召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十七章 伝説の、真相

閑話 評価

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 それはスタフェドと呼ばれる魚型ゴーレムの体内。
 ドーム状の部屋の中央に据え付けられた椅子に男は座っていた。
 男はぼんやりと、天井を見上げていた。
 まるで、ガラス張りのように外が透ける天井を見つめ、暗い洞窟の壁を見ていた。

「ただいま戻りました」

 部屋に、数人の男女が入り、先頭をあるくイオタイトが声をあげた。

「ご苦労。どうだった?」
「いや。怒ってましたよ。気まずくて気まずくて」
「ギャッハッハッハ。そうか、しかし、思いついてしまったのだ。試さねばおられなかった」

 イオタイトの抗議じみた申し出に、椅子に座る男は陽気に返す。

「ですが、あの打ち合いで得られた事が多かった」
「フォホホ。然り、然り」
「それはそうと、ノアサリーナは10才になるのですよね? 年の割に幼い外見に見えませんか?」

 被っていたフードを後ろにさげ、エティナーレが言った。
 椅子に座る男は、立ち上がり背もたれ越しに彼女を見て、口を開く。

「大人になるのを心が拒否しているのだろう。だが、その機転と、武の才能は侮れぬ」
「確かにのぉ。ワシの拳をみて、逃げぬとは胆力もあった」
「ひやひやしたよ。あのまま、おっさんに殴られたら死ぬって」
「馬鹿ですか、イオタイト。ノアサリーナは、きちんと次の手を見据えていましたよ」

 イオタイトが笑いながら言った言葉に、ヴェールを羽織った女性が突き放すように言った。
 その言葉に、イオタイトが嫌な顔をする。

「左様。ジェイトの言う通りだのぉ。おそらく、引きつけて、ワシの側をすり抜ける算段ったのだ。身体の小さい種族の戦い方……おそらくはハロルドの指導によるものだの」

 それに、黒い鎧姿のマルグリットが賛同した。

「ノアサリーナもそうですが、リーダもなかなかどうして、得体の知れない魔法を使いますな。黄昏の者……しかも、上位個体を、無詠唱で呼び出した力量」

 鳥かごに座っていたクゥアイツが言う。

「加えて、主様の正体に気付きかけていた様子」

 そしてヴェールを羽織った女性……ジェイトが囁くように付け加える。

「まったく。油断できぬ奴らだ。ギャッハッハッハ」
「それからサムソン様も侮れません。私の音無き爆撃が、効きませんでした」

 フードを被った女性が、首輪を外しつつ言う。彼女が背負っていたバックパックには、6本の手を模した鎖がついている。

「まったくそうです。なんでしょうか、あの魔法。驚異的な防御力に、突進力。結局、ジルバに剛力付与を使う事で、なんとか止める事はできましたが。まったく、常識知らずもいい加減にして欲しいものですわ」

 ローブ姿の女性が同意し、早口で付け加えた。

「ふむぅ。ワシは、ミズキとかいう娘の剣撃を見た時に、ヒヤリとしたものだのぉ」
「異音を立てた2撃目ですか?」

 マルグリットが、のんびりとした声で言った。
 その言葉に、ローブ姿の女性が振り向き聞き返す。

「あれは、まぁ……この鎧でなければ、タダでは済まぬだろう」
「んまっ。マルグリット様とあろう方が警戒されるほどでしたか? 魔法で防げそうだと思いましたが」
「いや。あれは、小さい攻撃を超高速に連続することで破壊をもたらす攻撃だった」
「左様。左様。主様の言うとおりよ」
「弓兵隊の一点集中攻撃と同じ効果をもたらすと?」
「あぁ。物理的な打撃の飽和により、魔法の防御は役に立たんだろう。いや、次から次へと……ギャッハッハ」

 男は楽しそうに笑い、再び椅子に座った。

「主様、1つよろしいでしょうか?」

 そこに、バビントが声をあげた。

「どうした?」
「質問が……。私は、子供というものは早く大人になりたいと願うものとばかり思っていました。ノアサリーナが大人になることを拒否するというのは……何故なのでしょう?」
「バビントは、相変わらず細かいのぉ」

 神妙に質問したバビントを冷やかすように、マルグリットがからかいの言葉を投げる。

「それは、恐らく……いや、止めておこう。人が必死に秘めた胸の内を暴くことに意味は無い」
「主様?」

 ゆっくりと声音を下げつつ答える男を、バビントが首を傾げ見上げる。

「それに、どうせなんとかするのだろうよ。あのリーダが。ギャッハッハッハ」

 そんなバビントに対し、男は再び部屋中に響き渡る大声で言い放つ。
 そして、狂ったように笑い続けた。
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