溺愛三公爵と氷の騎士 異世界で目覚めたらマッパでした

あこや(亜胡夜カイ)

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7.-54

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 私は、本能的な恐怖によって後ずさった。

 もとい、あくまでも比喩である。レオン様の膝上でがっちり捕まえられていて、物理的に後ずさることなど不可能だ。しかし、からだが自由なら確実にそうしていたし、少なくとも精神的にはドン引きである。

 脳内でうるさいくらい警鐘が鳴り響いている。狂兵の前から離脱を勧められたときは、こんな警鐘は聞こえてこなかった。つまり、離脱しなくても何とかなったのだ。脳内に流れる「警鐘」は、私の本能的な「危険回避能力」に基づいている。傭兵の頃から、いや、そうなる前から、何かあると私はこの能力に頼って、大なり小なりの危険を回避してきたのだ。
 で、今は命の危険があるわけではないにせよ、「身体の危険」はひしひしと感じる。警鐘に頼るまでもないが、このままではとてもまずいことになる。逃げろ、逃げろ、すぐ逃げろ……

 でも、どうやって。

 鎧下だけ身に着けて丸腰。もちろん、好きなひとのことを武器をもって追っ払うことなど出来はしないが、脱出のきっかけになるものが何も見出せない。レオン様に深々と、それはもうしっかりと抱っこされているから、相手(れおんさま)を怪我をさせるつもりでもない限り、脱出は不可能だ。

 それに、オルギールまでいるし。

 きっと無理だろうけれど、なんとかレオン様から逃れたとしても、天幕には入口は一つだけ。そしてその方向にオルギールが仁王立ちになっている。

 前門の虎後門の狼。四面楚歌。絶体絶命。孤立無援。……

 故事成語と四字熟語。平静を保つためいくつか思いつくものを呟いてみたけれど、何の役にも立ちはしなかった。
 …それどころか、私の頭上では恐ろし気な会話が繰り広げられていたのだ。

 「……お前と行動を共にせず、作戦遂行中に単独行動をとった件がひとつ」
 「あれには、参りました」
 
 オルギールが、ちいさくても雄弁なため息をつく。

 「振り返れば、いらっしゃらない。総督の居室へ踏み込めばもぬけの殻」
 「聞いているだけでも胸が悪くなりそうだ」
 「あの‘隊長’など、気も狂わんばかりでした」
 「その場にいれば、俺もそうなったかもしれん」

 ちょっとだけ、私は項垂れた。

 二人の、そして皆の心配ぶりがひしひしと伝わってくる。
 レオン様とオルギール。そして、無事でよかったと言ってくれた、シグルド様とアルフ。
 今頃謝っても意味はないのだろうけれど、それについては心から「ごめんなさい」と言うしかない。

 だがしかし。

 「……もうひとつは、今日のことだな。離脱を勧められても応じなかったと」
 「さようで。……戦場では一瞬の判断が戦況を変えますのに、リヴェア様ほどの方が皆の勧めに耳を貸そうとなさらず」
 「リヴェアに当て身をくらわすことなど、お前以外できないだろうからな。お前がいてよかった」
 「恐れ入ります」
 「仕置きは、以上の二件についてか」
 「ただいまのところは、それでよろしいかと」

 今のところ!?まだあるの!?

 驚愕してオルギールに目をやれば、妖しい、美麗な笑みを薄く浮かべる彼と目が合った。

 「……レオン様。私も同席をお許し頂けますか?」
 「ちょ、それ、どう、」

 声が上ずって上手く喋れない。
 鳴り響く警鐘で頭はさっきから割れんばかりだ。

 「同席、か」

 レオン様、そこ、考えるところですか!?

 「……よかろう」

 逡巡の後、ふ、と自嘲気味に笑みを零しながら、レオン様は頷いた。

 いいんですか!?なんで!?

 「同席、と言ったな。よかろう。……医師として、だの、すみずみまで、だの、俺のあずかり知らぬところでどこまでリヴェアをいいようにしているか想像したくもないが。……まあ、今更なんだろう」

 短い沈黙の間に、レオン様はどのように自身の中で決着をつけたのかわからないけれど、自らにも言い聞かせるように言った。

 「俺の見ていないところで勝手にされるよりはずっといい。今日は同席だけだ。いいな」
 「恐れ入ります」
 
 恐れ入らないで!
 何を二人で合意してるのですか!?
 同席、だけ!?いや、それって、見物……!?

 「──レオン様のお許しも頂いたことですし、リヴェア様」

 滴る色気を滲ませたオルギールの声。
 これから自分の身に起こることが想像できるようなしたくないような。渇きがちな唇を何度も舐めながら、音もなく私に近寄る彼を見上げる。

 「リヴェア様、そのように怯えずとも宜しいのですよ」

 形の良い唇が弓なりにつり上がって、比喩ではなく本当に魔王のようだ。

 「……本当に、震えているのだな、リーヴァ。……可愛いな、大丈夫だ」

 レオン様が私のこめかみにちゅ、としながら優しく言った。
 大丈夫なはずがないでしょうに……

 「ちょっと、仕置きをするだけだ。……君の、からだに」
 「レオン様!!」

 私の悲鳴と同時に。
 すっかり濡れて着心地が最悪になっていた足通しが、中の下穿きと一緒に、一気に引き下ろされてしまった!

 ……外には夜哨の兵士、ここは天幕。
仄暗い灯火の下、私は下半身を裸にされて、レオン様とオルギールの視線に晒されることになったのだ。



**********



 「──美しいな、リーヴァ。……リヴェア」
 「本当に。……芸術品のようですね」

 イヤもやめても散々言った。多少、打撲傷を与えたっていいと思うくらい必死で、暴れてみたけれど無駄だった。

 私は今、レオン様に向き合うかたちで抱き込まれ、何も覆うもののない下半身を、オルギールに向けている。
 私の下衣を脱がせ、足首にわだかまるそれをオルギールに引き抜かせて、そのままうしろの正面に彼を立たせているのだ。
 寝台のクッションにもたれるようにして座るレオン様の上に、私は跨らされている。

 「俺が子供のとき、悪戯をするとよくされたように、尻でも叩こうと思ったが」

 レオン様の大きな手が、私の無防備なお尻をするすると撫でた。

 「改めて見れば、本当に美しい。こんなに美しいものに、手を上げることなどできんな」
 「仰せのとおり」

 私の背後で、頭上で、オルギールの滑らかなテノールが聞こえる。
 彼の目にどんなふうに自分が映っているのか、考えただけで発狂しそうだ。

 「ひゃあ!」
 「……ああ、よく濡れてる」

 お尻を撫でていた手が、片手だけ前に回って、私のからだ深くに入り込んだ。
 そのまま、先ほどよりもとてもゆっくり、羞恥を煽るように抜き差しを始めた。
 ──そうなればすぐに、生温いものが溢れてきて、彼の手を、自分の腿を伝って滴り落ちてくる。

 卑猥な水音。はあはあと、容易く喘ぐ自分の息遣い。
 イヤなのに。お仕置きなんかじゃない。こんなことは辱めだと思う。理性は私にそう語り掛け、抗議するよう促すのに、本能はとっくに抵抗を放棄している。

 腰を上げてお尻を振って。喘いでのけぞって両胸をレオン様に突き出して。普通に見れば悦んでいるようにしか見えないだろう。

 「清廉な美貌の君がこんなになって。いい眺めだが」

 レオン様は私の首筋を舐めながら言った。

 「これほど感じているようでは、仕置きにならんな」
 「宜しいのではないでしょうか、レオン様」

 ずっと、オルギールは私の痴態を見ているのだろうか。
 オルギールの声が、熱っぽく聞こえるのは気のせいだろうか。
 ……もうどうでもいいけれど。腹立たしくて、恥ずかしくて……気持ちがいい。

 「リヴェア様は、とても慎ましい、恥ずかしがりでいらっしゃいますから。羞恥心を煽るだけでも十分に罰となりましょう」
 「それもそうだ」

 くくっと喉奥で、レオン様は笑い声を立てた。
 
 「オルギール。……お前の目には、ここはどう見える?」

 ぐい、とお尻を揉む片手が、外側に押し開かれた。

 「蜜が溢れて。真っ赤になってレオン様の指を飲み込んで。……それは美味しそうに」

 オルギールがとんでもなく恥ずかしいことを言っている。
 物理的には、すぐ近くで言っているのだろうけれど、快感で理性の飛んだわたしには、とても遠くからのように聞こえる。
 レオン様は、傍らのオルギールに実況中継させているのだ。

 「可愛らしい後ろの花も、ひくひく蠢いて。……開花させられるのを待っているかのようです」
 「開花、させてないのか?」
 「レオン様が、まだでいらっしゃるようでしたので。……解すだけにさせて頂きました」
 「それは律儀なことだ」
 
 皮肉っぽくレオン様はまた笑うと、オルギール、と、少しだけ口調を改めた。
 
 「手伝え。……これを」
 「は」

 何が「これ」かわからなかったけれど、すぐ身をもって知ることになった。
 上衣が肩上あたりまでたくし上げられ、シュルリ、というかすかな音と共に、背中の紐を解かれ、胸当てが取り払われて。

 ふるん、とレオン様の目の前に、下着で押さえつけられけていた私の両胸がまろび出た。

 「ああ。……綺麗だ、リーヴァ」

 陶酔したような、レオン様の声が聞こえる。
 お尻を掴んでいたほうの手が、私の胸を包み込み、柔らかく揉みしだく。

 「あ、ああん、あん、……!」

 次の瞬間、激しくむしゃぶりつかれた。
 枯れかけていた自分の喘ぎが、他人事のようにまた聞こえてくる。
 お綺麗ですよ、リヴェア様、とオルギールの声も聞こえる。

 口いっぱいに胸を頬張られ、しこった先端を唇と、歯と、舌と、口蓋全てで貪られ、からだの中を蹂躙する指は、先ほどのゆっくりとした動きから一変して、胸を味わう激しさが伝播したように荒々しいものになる。
 
 「れおん、さ、ま、レオン、さま……!」
 「オルギール」

 音を立てて胸をしゃぶりながら、レオン様は呼びかけた。

 「蜜を、味わいたいか?」
 「お許し頂けるなら」
 「零れた分だけだ」
 「ありがたき幸せ」

 なに、これ。なに、この会話。オルギールに視姦させるだけじゃなくて、この上、なにを……

 強すぎる快感と羞恥に霞む意識の中で、それでも私の意思ではないのだと知らせたくて、もうイヤ、と呟いてみたのだけれど、声にはなっていなかったのかもしれない。
 
 いや、二人にとっては、そんなことどちらでも構わないのだろう。

 失礼します、という声とともに、オルギールが寝台に上がる気配がした。そして私のお尻に、濡れたところに、吐息がかかる。リア、と甘い声が後ろから聞こえ、対抗するようにリーヴァ、と、胸元からレオン様の声が聞こえる。

 最後に向かって、レオン様が指の動きを速めた。水音は激しくなり、両胸はかわるがわる貪られ、先端はより赤く、熟して色づいてゆく。オルギールが、私の太腿を伝うものを舐め上げ、喉を鳴らして嚥下する。
 
 私はとうに声の出なくなった口を開け、涙と涎に塗れながら、二人の淫靡な責苦に身を任せ続け。

 ……やがて、視界が真っ白になり、からだから全ての力が抜けた。
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