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続編

4 王太子殿下

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「クラウディア、流石だったね」

 挨拶を終えて教室に入った途端、金髪碧眼の美少年が手をぱちぱちと叩きながら話しかけてきた。わたくしは嫌味を思いっきり吐き出したいのを我慢して、淡く微笑みを浮かべて口を開いた。が、出てきたのは嫌味だった。

「王太子殿下、………随分と嫌味ったらしい口調ですわね?わたくしに文句があるのですか?」
「………相変わらずの君の辛辣さに、僕の心は折れそうなのだが」

 がっくりと肩を落とした王太子殿下は、わたくしに向けてぷくぅーっと膨れた頬を向ける。いや、全く可愛くないのだけれど。

「そうですか。早いうちにポッキリ折っておくことをおすすめいたしますわ。わたくしのお口が素直になることは一生ございませんので」
「そんな………。夫に冷たい嫁は良くないぞ」

 うざったい王太子殿下がパチンとウインクをすると、隣からブリザードが吹き荒れた。寒い。普通に寒いわ。ライアンに物申したいけれど、魔力を乱すなんて珍しいことをしているライアンが何故怒っているのか、というか不機嫌なのかわたくしには皆目分からない。

「ディアは俺の嫁ですので、王太子殿下に冷たくても問題はないかと。それに、俺はツンツンなディアも愛しておりますので」
「「なっ、」」
「ら、ライアン!!何を言っているの!!わたくしとあなたは婚約者であって、夫婦めおとではないわ!!お口を慎みなさい!!」

 わたくしの顔は情けないくらいに真っ赤になってしまっていることだろう。だが、真顔で、しかもぎゅっと抱きしめられながら『自分の嫁』や『愛してる』と宣言されて、顔を赤くせずに立っていられる女子がいるだろうか。否、いないだろう。『うふふっ、やーね。ダーリン♪恥ずかしーわ!!愛してるなんてっ』なんて恥ずかしいことを簡単に言って笑えるのは、晩年夫婦くらいのものだ。いや、晩年夫婦でも言えないかもしれない。そういうのはロマンス小説の溺愛夫婦のお話の中で稀に見られるくらいだろう。

「え………、こん、やく………?」
「?」

 呆然としている王太子殿下に、わたくしはこてんと首を傾げる。何故王太子殿下は顔を真っ青にしているのだろうか。

「王太子殿下はどうなさったのかしら?ライアン」
「………俺は言わない」
「むう、」

 ちょっとだけ拗ねて見せるが、ライアンはそっぽを向いている。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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