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第6章 魔力クリスタルの深淵

cys:148 クリザリッドの余裕

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「ほう、全てを明らかにするだと」

 クリザリッドが余裕の笑みで見据える中、夕暮れ時のオレンジ色の太陽が、祠の後ろにある谷とノーティスの背を後光のように照らす。
 まるでノーティスの怒りの炎のように。

「そうさクリザリッド。今お前がアネーシャに語っていた事。そして、お前の野望を明らかにさせてもらう!」
「フンッ、下らん。それを明らかにした所で意味はない」
「あるさ……もうこれ以上、決して犠牲者を出させない為に!」
「クククッ……」
「何がおかしい」

 苛立つノーティスをクリザリッドは見下ろし、ニヤリと嗤った。

「師弟揃って同じ道を歩むとはな」
「なんだと! まさか……」

 驚愕し目を見開いたノーティスに、クリザリッドは言い放つ。

「そうだ。お前の師、イデア・アルカナートも貴様と同じく……いや、それ以上に真実に気付いてしまったのだ」
「じゃ、じゃあ師匠は……」
「粛清した。偉大なる教皇様に剣を向けた逆賊としてな」
「嘘だ! 師匠が……師匠がお前なんかに負けるハズがない!!」

 ノーティスは激しい怒りと共に叫んだ。
 アルカナートが負けるなんて信じられないし、信じたくもないからだ。

 しかしクリザリッドは、そんなノーティスを嘲笑う。

「あの男をそこまで信頼してるとは、愚かな奴よ。ハーッハッハッハッ」
「クリザリッド、貴様……!」

 ノーティスが怒りに震え剣を構えた瞬間、アネーシャが背中から強く声をかけてくる。

「ノーティス、気持ちは分かるけど挑発に乗っちゃダメ! まずは心を落ち着けて」
「アネーシャ……!」

 ハッと振り向いたノーティスを、アネーシャは凛とした瞳で見つめ静かに頷いた。
 それにより心を落ち着かせたノーティス。

「ありがとう。それに、激情に駆られちゃいけないのは、昔レイっていう王宮魔導士から教わったよ」
「レイって、もしかしてあの派手な女の子?」
「知ってるのかアネーシャ」

 少し驚いた顔を見せたノーティスに、アネーシャは軽く微笑んだ。

「えぇ。アナタが私と戦って倒れてた時、ちょっと話をしたから」
「そうだったのか……」
「あの子、ジークって人とお似合いだったわ♪」
「フッ、どうやら間違いないようだな」

 ノーティスはアネーシャと話し完全に落ち着きを取り戻したが、同時にレイやジーク達の事を思い出し想いを馳せた。

───レイ、ジーク……2人とも元気にしてるかな。アンリやロウにも久しく会ってないし。けど、みんなを守る為にも俺は……!

 ノーティスはクリザリッドの方へ再び顔を向け、そのままアネーシャに告げる。

「アネーシャ。後は任せてくれ」
「ダメよノーティス、私も戦うわ!」
「ありがとう。でも、キミは傷ついている。だから、俺がヤツを退ける!」

 そしてノーティスは、クリザリッドを精悍な眼差しで見据えた。
 決して退かないという決意と共に。

「クリザリッド。この古の祠に眠る秘密を明らかにして、お前の野望を必ず阻止する」 
「フンッ、戯言を。できる訳無いだろう。お前もアルカナートと同様、ここで粛清されるのだからな!」

 クリザリッドがそう言い放った瞬間、ノーティスはキッと睨み剣を構えた。

「師匠が負けたなんて、俺は信じない! 光のクリスタルの名の下に限界まで輝け! 俺のクリスタルよ!!」

 ノーティスは額の魔力クリスタルから一気にゴールドの輝きを溢れさせ、その煌めきを身に纏うと、クリザリッドに飛び掛かり激しく乱打を打ち合い始めた。

 ドガガガガッ! ガキィンガキィンガキィンッ!!

「ハァァァァッ!」

 大きく剣を振りかぶったノーティス。
 だがその瞬間、
 
「ボディーが甘い!」

 その叫びと共に、ノーティスの胸にクリザリッドの強烈な前蹴りがドカッと舞い込み、一瞬にして鎧が砕かれた。

「ぐはっ!!」

 吹き飛ばされたノーティスは何とか倒れずに踏ん張ったが、クリザリッドの強大な戦闘力に戦慄を隠せない。
 認めたくないが、クリザリッドの力はノーティスが知る限り、アルカナートに最も近かったからだ。

 そんな事を感じているノーティスにクリザリッドは飛び掛かり、拳でドドドッ! と、思いっきり強大な連打を浴びせた。
 クリザリッドは剣術も卓越しているが、拳法も凄まじいのだ。

「がはっ……!」

 口から血を吐き、片膝をついたノーティス。
 鎧を砕かれた所にもろに喰らった強烈な拳打で、ノーティスは複数骨折をさせられてしまった。

 クリザリッドは、そんなノーティスを薄ら笑いを浮かべて見下ろしている。

「どうした? 全てを明らかにするんじゃなかったのか」
「あぁ、明らかにするさ……! 必ず」
「ならば、あの世で全て見てるがいい。死ね、エデン・ノーティス!」

 クリザリッドの凶刃がノーティスに襲いかかった。
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