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続編

79 わたくしは眠る

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「ひぎゃっ!?」

 色気もくそもへったくれもない、情けないとしか言いようのない声に、ライアンはとても嬉しそうに笑って、それからわたくしの、ライアンと別れる以前よりはちょっとだけボン・キュッ・ボン度の増した身体をぎゅっと抱きしめた。

「かーわいー」
「!?」
「今日はお仕置きで、俺の抱き枕になってもらおうかな」

 いつのまにか上半身裸になったライアンは、そう言うとぎゅっとわたくしのことを抱きしめた。ずびっと鼻を啜る音がして、わたくしは彼のことを『男なのに情けない子ね!!』と怒鳴りつけようとするが、その気力さえも、も彼が次の瞬間に呟いた言葉で、全部全部吹き飛んでしまった。誰よりも辛い思いをしたであろう、経験したであろうライアンのせいで。

「………ずっと、………ずっと会いたかった。ディア。俺の愛しの婚約者ディア」
「………ふんっ、」

 ぷいっとそっぽを向くと、そんなことは許さないと言わんばかりに、おとがいを掴まれて、真っ正面からライアンの美しすぎるお顔を拝むことになってしまった。瞳が涙に濡れてしまっているのがまた、お色気たっぷりで、姉であり、婚約者であることの贔屓目を抜きにしても、無駄に整いすぎたライアンの顔は、成人を控えているレディーであるわたくしの理性すらもぐずぐずにしてしまうほどに、とても美しかった。よって、わたくしは頭がパニックを起こして、顔を真っ赤に染め上げてしまう。

「………ばかライアン」

 どうにか罵倒をした次の瞬間、彼が見つかったことによってここ数年ずっと張り続けていた緊張の糸がぷつんと切れたのか、はたまた優しくふわふわとライアンに頭を撫でられ続けたことで眠くなってしまったのか、わたくしは、この言葉を呟いたものの数秒後には、深い深い眠りの世界へと誘われていった。

「………おやすみ、愛しのディア。幸せな夢を」

 わずかに耳に響いた優しい大好きな彼の声に、わたくしはふにゃっと情けなく笑ってしまった気がした。

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

皆さまお気づきかとは存じますが、続編のエンドまで残りわずかとなりました!!
エンドまで全力疾走で頑張ります!!
ちなみに、引き続き、ストック大ピンチ中です😥
以上、最終話までこのままのペースで突っ走りたいのに、突っ走れない予感たっぷりの桜咲でした!!

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