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第6章 魔力クリスタルの深淵
cys:122 斬り刻む桜吹雪
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「チッ、2人とも何て闘気だ。クソったれ」
「悔しいわね……入り込めないわ」
「むむむっ……相手も中々やりおるニャ」
「フム……ゴールドクリスタルに劣らない力か」
魔力クリスタルから溢れ出た、黄金の煌めきを纏ったノーティス。
その姿を銀色の煌めきと呪符、そして蒼と真紅の瞳で見据えるアネーシャ。
剣を構える2人からは凄まじい闘気が放たれ、他の誰も近寄る事が出来ない。
そんな中、2人の一番近くにいるメティアは感じていた。
───なんでだろう……ノーティスが負けるハズなんてない。でも、あのアネーシャって人からは、強さを超えた何かを感じる……
メティアはその想いを振り払うかのように、頭を左右にブンブン振るとノーティスに向かって叫ぶ。
勝利への想いを込めて。
「ノーティス! 頑張れーーーーーーーー!」
その瞬間、ノーティスはカッと瞳を輝かせた。
「いくぞ、アネーシャ!」
ノーティスがそう叫び飛びかかると同時に、アネーシャも剣を横脇に構えザッ! と飛びかかる。
「受けて立つわ、ノーティス!」
ガキインッ!!
凄まじい音と共に衝撃波が辺りに広がり、そのまま鍔迫り合いを始めたノーティスとアネーシャ。
「くっ……」
「うっ……」
2人はしばらく睨み合った後、バチンッ! と、剣を弾かせ互いに飛び退き間合を取た。
両者の力はこの時点で互角。
そして、ノーティスはそこからすかさず突きの構えを取った。
ノーティス得意の必殺剣の構えだ。
「この閃光で貫く! 『エッジ・スラッシュ』!!」
黄金の閃光と化したノーティスは、凄まじい速さでアネーシャに突進していく。
だがアネーシャはそれをサッと躱し、ノーティスのガラ空きの背中に飛びかかった。
「アァァァァッ! 覚悟!!」
「くっ! そうはさせない! 『ギルティ・カウンター』!!」
地面を蹴り剣を水平に打上げる対空技で、とっさに応戦したノーティス。
ガキインッ!
アネーシャは剣を防がれ、悔しい顔でノーティスを睨んだ。
「クッ……もう少しだったのに。けど、私に一度見せた技はもう通用しないわ!」
「……そのようだな」
「それに、もう次はないから。これでアナタを仕留める!」
アネーシャはそう言い放つと両手で剣を大きく振りかぶり、剣に銀色の闘気を集中させていく。
そして、呪符からピンク色のエネルギーが立ち昇り構えた剣と交わった時、ノーティスの事をキッ! と睨んだ。
「私は……アナタを絶対に許さない! 狂い咲け! ティターン・二乃太刀『神桜裂華』!!」
振り下ろした剣から、銀色とピンク色の交叉した無数の斬撃がノーティスに襲いかかる。
無論ノーティスはそれを迎え撃つが、アネーシャからはただの斬撃ではなく、何か別の想いが伝わってくる。
それがノーティスの心を締め付けた。
「……くっ! 煌めけ数多の流星よ! 『メテオロン・フォース・スラッシュ』!!」
ノーティスは苦しみながらも必殺剣を放った。
しかし、中に舞う花びらを捉えられないように、ノーティスの流星剣は虚しく空を切っていく。
───バカな!
そう思った時、ノーティスの瞳に一瞬映った。
舞い散る桜の姿が。
───なんだ、この花は……
自分の周囲に咲き乱れる狂い桜。
次の瞬間、それは狂刃と化してノーティスに一斉に襲い掛かる。
「うわァァァァっ!!」
舞い散る花びらの様な無軌道な数多の斬撃を受け、全身をボロボロに斬り刻まれたノーティスはドシャっと片膝を付いて剣を地面に刺した。
そして、顔をしかめアネーシャを見上げる。
体中から、ポタポタと鮮血を零しながら。
「くっ……強い!」
その姿を側で見て、悲壮な顔をしたメティアは瞳を潤ませた。
「ノーティス!」
目を潤ませ駆け寄ろうとしたメティア。
けれどノーティスは、そんなメティアに真摯な眼差しをぶつけ片手を向けて制した。
メティアが自分に、回復魔法をかけようとしたからだ。
「来るなメティア!」
「でもノーティス……!」
「ダメだ。ここでキミに助けてもらったら、俺はもう、勇者として戦う事が出来ない」
「ノーティス……そんな……」
哀しい瞳でノーティスを見つめたまま立ち止まったメティア。
そんな中、アネーシャはノーティスに近づき、怒りと切なさを交叉させた瞳で見下ろしている。
「ノーティス……終わりよ」
「くっ……今の花は一体……」
「……見えたの?! アナタに」
「あぁ……幻かもしれないけど、一瞬咲き誇る美しい花が……」
ノーティスがそう答えると、アネーシャは一瞬スッと瞳を閉じた。
───なぜこの男に桜が見えたの……偽りの光の勇者のハズなのに……
けれど思う。
愛する自分の祖国トゥーラ・レヴォルトが、スマート・ミレニアムにどれだけ奪われ、蹂躙されてきたのか。
そして、なぜ今自分がこの国の勇者として戦場に来たのかを。
───そう。私は決して忘れない……あの日の事を!
アネーシャは心の内を振り返るとバッと目を開き、瞳に冷酷な決意を宿した。
そしてその瞳でノーティスを見下ろしたまま、両手で剣を大きく振りかぶる。
ノーティスはその姿を苦しく見上げながら、心の中で思い出していた。
アルカナートから叱咤された事を……
『ノーティス。もう立てないと思った時に相手が剣を振り降ろしてきたら、どうすればいいか分かるか?』
『えっ、それは逃げるしかないですよね』
『ったく。違うに決まってんだろ。そーゆー時はな……』
「ノーティス、私はアナタを倒し仇を討つ。そして、この国の未来を守るわ! 覚悟っ!!」
アネーシャが想いを乗せた剣を振り降ろしてきた時、ノーティスは最後の力を振り絞りバンッ! と、大きく飛び上がった。
「アネーシャ、俺はまだ死ねない! けど、逃げる訳にもいかないんだ。今まで戦ってきた人の命と想いを背負ってるから!」
「嘘よ……なぜアナタがそんな事を言うの!」
「俺は……生きる為に攻める事を決して辞めはしない! 雷光のように轟け『シェル・スラッシュ』!!」
ノーティスは、上空から雷鳴のように轟く必殺剣を繰り出した。
アネーシャは、それを受け止めれないと咄嗟に悟りサッと躱したが、大地に叩きつけられた時に生じた、その凄まじいエネルギーの衝撃波がアネーシャを襲う。
「きゃあァァァっ!!」
大きく吹き飛ばされたアネーシャ。
その姿を見ながらノーティスの心の中で、アルカナートが自慢気に言ってきた。
『躱された時? フンッ。生きようとして放った一撃が、ただで終わるわけねーだろ。まったく、このバカ弟子が』
「ハァッ……ハァッ……師匠、ありがとうございます」
ノーティスがそう零した時、アネーシャはググッと立ち上がった。
そして、苦しい表情を浮かべながらも、光の宿る凛とした瞳でノーティスを見据える。
アネーシャを動かしているのは、体力でも気力でもなく、その胸に宿っている切なく儚い想いだ。
───私は負けない……負けてたまるか! 私は彼の無念を晴らし、この国の未来を必ず守るの……!
「悔しいわね……入り込めないわ」
「むむむっ……相手も中々やりおるニャ」
「フム……ゴールドクリスタルに劣らない力か」
魔力クリスタルから溢れ出た、黄金の煌めきを纏ったノーティス。
その姿を銀色の煌めきと呪符、そして蒼と真紅の瞳で見据えるアネーシャ。
剣を構える2人からは凄まじい闘気が放たれ、他の誰も近寄る事が出来ない。
そんな中、2人の一番近くにいるメティアは感じていた。
───なんでだろう……ノーティスが負けるハズなんてない。でも、あのアネーシャって人からは、強さを超えた何かを感じる……
メティアはその想いを振り払うかのように、頭を左右にブンブン振るとノーティスに向かって叫ぶ。
勝利への想いを込めて。
「ノーティス! 頑張れーーーーーーーー!」
その瞬間、ノーティスはカッと瞳を輝かせた。
「いくぞ、アネーシャ!」
ノーティスがそう叫び飛びかかると同時に、アネーシャも剣を横脇に構えザッ! と飛びかかる。
「受けて立つわ、ノーティス!」
ガキインッ!!
凄まじい音と共に衝撃波が辺りに広がり、そのまま鍔迫り合いを始めたノーティスとアネーシャ。
「くっ……」
「うっ……」
2人はしばらく睨み合った後、バチンッ! と、剣を弾かせ互いに飛び退き間合を取た。
両者の力はこの時点で互角。
そして、ノーティスはそこからすかさず突きの構えを取った。
ノーティス得意の必殺剣の構えだ。
「この閃光で貫く! 『エッジ・スラッシュ』!!」
黄金の閃光と化したノーティスは、凄まじい速さでアネーシャに突進していく。
だがアネーシャはそれをサッと躱し、ノーティスのガラ空きの背中に飛びかかった。
「アァァァァッ! 覚悟!!」
「くっ! そうはさせない! 『ギルティ・カウンター』!!」
地面を蹴り剣を水平に打上げる対空技で、とっさに応戦したノーティス。
ガキインッ!
アネーシャは剣を防がれ、悔しい顔でノーティスを睨んだ。
「クッ……もう少しだったのに。けど、私に一度見せた技はもう通用しないわ!」
「……そのようだな」
「それに、もう次はないから。これでアナタを仕留める!」
アネーシャはそう言い放つと両手で剣を大きく振りかぶり、剣に銀色の闘気を集中させていく。
そして、呪符からピンク色のエネルギーが立ち昇り構えた剣と交わった時、ノーティスの事をキッ! と睨んだ。
「私は……アナタを絶対に許さない! 狂い咲け! ティターン・二乃太刀『神桜裂華』!!」
振り下ろした剣から、銀色とピンク色の交叉した無数の斬撃がノーティスに襲いかかる。
無論ノーティスはそれを迎え撃つが、アネーシャからはただの斬撃ではなく、何か別の想いが伝わってくる。
それがノーティスの心を締め付けた。
「……くっ! 煌めけ数多の流星よ! 『メテオロン・フォース・スラッシュ』!!」
ノーティスは苦しみながらも必殺剣を放った。
しかし、中に舞う花びらを捉えられないように、ノーティスの流星剣は虚しく空を切っていく。
───バカな!
そう思った時、ノーティスの瞳に一瞬映った。
舞い散る桜の姿が。
───なんだ、この花は……
自分の周囲に咲き乱れる狂い桜。
次の瞬間、それは狂刃と化してノーティスに一斉に襲い掛かる。
「うわァァァァっ!!」
舞い散る花びらの様な無軌道な数多の斬撃を受け、全身をボロボロに斬り刻まれたノーティスはドシャっと片膝を付いて剣を地面に刺した。
そして、顔をしかめアネーシャを見上げる。
体中から、ポタポタと鮮血を零しながら。
「くっ……強い!」
その姿を側で見て、悲壮な顔をしたメティアは瞳を潤ませた。
「ノーティス!」
目を潤ませ駆け寄ろうとしたメティア。
けれどノーティスは、そんなメティアに真摯な眼差しをぶつけ片手を向けて制した。
メティアが自分に、回復魔法をかけようとしたからだ。
「来るなメティア!」
「でもノーティス……!」
「ダメだ。ここでキミに助けてもらったら、俺はもう、勇者として戦う事が出来ない」
「ノーティス……そんな……」
哀しい瞳でノーティスを見つめたまま立ち止まったメティア。
そんな中、アネーシャはノーティスに近づき、怒りと切なさを交叉させた瞳で見下ろしている。
「ノーティス……終わりよ」
「くっ……今の花は一体……」
「……見えたの?! アナタに」
「あぁ……幻かもしれないけど、一瞬咲き誇る美しい花が……」
ノーティスがそう答えると、アネーシャは一瞬スッと瞳を閉じた。
───なぜこの男に桜が見えたの……偽りの光の勇者のハズなのに……
けれど思う。
愛する自分の祖国トゥーラ・レヴォルトが、スマート・ミレニアムにどれだけ奪われ、蹂躙されてきたのか。
そして、なぜ今自分がこの国の勇者として戦場に来たのかを。
───そう。私は決して忘れない……あの日の事を!
アネーシャは心の内を振り返るとバッと目を開き、瞳に冷酷な決意を宿した。
そしてその瞳でノーティスを見下ろしたまま、両手で剣を大きく振りかぶる。
ノーティスはその姿を苦しく見上げながら、心の中で思い出していた。
アルカナートから叱咤された事を……
『ノーティス。もう立てないと思った時に相手が剣を振り降ろしてきたら、どうすればいいか分かるか?』
『えっ、それは逃げるしかないですよね』
『ったく。違うに決まってんだろ。そーゆー時はな……』
「ノーティス、私はアナタを倒し仇を討つ。そして、この国の未来を守るわ! 覚悟っ!!」
アネーシャが想いを乗せた剣を振り降ろしてきた時、ノーティスは最後の力を振り絞りバンッ! と、大きく飛び上がった。
「アネーシャ、俺はまだ死ねない! けど、逃げる訳にもいかないんだ。今まで戦ってきた人の命と想いを背負ってるから!」
「嘘よ……なぜアナタがそんな事を言うの!」
「俺は……生きる為に攻める事を決して辞めはしない! 雷光のように轟け『シェル・スラッシュ』!!」
ノーティスは、上空から雷鳴のように轟く必殺剣を繰り出した。
アネーシャは、それを受け止めれないと咄嗟に悟りサッと躱したが、大地に叩きつけられた時に生じた、その凄まじいエネルギーの衝撃波がアネーシャを襲う。
「きゃあァァァっ!!」
大きく吹き飛ばされたアネーシャ。
その姿を見ながらノーティスの心の中で、アルカナートが自慢気に言ってきた。
『躱された時? フンッ。生きようとして放った一撃が、ただで終わるわけねーだろ。まったく、このバカ弟子が』
「ハァッ……ハァッ……師匠、ありがとうございます」
ノーティスがそう零した時、アネーシャはググッと立ち上がった。
そして、苦しい表情を浮かべながらも、光の宿る凛とした瞳でノーティスを見据える。
アネーシャを動かしているのは、体力でも気力でもなく、その胸に宿っている切なく儚い想いだ。
───私は負けない……負けてたまるか! 私は彼の無念を晴らし、この国の未来を必ず守るの……!
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