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28 皇女の勝利?

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「………セレス、ペンを貸しなさい」
「はい」

 セレスティアはいつもの妖艶な笑みを浮かべて自分の万年筆を父親に手渡した。父親は、疲れた嬉しそうな表情をしていた。

「彼ならばセレスを捨てないでくれそうだ」
「どうでしょうね?」
「他人事ではないと思うが?」
「捨てられても地の果て、空の果て、海の果て、この世の果てまで追いかけますから」

 セレスティアの満面の笑みに、父親は身震いした。

「お前は本当にフロンティアそっくりだ」
「お褒めに預かり光栄です」
「褒めておらぬ」
「そうですか」

 セレスティアは飄々とした雰囲気で、父親からサインを終えて王家の判子まで押されたセレスティアとミシェルの婚約に関する書類を受け取った。

(これでもうミシェルはアリスに取られないな)
「セレスはもうちょっと器を大きくしろ」
「何が言いたのでしょうか」
「………お前は狭量だと言いたいんだ」
(失礼な)

 セレスティアは妖艶な笑みを深くした。彼女は怒っている時ほど笑顔が深くなるらしい。

「セレス、僕は君が許してくれる限り、君の側から離れないよ」

 セレスティアの服の袖をきゅっと引いて弱々しい声音で『捨てないで!!』と訴えかけるように言った。セレスティアはそんなミシェルに、殊更優しい笑みを浮かべた。

「わたしは捨てられても側を離れない」
「それはどうかと思うぞ、セレス。ミシェル君、セレスの束縛がキツくなったら来なさい。匿ってやる」
「は、はあ」

 少し抜けた声で返事をしたミシェルに、セレスティアは満足そうに頷き、父親は不服そうな顔をした。

(わたしの勝ちだな)
「………………………」

 セレスティアはなんの勝負か分からんない勝負の勝利に男らしい微笑みを浮かべた。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊


『あの、……どなたでしょうか?』

という作品が本編完結いたしました。短編ですので、もしよろしければ読んでやってください(๑>◡<๑)
紹介文としましては、

「キャサリン・ルーラー
 爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」

見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………

「あの、……どなたのことでしょうか?」

まさかの意味不明発言!!

今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!

結末やいかに!!

です。
よろしくお願いいたします(*≧∀≦*)

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