上 下
84 / 92
番外編

未来の王太子妃の恋 13

しおりを挟む
「キャサリンか、………また虐められたのか?」
「………じょーずにおともだちとあそべなくてごめんなさい。」

 祖父の優しすぎるまでに優しく、穏やかな声に、キャサリンはなおのこと俯いて、痛みに耐えるような沈痛な表情になった。

「泣かなかったのかい?」
「………、」
「偉い偉い。キャサリンは本当に良い子だ。そういう奴はな、虐めた相手が泣くことを心の底から楽しんでいるんだ。だからな、どんなことがあっても、人前で泣いてはいけない。そういう奴が喜ぶ原因になるからな。泣いたら負けだ。泣かなかったら、勝ちだ。だから、アイツらはキャサリンに負けたんだ。分かったか?」
「うん、」

 キャサリンは大好きな祖父によしよししてもらって、泣き笑いのような表情を浮かべた。
 祖父のしわがれた声が、いつにも増して弱っている。

「おじーさま、キャサリンはなにがあってもなかないよ。おやくそくする。」
「そうかそうか、キャサリンは強い、な。」

 祖父はキャサリンの頭をまた優しく撫でてくれた。
 そして、祖父はこの言葉を最後に、キャサリンの頭に手を乗せたまま目を瞑って微笑んで、ピクリとも動かなくなった。

 そう、優しくて大好きなキャサリンの祖父は、キャサリンへの言葉を遺して、そのまま事切れてしまったのだ。

 キャサリンは泣けなかった。ずっとずっと彼の動かなくなってしまって手を前に、必死になって耐え続けていた。誰もが心配した。けれど、キャサリンはその姿勢を崩すことはなかった。

▫︎◇▫︎

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,231pt お気に入り:4,428

海と風の王国

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:840

【完結】あなたにすべて差し上げます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,215pt お気に入り:5,689

好きな人から可哀想な子と思われていたようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:78

処理中です...