モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第一部:都市国家アドポリスの冒険 7

第34話 デュラハンとその事情 その4

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「こ……こんなに前準備に金を使うんですか?」

 俺が山のように消耗品のマジックアイテムを買っているので、カイルが目を回しそうになっている。

「命には代えられないからね。これが一つあるだけで、安全性が一つ増す」

「うわあー、ほかほかするですよこれー!」

 クルミが尻尾をピコピコさせながら、マジックアイテムに頬ずりする。
 これは炎晶石。
 魔力を込めて投げつければ、炎を発して相手を焼く。

 そのままだと、ホカホカ暖かな石だ。
 オレンジ色に透き通っているので、まあまあきれいではある。

「クルミ、魔力を込めないように注意してね」

「はいです!」

 大量の炎晶石、それから魔法の罠。
 地面に投げつけると、一瞬だけ落とし穴になるものだ。
 これを幾つか。

 よし、十分だろう。

「デュラハンの金は高いから、赤字にはなんないですけど……。こんなに使ったら儲けが……」

「ここのデュラハンは強いらしいからね。いつもの二倍くらい用意した」

「慎重……!」

「センセエはちゃーんと準備するです! すごいのです!」

 なぜか自慢げなクルミだ。
 カイルはじっとクルミを見て、首を傾げた。

「そう言えば、このちっこいのは何なんですか? 確かナントカ族っていう獣人ですよね?」

「ゼロ族のクルミだよ。俺の仲間だ」

「奥さんです!」

 俺はガクッと来た。

「いや、クルミ……。確定じゃない。確定じゃないからね」

「むっふっふー。クルミ、センセエがすごい人でいい人だってゆうのは、もうハッキリわかるです! 満点なのですよー」

 いけない、俺の将来が危ない……!
 これは想定していなかった……!

「ははあ、オースさんにも苦手なものがあるんすね? こりゃあいいや」

 カイルがにやにやした。
 やめてくれたまえ。

「はあ~」

 そこで盛大に溜息をつく者がいる。
 アリサだ。

「はあ~。なーんで。なーんで、モフモフのモンスターでも獣人さんでもなくて、ムキムキの汗臭い戦士さんが仲間になっているのでしょうか? わたくしには分かりませんわあ」

「オースさん、このクソ生意気な女僧侶なんですか。胸ばかりでかいくせに」

「は? は? あなたにこの逃れ得ぬ肩こりとの戦いがお分かりになりまして!? 灰色の大教会生活から抜け出したら、慢性肩こりも癒えてしまうようなモフモフとの出会い! これからわたくしのバラ色のモフモフライフが始まりますわ! と思った先にガチムチの戦士が仲間に加わった失望感!」

「わかんねえよ!? そもそも何言ってんだあんた!?」

「まあまあ。次は必ずモンスターをテイムするから。あまりにも長い間テイマーとして働いてなかったせいで、テイムの仕方がもう曖昧なんだよね」

 俺がそう言うと、アリサもカイルも、ぽかんとしたのだった。



 その日の夜。
 俺達モフライダーズは、アドパークの外に陣取った。
 デュラハンは毎夜の如く出現し、町を駆け抜けていくのだという。

 乗り物は戦車。
 となれば、道があるところを選んで走るものだ。
 例えモンスターだって、走りやすいところがいいに決まっている。

 予想通り、モンスターはやって来た。

 馬のいななきが聞こえる。

「来た……!」

 カイルが緊張した声で呟いた。
 コルセスカを握る手に、力がこもっている。

「リラックスして行こう、カイル。備えは万全。あとはきちんと段取りを踏むだけだ」

「ええ、分かりましたよオースさん。ってか、まさかこんな手段であの呪いを防げるなんて……。まだちょっと信じられないんですが」

「実際にやれば分かるさ」

 俺達の胸の上には、細かく砕いた炎晶石をくっつけてある。
 対策はこれだけ。

「……だったら、なんであんな量の炎晶石を買ったんすか?」

「炎晶石は武器にもなるだろ」

 つまりそういうこと。
 さあ、闇夜を切り裂いて、漆黒の鎧が現れる。

 こちらは、篝火かがりびいて待ち受けていたのだ。

『おぉぉぉぉ……。憎い、憎いィィィィィ!! あの魔術師めが、許さぬぞォォォォォ!!』

「その魔術師について教えてくれないか」

 俺は、怨嗟の声を上げるデュラハンに話しかけた。
 すると、首なし騎士の抱えた頭が、じろりとこちらを睨んだ。

『邪魔立てをするかァァァァ!! 汝に死を与える……!!』

 一見して不可視とも思える、デュラハンの呪いが俺を襲う。
 俺の胸元で、炎晶石の破片がジュッと音を立てた。

 それだけだ。
 俺は新たに、破片を補充した。

『……なにっ……!?』

「対策はして来た。君の呪いはもう通じないぞ。呪いは魔法に近い効果で、相手の心臓を凍りつかせる。だが、その魔力で炎晶石が燃え上がり、さらに凍りつく呪いと相殺される。量の配分が難しいんだこれが」

『汝に死を与える……!』

 再び、俺の胸元でジュッと音がした。
 それだけだ。

「分かったかな。君の呪いは封じられた。さあ、正々堂々の勝負と行こう」

 俺は首なし騎士を手招きする。
 そして、スリングを振り回しながら前進だ。

『おのれェェェェェッ、人間ンンンンンッ!』

 駆け寄ってくる、首なし馬と戦車。
 それは俺に向かって一直線に……。

「そいっ!!」

 目の前に、俺はスリングの中身を叩きつけた。
 出現するのはマジックトラップ。

 こいつの効果は、インスタントな落とし穴だ。
 首なし馬の前足が、穴にはまった。

 つんのめる首なし馬。
 跳ね上がる戦車。

 吹き飛ばされるデュラハン。

『ぬうおおおおおおおっ!?』

 ちょっと離れたところに、デュラハンが頭から落下した。
 いや、頭は抱えているから、肩からか。

 彼はふらふらと起き上がりながら、再び抱えた頭を俺に向けた。

『汝、死ね! 死ねェェェェェッ!!』

 俺の胸元で、ジュッと音がする。

「さあモフライダーズ、気合を入れよう。デュラハンを仕留めるぞ!」

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