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第6章 魔力クリスタルの深淵
cys:121 立ち上るオーラと花の鐔
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「ノーティス、いくら敵だからって……アナタ達は、何であんな殺し方が出来るの?」
アネーシャからの問いかけに、思わず言葉を詰まらすノーティス。
咄嗟に答える事が出来ない。
「そ、それは……」
「アナタとあの斧使いはまだいいわ。けど、戦士の誇りを踏みにじるようなあの攻撃は何?」
「くっ……」
言葉に詰まったままのノーティスに、アネーシャは更に続ける。
「ユグドラシルの力は、本来あんな事の為に使う物じゃないの」
「それは……それは、キミ達が攻めてくるからだろう!」
「でも、私達は必要以上に殺したりはしないわ」
その言葉が真実である事は、ノーティスに痛い程伝わってきた。
現に、アネーシャは皆を守る為に一騎打ちを申し込んできたし、メティアには手を出すなと全軍に号令をかけたからだ。
「……でも、俺達には俺達の戦い方が……あるんだ!」
苦しく声を絞り出したノーティスに、アネーシャはスッと瞳の色を落ち着かせた。
まるで諦めたように。
「そうね……アナタ達にこんな事求めたってムダよね」
「どういう事だ……」
「アナタ達になんて出来るハズないもの。私達の全てを踏みにじり……偽りの光に照らされてるアナタ達になんて!」
アネーシャのその言葉を聞いた瞬間、ノーティスハッ! と、して目を見開いた。
ノーティスの脳裏に、あの日の事が蘇ったのだ。
『守る? 守るだと?貴様は……貴様達はこの俺達からどれだけのモノを奪ったと思っている!!』
『やはり、偽りの光と歴史に塗れた国の者には、何も見えていないようだな』
───シド!
「アネーシャ、キミは一体……」
ノーティスがそう漏らした時、アネーシャはノーティスに片手で剣先をビュッ! と、振り向けた。
その問いに答える事を拒絶するように。
「もういいわ……一瞬でも期待した私がバカだった。私達が今まで受けてきた屈辱と悲しみは、この剣で晴らす!」
アネーシャがそう告げ向けてきた剣の鍔は、花びらのような形に装飾されている。
ノーティスはそれに気付き、アネーシャの剣の鍔をジッと見つめた。
───あの花はどこかで……
ノーティスがそう思った瞬間、アネーシャは剣を横に振りかぶりノーティスに飛びかってきた。
その凄まじい速度に、ノーティスは何とか反応しながら剣を構えて防ぐ。
ガキインッ!!
「くっ……! なんて重い剣だ」
「いくわよ!」
そこから、アネーシャの凄まじい猛攻がノーティスを襲っていく。
ノーティスはそれを必死で受けるが、アネーシャの猛攻は止まらない。
ガキインッ!! ガキインッ!! ガキインッ!!
「ノーティス!」
それを見てメティアが叫ぶ中、ノーティスは感じていた。
───ぐっ……なんて重さだ。一撃一撃が必殺剣のように響いてくる。それに……
ガキインッ!!
ノーティスはアネーシャの猛攻を何とか弾き、ザザァァァッ! と、後に足を滑らせ間合を取り、苦しい顔をしながらアネーシャを見つめる。
「ハァッ……ハァッ……」
息を切らすノーティスをアネーシャは見下す事無く、むしろ軽く敬意を込めた眼差しで見つめた。
「さすがね。でも、よかった」
「よかった? それはどういう事だ」
「だって、もし今のでアナタがやられてしまう位なら、私は、より自分を許せなかったから……!」
「なんだと……アネーシャ、キミは何者なんだ?!」
けれどアネーシャはノーティスのそれには答えず、再びキッと睨んだ。
その美しい瞳に怒りを宿して。
「……だから、私の全力を持ってアナタを葬るわ!」
アネーシャはそう言い放つと、ノーティスを見据えたまま右手を天にサッと掲げた。
自らの力を最大限に引き出す為に。
「精霊と古からの神々よ! 私と共にその力を示せ!!」
その詠唱を行った瞬間、アネーシャの体から高貴な銀色のオーラが立ち昇り、さらに体の周りには、古代文字で書かれた呪符の様な物が浮かび上がっていく。
それと同時に、蒼く染まる右の瞳と真紅に染まる左の瞳。
そして、両方の瞳が完全に染まった時、アネーシャの体から凄まじいエネルギーがブワァッ!! と、溢れ出した。
そのエネルギーは、強い衝撃波になり周りに広がる。
「くっ……! なんて凄まじいエネルギーなんだ。これはまるで嵐……!」
思わず片手で顔の下半分を覆ったノーティスは、目を細め顔をしかめた。
そんなノーティスを、アネーシャは凛とした瞳で見据える。
「ノーティス、これが私の本気の姿よ」
そう言い放ったアネーシャの姿は、ただ強いだけでなく、気高い意志と美しさをノーティスに感じさせた。
ただ同時に、何故か微かに入り混じる儚さも。
「アネーシャ……綺麗だ」
その姿に深くにも数旬見とれてしまったノーティスに、アネーシャは余裕の笑みを浮かべた。
「フッ♪ ノーティス。もしかしてアナタ、私を口説こうとしてるの」
「違う。本当にそう思っただけさ」
「そう……光栄だわ。だったらアナタも本気の力をみせて。私はそのアナタに、必ず打ち勝ってみせるわ!」
アネーシャのその言葉に、ノーティスは驚いて目を大きく見開いた。
「キミは、敢えて俺を全力の姿にさせるというのか……!」
「当たり前でしょ。お互いに全力じゃないとフェアじゃないわ。それに……」
アネーシャは凛とした瞳で見つめる。
「さっき言ったでしょ。全力のアナタを倒さなきゃ意味が無いの」
その言葉と思いを受けたノーティスは、アネーシャに敬意の眼差しで答える。
───アネーシャ。キミのしている事は、シドが教えてくれた戦士の誇りそのものだ。だから俺は……
「分かったよアネーシャ……ハァァァァッ! 究極まで高まれ! 俺のクリスタルよ!!」
ノーティスは魂を震わせクリスタルを再び覚醒させた。
白輝を超えた、ゴールド・クリスタルに!
すると、今度はその輝きにアネーシャが片手で顔の下半分を覆い顔をしかめた。
「くっ……凄いわね。これがあのゴールド・クリスタル。アナタの本当の力……!」
そう零したアネーシャに、黄金の煌めきを纏ったノーティスは剣を構え、澄んだ瞳で見据える。
アネーシャの事をただの敵ではなく、トゥーラ・レヴォルト軍の誇り高き勇者として。
「アネーシャ、キミから立ち昇る力と戦士の誇り。その全てを受けて俺はキミを討つ!」
アネーシャからの問いかけに、思わず言葉を詰まらすノーティス。
咄嗟に答える事が出来ない。
「そ、それは……」
「アナタとあの斧使いはまだいいわ。けど、戦士の誇りを踏みにじるようなあの攻撃は何?」
「くっ……」
言葉に詰まったままのノーティスに、アネーシャは更に続ける。
「ユグドラシルの力は、本来あんな事の為に使う物じゃないの」
「それは……それは、キミ達が攻めてくるからだろう!」
「でも、私達は必要以上に殺したりはしないわ」
その言葉が真実である事は、ノーティスに痛い程伝わってきた。
現に、アネーシャは皆を守る為に一騎打ちを申し込んできたし、メティアには手を出すなと全軍に号令をかけたからだ。
「……でも、俺達には俺達の戦い方が……あるんだ!」
苦しく声を絞り出したノーティスに、アネーシャはスッと瞳の色を落ち着かせた。
まるで諦めたように。
「そうね……アナタ達にこんな事求めたってムダよね」
「どういう事だ……」
「アナタ達になんて出来るハズないもの。私達の全てを踏みにじり……偽りの光に照らされてるアナタ達になんて!」
アネーシャのその言葉を聞いた瞬間、ノーティスハッ! と、して目を見開いた。
ノーティスの脳裏に、あの日の事が蘇ったのだ。
『守る? 守るだと?貴様は……貴様達はこの俺達からどれだけのモノを奪ったと思っている!!』
『やはり、偽りの光と歴史に塗れた国の者には、何も見えていないようだな』
───シド!
「アネーシャ、キミは一体……」
ノーティスがそう漏らした時、アネーシャはノーティスに片手で剣先をビュッ! と、振り向けた。
その問いに答える事を拒絶するように。
「もういいわ……一瞬でも期待した私がバカだった。私達が今まで受けてきた屈辱と悲しみは、この剣で晴らす!」
アネーシャがそう告げ向けてきた剣の鍔は、花びらのような形に装飾されている。
ノーティスはそれに気付き、アネーシャの剣の鍔をジッと見つめた。
───あの花はどこかで……
ノーティスがそう思った瞬間、アネーシャは剣を横に振りかぶりノーティスに飛びかってきた。
その凄まじい速度に、ノーティスは何とか反応しながら剣を構えて防ぐ。
ガキインッ!!
「くっ……! なんて重い剣だ」
「いくわよ!」
そこから、アネーシャの凄まじい猛攻がノーティスを襲っていく。
ノーティスはそれを必死で受けるが、アネーシャの猛攻は止まらない。
ガキインッ!! ガキインッ!! ガキインッ!!
「ノーティス!」
それを見てメティアが叫ぶ中、ノーティスは感じていた。
───ぐっ……なんて重さだ。一撃一撃が必殺剣のように響いてくる。それに……
ガキインッ!!
ノーティスはアネーシャの猛攻を何とか弾き、ザザァァァッ! と、後に足を滑らせ間合を取り、苦しい顔をしながらアネーシャを見つめる。
「ハァッ……ハァッ……」
息を切らすノーティスをアネーシャは見下す事無く、むしろ軽く敬意を込めた眼差しで見つめた。
「さすがね。でも、よかった」
「よかった? それはどういう事だ」
「だって、もし今のでアナタがやられてしまう位なら、私は、より自分を許せなかったから……!」
「なんだと……アネーシャ、キミは何者なんだ?!」
けれどアネーシャはノーティスのそれには答えず、再びキッと睨んだ。
その美しい瞳に怒りを宿して。
「……だから、私の全力を持ってアナタを葬るわ!」
アネーシャはそう言い放つと、ノーティスを見据えたまま右手を天にサッと掲げた。
自らの力を最大限に引き出す為に。
「精霊と古からの神々よ! 私と共にその力を示せ!!」
その詠唱を行った瞬間、アネーシャの体から高貴な銀色のオーラが立ち昇り、さらに体の周りには、古代文字で書かれた呪符の様な物が浮かび上がっていく。
それと同時に、蒼く染まる右の瞳と真紅に染まる左の瞳。
そして、両方の瞳が完全に染まった時、アネーシャの体から凄まじいエネルギーがブワァッ!! と、溢れ出した。
そのエネルギーは、強い衝撃波になり周りに広がる。
「くっ……! なんて凄まじいエネルギーなんだ。これはまるで嵐……!」
思わず片手で顔の下半分を覆ったノーティスは、目を細め顔をしかめた。
そんなノーティスを、アネーシャは凛とした瞳で見据える。
「ノーティス、これが私の本気の姿よ」
そう言い放ったアネーシャの姿は、ただ強いだけでなく、気高い意志と美しさをノーティスに感じさせた。
ただ同時に、何故か微かに入り混じる儚さも。
「アネーシャ……綺麗だ」
その姿に深くにも数旬見とれてしまったノーティスに、アネーシャは余裕の笑みを浮かべた。
「フッ♪ ノーティス。もしかしてアナタ、私を口説こうとしてるの」
「違う。本当にそう思っただけさ」
「そう……光栄だわ。だったらアナタも本気の力をみせて。私はそのアナタに、必ず打ち勝ってみせるわ!」
アネーシャのその言葉に、ノーティスは驚いて目を大きく見開いた。
「キミは、敢えて俺を全力の姿にさせるというのか……!」
「当たり前でしょ。お互いに全力じゃないとフェアじゃないわ。それに……」
アネーシャは凛とした瞳で見つめる。
「さっき言ったでしょ。全力のアナタを倒さなきゃ意味が無いの」
その言葉と思いを受けたノーティスは、アネーシャに敬意の眼差しで答える。
───アネーシャ。キミのしている事は、シドが教えてくれた戦士の誇りそのものだ。だから俺は……
「分かったよアネーシャ……ハァァァァッ! 究極まで高まれ! 俺のクリスタルよ!!」
ノーティスは魂を震わせクリスタルを再び覚醒させた。
白輝を超えた、ゴールド・クリスタルに!
すると、今度はその輝きにアネーシャが片手で顔の下半分を覆い顔をしかめた。
「くっ……凄いわね。これがあのゴールド・クリスタル。アナタの本当の力……!」
そう零したアネーシャに、黄金の煌めきを纏ったノーティスは剣を構え、澄んだ瞳で見据える。
アネーシャの事をただの敵ではなく、トゥーラ・レヴォルト軍の誇り高き勇者として。
「アネーシャ、キミから立ち昇る力と戦士の誇り。その全てを受けて俺はキミを討つ!」
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