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20. その男は………

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「確認も終わったことだし、質問を開始するわね。
 まず第1問。
 あなたは先代公爵であるお父さまの第1補佐官である、バベル・アダムス伯爵である。」
「は、はい。私はメーリン様に第1補佐官として仕えておりました。」
「……答えは“イェス”もしくは“ノー”で答えて?それで答えられる質問以外はしないから。
 わたし、馬鹿とはあんまり長いことおしゃべりがしたくないの。さっきも言ったと思うけれど、あなたはわたしの質問に正直に、即座に答えるだけしか道がないの。分かった?」
「は、はい!!」

 顎に人差し指を当てながらニコニコ表情だけ笑っているわたしに、伯爵デブは大きな声でお返事した。大きな声も唾が飛ぶから好きではないのだけれど……。
 ま、そもそもわたしは彼がやること全てが気に入らないのだから、いちいち言っても無駄ね。不愉快でなくなるには彼を消さないといけないし。一旦ここでは諦めましょう。

「第2問。
 あなたは、先代アダムス伯爵家の次男にして長男の死亡によって後釜としてアダムス伯爵家をを継いだ。」
「?はい。」

 いきなりプロフィールの質問に移ったことに疑問を覚えながらも、伯爵デブは頷いた。

 わたしは兄がいるから公爵家の後は継がない。
 けれど、だからと言って社交界に出なくていいというわけではない。だから、貴族の家柄や歴史、継承についてや家庭構成、家庭事情や領地について、領内での評判、個人個人のキラキラに美化されて誰かもわからなくなった肖像画や趣味や食べ物の好み、得意なことにおいても全て頭に入れている。
 それらを覚える上で、相手の弱点も全て暗記し、闇に葬られたであろう後ろ暗い事情についても、さまざまなデータを照らし合わせる過程で色々と見つかった。
 もちろん、この伯爵デブの分もある。
 この伯爵デブは心から拍手喝采大称賛できるレベルに色々とやらかしていた。殺人に女性関係に、領民の税金を盗みまくった裏帳簿に非合法カジノ、国外との勝手な連絡の取り合い……、等々、上げれば上げるほどキリがなく、えげつない量の真っ黒な犯罪歴がザクザクと掘れば掘るほどきらきらの財宝のように出きた。どれもこれも、国家反逆罪のレベルまでやらかしていて、1個でも起訴すれば、一族郎党皆殺しのさらし首レベルだ。
 流石のわたしも、最初は自分が調べてまとめ上げたデータや、情報屋から買った情報が間違っているのではないかと疑った。それくらいにこいつデブは色々とやばいのだ。

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読んでいただきありがとうございます♪♪♪

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