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続編

3 異議申し立て

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「今年度から新入生代表挨拶を行う者は、王族や高位貴族、性別という垣根を一切考慮しないことになりました。そして、今年度の入試結果の最も良かった生徒がクラウディアさまだったのです」
「馬鹿なことを。うちの後継者たるライアンよりも、わたくしの方が成績が良かったと申しますの?」

 わたくしはムカっとしてくちびるを尖らせて先生に文句を言った。ライアンは自分で言ってムカつくが、自分よりも頭が圧倒的に良いのだ。それに、わたくしはお世辞にも魔術、剣術がライアンよりも優れているとは言えない。何故自分が最優秀生徒であるのか納得できないのだ。

「………ライアンさまとクラウディアさまの成績は、全教科満点という異常なものでした。つまり、お2方とも上限を突破してしまっているのです」

 ざわりとした驚きが室内に広がっていくが、わたくしには関係ない。わたくしは目立つこととりわけ面倒くさい分類のことを嫌うのだ。わたくしも確かに主席入学は嬉しい。努力が認められることは何よりも尊いことだ。けれど、同じ点ならばライアンが挨拶をしたって良いはずだ。わたくしは先生に反抗的な視線を向ける。

「なら、」
「ですから、クラウディアさまに新入生代表挨拶をお願いするのです。先程申し上げました通り、この学園は今年度から男女平等を謳うのですから」
「………だから、今まで挨拶の資格がないに等しかった女子おなごに挨拶の資格を与えると」

 つんと見下すような視線に傲慢な態度をとっても、先生は文句をいうどころか顔色すらも変えない。わたくしが公爵家の人間と知っていてこの態度をとれるからこそ、彼はこの学園の教師ができているのだということをわたくしは納得してしまった。

「はい」
「はあー、承知したわ。突っかかって悪かったわね」
「いえ、ご納得いただけたようで何よりです。他の生徒の方々からのご質問も受け付けようと思います。質問のある生徒は手をあげなさい」
「では、式典の会場へと移ってもらいます。教師の指示に従い、入場してください」

 何やら隣からライアンの心底嬉しそうな気配がする。わたくしはどこで間違ったのだろうか。前途多難な予感しかしない学園生活の初めに、わたくしは彼にエスコートされながら深々とため息を吐くのだった。

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