最悪の初対面だったせいか、彼女はその後も自分と顔を合わせるたびに目を逸らす。いや、傍から見れば礼儀は完璧だった。しかし、いつもほんのちょっとずらし、真意を読まれまいとするかのように、あるいは、こちらのことなど興味もないというような態度をとる。
それに腹が立って、結局いつもあえて怒らせるような、傷つけるような物言いをしてしまったのだが。
戦勝祈願の宴のとき、ようやくまともに彼女と言葉を交わし、彼女の態度の理由を知ってからは。
……歯止めが利かないくらい彼女に惹かれてしまった。
短い間に、こんなにも彼女に囚われてしまうとは。
ユリアスは自嘲気味に笑って、リヴェアの居間のソファに腰を下ろした。
すぐ帰ろうと思ったのだが、正直に言えば少々歩きづらい。つまり、先ほどまでの光景で己が反応してしまっているのだ。うずくまるほどではないが、まあ無理して急いで帰ることもなかろう。
……やれやれ、色々な意味でとんでもない一日だ。
もう一度深く息を吐きながら座り心地のよいソファに背を預け、黒褐色の髪をかき上げながら上を向いて軽く目を瞑る。
エヴァンジェリスタ城の最上階、最奥の部屋はとても静かだ。
耳をすませば、寝室のあれこれが聞こえてくるのではないかと思うほど。
今頃はシグルドに組み敷かれているのか。いきなり手を咥えるのは彼らしいと言えば彼らしいが、別に手だけで満足する男ではない。
レオンの激しい愛撫は、止めに入ろうかと思うほどのものだったが、杞憂だったらしい。
始めのうちはこちらを気にして何度も出て行ってほしい、見ないでと言い、羞恥に全身を紅色に染めながらも、結局は与えられる快感に酔い、可愛らしく啼いて喘いでレオンの名を呼んでいた。
今はシグルドの名を呼んでいるのだろうか。俺も閨で名を呼ばれてみたいものだが。
それとも、声を封じられているだろうか。上から下から、欲望を同時に埋め込まれて……。
「ラムズフェルド公閣下」
いつのまにか侍女が入室していて膝をつき、恭しく首を垂れていた。
礼はいい、と簡単に返して顔を上げさせると、何かお飲み物は、と言う。
酒でも飲みたい気分だったが、彼女の部屋で、さらに隣の寝室ではあまり想像もしたくない光景が繰り広げられているかと思うとさすがにそこまでくつろぐ気にはなれない。
茶を所望し、一杯目だけ淹れさせて下がらせ、二杯目を飲んだら行くか、と椀を傾けていると、静かに扉が開いた。
取次ぎもなしに入室か、と音のする方へ目を向ければ、黒に銀を散らした綺羅綺羅しい礼装、銀色に輝く髪。
「オルギールか」
「これは……閣下」
紫の瞳が軽く見開かれ、そして慇懃に礼をとるべく目を伏せる。
ユリアスは肩をすくめた。
「もうそんな礼はいい、オルギール。お前は侯爵となるのだし、そもそも案内も乞わず姫の部屋へ入る間柄なのだろう?」
事実だけを述べているのかわずかな皮肉を孕んでいるのか。
どのようにでもとれるユリアスの言葉を、オルギールは礼儀正しく黙殺した。
それよりも、と呟いて寝室の扉へわずかに顔を向ける。
「後の方々は」
「真っ最中だ」
ごくり、と二杯目の最後のひと口を、ユリアスは大きく飲み下ろした。
そして、少し音をたてて椀を置き、じろりとオルギールを見上げる。
「お前も行くんだろう?」
「もちろん」
ごく当然と言わんばかりに、オルギールは頷いた。
もちろんて、お前な、と多少脱力してユリアスは呟く。
オルギールはちょっと首を傾げ、
「閣下もご一緒かと思っておりましたのに」
「それも悪くないと思ったんだが」
ユリアスは茶と一緒に出された小菓子をひとつつまみ、口に放り込んだ。
「……初回くらいは独占したいと思ったんだ。明日の日没までのあいつらの業務代行と引き換えだ。だから今は引き上げることにした。」
「なるほど」
「お前もそう思ったから昨晩のうちに、シグルドの帰還よりも一足先に姫の元へ来たんだろう?」
「どのようにでも。……まあ、一刻も早くお会いしたかったのは事実ですが」
「は、まったく、お前」
ユリアスは呆れたように首を振った。
氷の騎士。鉄壁の無表情。心さえも凍てついて、ひょっとすると人間ではないのではないか。
そう噂された男は無表情は変わりがないが、今ではひとりの女性への執着を隠そうともしなかった。
変われば変わるものだな、と、同じ女性に思いを寄せていることも一瞬忘れ、奇妙に感心してしまう。
「茶を、淹れなおしましょうか」
椀が空になっているのを見かねてか、オルギールは申し出た。
「侍女の淹れたものよりご満足頂けるかと」
「有難いが俺はもう行く」
オルギールの万能はとどまるところを知らず、茶芸も得意分野の一つであることは有名な話だ。
魅力的な話ではあったが、ユリアスは腰を上げた。
これからこの男までも加わるとなると、それこそ自分の思考が乱れて何も手につかなくなりそうだ。
いろいろと自分のからだの事情も落ち着いたことだし、彼は引き上げることにした。
ただ、これだけは言っておかねば。
扉へと向かいながら、ユリアスはしっかりとオルギールを見据えた。
「明日の晩は俺が彼女と寝所を共にする」
「……」
「くれぐれも、姫に無理をさせるな。俺は健康な彼女を抱きたい。病人の看病ではない。……が」
ユリアスはここまで言ってふとみずからの言葉を脳内で反芻するように押し黙り、いや、俺の城で看病するのも悪くないか、と小声で言った。治るまではと引き留められるし、とこれは心中でのみ付け足す。
「肝に銘じることと致しましょう」
地獄耳のオルギールに、ユリアスの独白が聞こえないはずがない。
オルギールはもともと意に沿わぬ言葉には沈黙をもって応じることが常だが、今回ははっきりと応答した。つまり、抱き潰すことはしない=看護と称してラムズフェルド城に長逗留などさせない、という一応の意思表示であろう。
氷の無表情の下にこれほど複雑な感情も、顔も隠していたとは。
「お前、変わったな」
扉を開ける前、もう一度振り返ってユリアスは言った。
オルギールは何も言わずまっすぐに彼を見返す。
不遜な男だが、嫌悪感はない。オルギールはユリアスよりも一つ年長であり、あらゆることに長じた彼に尊敬の念はあっても刺々しい対抗心はない。かえって、身分が同じ「公爵」であるレオンとシグルドのほうが、彼らが四つ年長とはいえ何かにつけ比較され、自分でも内心比較し、追いつけ追い越せとあがいてきたくらいだ。
この男が四人目の夫なのは構わない。もともと、三百年ぶりの「妻の共有」自体が、この男が姫の自立心を後押しし、グラディウスの表舞台に立つことを選択させたからこそなのだ。自分はこの男のおかげで姫の夫に納まったと言える。
「ではな、侯爵」
「……お気をつけてお帰りを」
姫を襲った曲者共のこと。その背後についての詮議。
応急処置はオルギールが終えただろうが、それらは最優先事項だろう。
誇り高い銀色の頭が心持ち下げられるのを視界の隅に捉えつつ、ユリアスはリヴェアの部屋を後にした。
******
音を極力立てないよう気配を消して寝室へと足を踏み入れると、薄明りの中、広大な寝台の上で、オルギールの、いや、ユリアスも想像していたとおりの光景があった。
男たちの荒い息遣い、くぐもった細い声、肌のぶつかる音、それと同調して高まる水音。
たちこめる汗と、精の匂い。
彼がもう少し寝台に近づくと、その様子はよりはっきりと彼の視界に飛び込んでくる。脳裏に直接焼き付けられるようだ。
四つん這いになって獣の姿勢で後ろから激しくシグルドに突き上げられ、仰け反った顎をとられて口いっぱいにレオンのものを含まされている。
負傷した彼女の左腕は、打ち付ける腰の勢いとは裏腹にやわらかくシグルドの左手で彼女の胴ごと抱き込まれている。寝台に手をついて負担をかけては、と、これほどの無体を強いながらも気遣いは忘れないらしい。
ある程度は予想しつつも、もしも彼女の傷へのいたわりが無いようなら止めに入らなくては、と考えていたオルギールは、内心安堵しつつ、冷静にリヴェアの顔を、姿を観察した。
──全身を赤く染め、火照らせて、レオンの分身を頬張りながら喘ぐように甘く鼻を鳴らしている。
ときおり、シグルドの手が結合部に回され、過敏に飛び出しているであろう粒を擦りあげるたび、抗議するように、けれどもそれさえも媚態にしか見えないような婀娜めいた様子でしなやかな肢体をくねらせて、与えられた刺激に反応を返している。レオンは比較的ゆっくりと己の分身をリヴェアの咥内に抜き差しし、愛おしそうに髪を撫で、たまに重く揺れる胸をそっと愛撫している。
口に納めるには相当辛いであろう長大なレオンのそれを咥えさせられながらも、寄せられた眉には嫌悪の色がないこと、顔中に涙と精液の痕があっても苦悶の表情では決してないことを確かめてから、オルギールは自分の上衣をゆっくりと脱ぎ去った。
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