85 / 92
番外編
未来の王太子夫妻の恋 15
しおりを挟む
「おじーさまは、泣いたら負けだっておっしゃったわ。」
「………確かに、いじめられて泣いたら負けだ。」
頭の回転の早いレイナードは、彼女の言葉だけである程度の深い事情をいとも簡単に理解した。
「私は、今負けているわ。それに、泣かないっていうおじーさまとのお約束を、破ってしまっているわ。」
キャサリンはぎゅっとくちびるを噛み締めた。彼女にとって、大好きな祖父とのお約束は絶対だったのだ。そもそも人間として、お約束というものは必ず守り抜くというのがキャサリンの考えだから、誰との約束でもこのくらい苦しむのかもしれない。
「………君のお祖父様は、嬉し泣きも禁止だって言ったのかい?」
「え?」
「君の今の涙は、普通の涙じゃないんでしょう?」
キャサリンは彼がなんと言っているのか意味がわからないかった。まるで、知らない異国の言葉を聞いているかのようだ。
「だったら、泣き止んで?僕は君が泣いているのを見ると、どうにかなりそうなんだ。」
彼の優しい声が、表情が、キャサリンの頑なな心の枷をゆっくりと溶かしていく。心地がいいと思うと同時に、キャサリンは本能的な恐怖を覚えた。
自分が変わってしまうのではないか、と。
「君はどうあろうとも君だ。だから、一緒に僕と未来を紡いでくれないかな?輝かしいこの国を。」
「っ、」
彼はやっぱり意地悪で策士だと、キャサリンは不覚にも告白中に思ってしまった。けれど、それがなんとも嬉しかった。だって、これが素顔という名の完璧な猫を被っているように感じた彼の、本当の素顔のように感じたから。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「………確かに、いじめられて泣いたら負けだ。」
頭の回転の早いレイナードは、彼女の言葉だけである程度の深い事情をいとも簡単に理解した。
「私は、今負けているわ。それに、泣かないっていうおじーさまとのお約束を、破ってしまっているわ。」
キャサリンはぎゅっとくちびるを噛み締めた。彼女にとって、大好きな祖父とのお約束は絶対だったのだ。そもそも人間として、お約束というものは必ず守り抜くというのがキャサリンの考えだから、誰との約束でもこのくらい苦しむのかもしれない。
「………君のお祖父様は、嬉し泣きも禁止だって言ったのかい?」
「え?」
「君の今の涙は、普通の涙じゃないんでしょう?」
キャサリンは彼がなんと言っているのか意味がわからないかった。まるで、知らない異国の言葉を聞いているかのようだ。
「だったら、泣き止んで?僕は君が泣いているのを見ると、どうにかなりそうなんだ。」
彼の優しい声が、表情が、キャサリンの頑なな心の枷をゆっくりと溶かしていく。心地がいいと思うと同時に、キャサリンは本能的な恐怖を覚えた。
自分が変わってしまうのではないか、と。
「君はどうあろうとも君だ。だから、一緒に僕と未来を紡いでくれないかな?輝かしいこの国を。」
「っ、」
彼はやっぱり意地悪で策士だと、キャサリンは不覚にも告白中に思ってしまった。けれど、それがなんとも嬉しかった。だって、これが素顔という名の完璧な猫を被っているように感じた彼の、本当の素顔のように感じたから。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
206
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる