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第6章 魔力クリスタルの深淵

cys:147 宿敵との邂逅

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───いにしえの祠ティコ・バローズ。師匠が行けと言う以上、ここに必ず何かあるハズだ。シドとアネーシャの言ってた事に繋がる重要な秘密が……!

 ノーティスは、それを凄く知りたいけど、逆に知りたくもないような矛盾した気持ちを感じている。
 けれど、まるで魂にその気持ちごと後押しされるように、そこへ向かっていた。

───俺はどうしてもこの目で確かめたい。魔力クリスタルの深淵に隠されている、スマート・ミレニアムの根幹に秘密を……!

 無論、ノーティスには分かっていた。
 その秘密を知ってしまえば、もう自分は勇者ではいられないかもしれない事を。

 けれど、ノーティスは止まらない。
 もし、自分が思っている通りの事であれば、その漆黒の陰謀から大切な仲間達を守りたいからだ。

 そして、もうすぐ辿り着く所まで差し掛かった時、ノーティスはハッと目を見開き臨戦態勢に入った。
 夕暮れ時の優しい日の光には全く似つかわしくない、とてつもなく巨大で攻撃的なオーラを感じ取ったから。

 また、そのオーラは1つではなく2つあり、巨大で邪悪な漆黒のオーラが、もう1つのオーラを覆い尽くそうとしていた。

 その覆い尽くされそうになっているオーラはなんと……

「ハァッ……ハァッ……くっ、なんて強さなの」
「クククッ……そういうお前の強さもなかなかの物。だが、お前は消えねばならぬ定めなのだ。メデュム・アネーシャよ」

 アネーシャを冷酷な笑みを浮かべ見下ろす男は、額の漆黒のクリスタルをさらに煌めかせた。
 闇の力に彩られたオーラが、より巨大に膨れ上がっていく。

「だが光栄に思え。このスマート・ミレニアムの天宮の守り人である、メタニア・クリザリッドの手によって葬られるのだからな!」
「なぜ、アナタは……スマート・ミレニアム軍は私達を消し去ろうとするの!」

 キッと睨みつけながら問いかけるアネーシャに、クリザリッドは剣を構えたままニヤリと零す。

「まあ、何も知らずに死ぬのも哀れ。教えてやろう。お前らを悪だという歴史を刷り込んでいるからだ。真実を知られては都合が悪いからな」
「じゃあ、アナタ達がスマート・ミレニアムの人達を……!」

 怒りに顔をしかめたアネーシャ。
 自分達を滅ぼそうとしているのが、スマート・ミレニアムの国民達ではなく、この男のせいだと分かったから。

「そうだ。、そして愚民共は疑う事を知らぬようになり、むしろ、真実に気付いた者を異端者として迫害したり、あまつさえ処刑してくれる事もある。クククッ……ハーッハッハッハッ!」

 クリザリッドはそう言って嗤った。
 スマート・ミレニアムの真実を知る立場にいる彼にとって、今の思考停止している国民達を思い出すだけで、滑稽で仕方がないのだ。

 その姿を見たアネーシャは、激しい怒りと共にクリザリッドを睨みつけた。

「許さない……! アナタの醜い欲望の為に、一体これまでどれだけの人達が犠牲になってきたと思ってるの!!」
「知った事か。全ては、偉大なるあのお方達の意思を成就させる為だ」
「あのお方達……?」
「フンッ、そこまで知る必要はない。ただ、あのお方達の為に愚かな国民共がどうなろうと、そんな事はどうでもいい。むしろ、今まで通り愚物でいてくれたらそれでいいのだ」

 そう吐き捨てたクリザリッドを、アネーシャは怒りと哀しみを宿した瞳で見つめている。
 確かにクリザリッドのしてきた事は、アネーシャにとって許す事の出来ない物だが、同時に感じてしまったからだ。

 クリザリッドの心の奥に秘めた哀しみを。

「クリザリッド……アナタは間違ってるわ」
「ふんっ……あのお方達の意思に間違いは無い」
「……本当にそうかしら?」
「何が言いたい」

 訝しむ顔をしたクリザリッドに、アネーシャは凛とした眼差しを向けた。

「アナタがいうあのお方達、本当にアナタの願いを叶えてくれるの?」
「なんだと!」

 クリザリッドは思わず目を見開き、アネーシャを睨んだ。
 アネーシャの今の言葉が、クリザリッドの心にグサッと突き刺さったからだ。

「キサマ……なぜそれを!」
「フフッ、図星だったようね。アナタがあのお方達という存在の意思を叶えようとするのは、アナタにどうしても叶えたい願いがあるんでしょ。しかも、それは金や権力じゃなく、恐らくもっと別の……」
「黙れっ!!」

 クリザリッドは怒りと共に罵声で話を断ち切ると、アネーシャを憎しみの炎を宿した瞳で睨みつけた。
 アネーシャが言い当てた事が、あまりにも核心を突いていたからだ。

「あら、語るに落ちたってヤツね」
「キサマはやはり危険だ。元々『封ずる者』としても生かしてはおけんと思っていたが、エデン・ノーティスが完全に真実に気付く前に、お前を消し去ってやる!」
「『封ずる者』? 何を言ってるの」

 アネーシャは聞いた事の無い話に不思議な顔をして問いかけたが、クリザリッドは答えない。
 むしろアネーシャを睨んだまま、再びより闇の力を溢れさせ剣を振りかぶった。
 それに対し、防御の構えを取ったアネーシャ。

「くっ……!」
「ムダだ……今のお前に防ぐ事は不可能。闇に散るがいい! 封ずる者……メデュム・アネーシャよ! 『ダーク・ドゥナミティ』!!」

 凄まじい闇のエネルギーを纏った剣がアネーシャに襲い掛かった。

───やられる……!

 だが、その時だった。

 ガキィンッ!! と、いう音と共にその剣はアネーシャの目の前で止まった。
 防いだのは当然……

「ア、アナタは!」

 驚き目を大きく見開いたアネーシャに、背を向けたまま答えるノーティス。

「アネーシャ。諦めるなんてキミらしくないんじゃないか」
「ノーティス、アナタなんでここに?」
「フッ、アネーシャ。その質問、そっくりそのままキミに返すよ。でもまずは……ハァァァァッ!」

 ノーティスは力を込めクリスタルを輝かすと、クリザリッドの剣をバチンッ! と退かせた。

「チッ、貴様はエデン・ノーティス!」
「ああ、そうだけど」
「貴様、敵の女を庇うとはどういう事だ。勇者でありながら……反逆するというのか!」

 クリザリッドがそう怒声を上げた時、ノーティスは剣の柄をギュッと握りしめた。

 激しい怒りと共にクリザリッドを見据えたまま。

「どういう事だと? クリザリッド、それはこっちのセリフだ。俺は、全てを明らかにする為ここに来たんだ!」
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