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21. その事故は

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 ちなみにこの男のやらかしまくっていた、ではなく、いることはジェフリーも知っている。というか、2人で首を捻りながら大量すぎるほどの罪の裏付けが外れる部分を必死に探しまくったレベルだ。
 『ここまでは流石にやっていないはず!!』と。けれど、1個も存在しなかった。見事に全部やっていた。なんなら、まだ余罪が出てくるのではないかという疑問の方が浮き上がるレベルだ。

 さ~て、墨のように真っ黒な闇の中に葬られた25年前の罪をひっくり返しましょうか。

「……ジェフリー、25年前のアレを持って来て。」
「既に他の従僕に言って簡易版の方を持ち込ませております。お納めください。」

 ジェフリーはいいスマイルでいつの間にやったのか分からない書類の束を2つ恭しくわたしに手渡した。

「第3問。
 あなたの兄である元跡継ぎであるベネット・アダムスは不慮の事故で亡くなった。」
「…はい。」

 伯爵デブの目が一瞬泳ぎ、元々多かった発汗量が増した。

 この案件がもっともマイグレックヒェンに被害がなく伯爵デブを貶められると判断したけれど、思わぬ速さで白状してくれそうね。

「わたしは正直に言えと言ったはずよ。」
「あ、兄の死は不慮の事故です。」
「……そう。」

 殺気による脅しがあったとしても、流石のわたしもここで正直に言うとは初めから思っていない。だから、をジェフリーに用意させたのだ。
 わたしの頭には入っている内容も、他の人の頭には入っているわけではない。だから、このような場では確実な資料があった方が説得力が増すし、相手が逃げにくくなるのだ。

 わたしはニヤリと口角を上げて資料のとあるページをぱらりと開いた。

「『建国1025年、4月6日12時47分。
  雨の中の馬車の走行中に誤って絶壁の崖からの転落事故により3名死亡。
  死亡者は伯爵家次期当主ベネット・アダムスとその婚約者である子爵令嬢のエヴァ・クロレンス、御者で平民のグロム。いずれも転落中の衝撃と転落時の馬車の破損によって死亡。馬車を引いていた馬2頭も馬車に潰されて死亡。
  事故原因は、見通しの悪い場所での悪天候下の不注意運転と見られる。馬車の点検不足や馬車への細工に関しては、馬車が崖から落ちたことによる大きな破損により、鑑定不可能。』
 これが表向きの亡くなった伯爵令息の事件の検視結果ね。」

 わたしは春の陽気のように朗らかに読み切った。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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