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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実
おみせのしゅうぜん
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「すみません。急にお願いして」
「いいえ。逆にこちらが色々と助けて頂いてるのです。こちらこそ、ありがとうございます」
店に行きたいという希望は当然のように了承された。
イスミダルが店の鍵を預かり同行してくれる。
店主であるラテイフが同行する方向で話を進めていたが、襲われる可能性があるという話になり、念の為イスミダルが同行してくれることになった。
一緒に行くのは、ミズキとオレ、そしてトゥンヘルにピッキートッキーの兄弟。加えて、ロンロがふよふよと浮いて、後をついてくる。
ロバが引く馬車に乗って、ガタゴトと進む。
なんだかんだと言って、町から離れたところに飛行島は泊めている。
片道1時間、報復2時間で、お店での作業を何時間かすれば帰りは夜になるだろう。
「そういえば、イスミダルさんは、コルヌートセルの町が出身地だったんですよね?」
「えっ」
「菓子屋アーキムラーキムの」
ロンロに確認してもらっているので、間違いないのだが、念の為、鎌をかけてみる。
「さすが聖女の従者であるリーダ様には隠し事はできませんね」
苦笑してイスミダルが頷く。
隠すつもりはなかったが、向こうもやはりオレ達のことは知っていたようだ。
考えてみれば、町外れにある飛行島も、簡単に受け入れていたしな。
「ええ、私は子供の頃に、帝都にある親類の店へと修行に出されまして、随分と久しぶりにこちらの方に帰ったのです」
「じゃあ、なんであの店に?」
「そうですね。ラテイフが、職人を探してる姿に……」
「一目惚れってやつ?」
「ええ、まぁ」
ミズキの確実に興味本位からくるの質問に、イスミダルが俯きながら答えた。
結構、いきあたりばったりだ。
ちらりと、恋は盲目なんて言葉が頭に浮かぶ。
「それでどうされるのですか? ずっとラテイフ様には黙ったまま?」
「それは……やはりリーダ様は、ご存知なんですよね?」
イスミダルはオレを見つめていった。先ほどの照れたような態度から一変して、真面目な顔で。
「多分」
ご存じというのは、今回ラテイフの店に嫌がらせをしているのが、彼の父親だと言うことをいっているのだろう。
もっとも、オレの受け取り方が間違えている可能性もあったので、ぼかして答える。
「父が、ああいう態度に出た理由は、なぜなのかは分かりませんが……でも、妨害としては度が過ぎています」
それは、きっと店の物を壊した話だろう。
職人の引き抜きや買い占めと違って、罪に問われる行いだと御者のお姉さんも言っていた。
「それに……」
それからイスミダルは、さらに言葉を続ける。
「それに?」
「今にして思えば、あのお菓子を、私の工夫を父は知っています」
例のグリーンピースみたいなのが乗ったお菓子か。
とぼとぼと会話をしていたら、時間を感じることなく町へとたどり着いた。
町に入ってからも、道をイスミダルへ聞くことは無かった。
ピッキーは道を憶えていたようで、全く迷うことなく店までたどり着いたのだ。
記憶力がいいな。
「リーダ様」
「何か?」
店の鍵をあけ、しばらく立ち止まったイスミダルが畏まった様子で、オレに声をかける。
「やはり……一旦、父と話をしてみようかと思います」
「そうですか。それがいいですよね」
「少しこの場を外しても?」
「えぇ。どうぞ。でも、危なくないですか?」
「大丈夫です。父に……会いに行くだけですから」
少しだけ心配になったので、ロンロに後をついて行って貰う。
ついでに情報収集もお願いする。
イスミダルから鍵を預かり、ぼんやりとピッキー達の仕事を眺める。
トゥンヘルさんの指導のもとに、トッキーとピッキーがちょこまかと動いていた。
「そうだ。そうやって、端から端まで測るんだ」
「こうですか?」
「そうそう。おっと、トッキー、糸は利き目だけで、見るんだ。そう、片目で」
今はサイズの測り直しかな。
印のついた糸を見ながら、地面に数を書いている。
「次は、扉に板をはめます!」
「いや、その前に店の中だ。テーブルを仮止めしよう」
「はい! トゥンヘル親方」
荷物を持って、店の中に3人が入る。
外れた窓から、ちょこまかと仕事している様子が見えた。
トッキーとピッキーは、楽しそうに仕事をしていて眺めるだけでも楽しい。
「うんうん。2人は、頑張ってるね」
しばらくすると店からトゥンヘルが出てきた。
「えぇ。私達の無理難題にも答えてくれます」
「なるほどな。作ったり壊したり、試行錯誤によって、地力がついたのか」
「どうですか?」
「店? 2人のこと?」
「どちらもですかね」
「お店は、内装を修理するのは急いでも10日かな。外面だけだったら明日にでも完成するな」
トゥンヘルは、ニコニコしながら断言する。
すごいな。
今見えている店は、壁に穴が開いていたり、扉も壊れていて酷い状況だ。
1日で修理できるのか。
「思ったより早くて驚きました」
「ピッキー達の見立ての正しさと、腕がいいからね。特にピッキーは将来凄い職人になるよ」
「へぇ」
ピッキー達が褒められるのは、自分のことのように嬉しくなる。
特に、日々の努力を見ているだけに、嬉しさもひとしおだ。
「おかげで少しだけ凝った装飾も施せそうだ。それと、商品を置くのはあんなテーブルでいいのかい?」
トゥンヘルが、通りの向かいにあるお菓子屋を軽く指さす。
小さなお菓子がやや傾斜のついたテーブルがあった。
テーブルには、色とりどりのお菓子が真っ白いお皿に並べてある。
「どうやって売るかまでは考えていませんでした。あとで、イスミダルさんが戻ったら相談しましょう」
確かに店の中まで修理することが叶わないなら、店先に売り場を作るしか無い。
売り場をどうするか……か。
これからのことを話していると、浮かない顔でイスミダルが戻ってきた。
「お待たせしました……それで、お店の方は?」
「内装までは時間がかかるようです。ただ、店先だけなら明日にでも大丈夫だそうです」
「それはすごい」
予想以上の朗報だったようだ。
イスミダルが相好を崩す。
「それから、売り場ですね。お菓子をどうやって売るかを相談したいと思います」
帰り道、イスミダルは話会いの事などは言わなかった。
そして後を着いていったはずのロンロは、イスミダルが戻った後も戻ってこなかった。
「いいえ。逆にこちらが色々と助けて頂いてるのです。こちらこそ、ありがとうございます」
店に行きたいという希望は当然のように了承された。
イスミダルが店の鍵を預かり同行してくれる。
店主であるラテイフが同行する方向で話を進めていたが、襲われる可能性があるという話になり、念の為イスミダルが同行してくれることになった。
一緒に行くのは、ミズキとオレ、そしてトゥンヘルにピッキートッキーの兄弟。加えて、ロンロがふよふよと浮いて、後をついてくる。
ロバが引く馬車に乗って、ガタゴトと進む。
なんだかんだと言って、町から離れたところに飛行島は泊めている。
片道1時間、報復2時間で、お店での作業を何時間かすれば帰りは夜になるだろう。
「そういえば、イスミダルさんは、コルヌートセルの町が出身地だったんですよね?」
「えっ」
「菓子屋アーキムラーキムの」
ロンロに確認してもらっているので、間違いないのだが、念の為、鎌をかけてみる。
「さすが聖女の従者であるリーダ様には隠し事はできませんね」
苦笑してイスミダルが頷く。
隠すつもりはなかったが、向こうもやはりオレ達のことは知っていたようだ。
考えてみれば、町外れにある飛行島も、簡単に受け入れていたしな。
「ええ、私は子供の頃に、帝都にある親類の店へと修行に出されまして、随分と久しぶりにこちらの方に帰ったのです」
「じゃあ、なんであの店に?」
「そうですね。ラテイフが、職人を探してる姿に……」
「一目惚れってやつ?」
「ええ、まぁ」
ミズキの確実に興味本位からくるの質問に、イスミダルが俯きながら答えた。
結構、いきあたりばったりだ。
ちらりと、恋は盲目なんて言葉が頭に浮かぶ。
「それでどうされるのですか? ずっとラテイフ様には黙ったまま?」
「それは……やはりリーダ様は、ご存知なんですよね?」
イスミダルはオレを見つめていった。先ほどの照れたような態度から一変して、真面目な顔で。
「多分」
ご存じというのは、今回ラテイフの店に嫌がらせをしているのが、彼の父親だと言うことをいっているのだろう。
もっとも、オレの受け取り方が間違えている可能性もあったので、ぼかして答える。
「父が、ああいう態度に出た理由は、なぜなのかは分かりませんが……でも、妨害としては度が過ぎています」
それは、きっと店の物を壊した話だろう。
職人の引き抜きや買い占めと違って、罪に問われる行いだと御者のお姉さんも言っていた。
「それに……」
それからイスミダルは、さらに言葉を続ける。
「それに?」
「今にして思えば、あのお菓子を、私の工夫を父は知っています」
例のグリーンピースみたいなのが乗ったお菓子か。
とぼとぼと会話をしていたら、時間を感じることなく町へとたどり着いた。
町に入ってからも、道をイスミダルへ聞くことは無かった。
ピッキーは道を憶えていたようで、全く迷うことなく店までたどり着いたのだ。
記憶力がいいな。
「リーダ様」
「何か?」
店の鍵をあけ、しばらく立ち止まったイスミダルが畏まった様子で、オレに声をかける。
「やはり……一旦、父と話をしてみようかと思います」
「そうですか。それがいいですよね」
「少しこの場を外しても?」
「えぇ。どうぞ。でも、危なくないですか?」
「大丈夫です。父に……会いに行くだけですから」
少しだけ心配になったので、ロンロに後をついて行って貰う。
ついでに情報収集もお願いする。
イスミダルから鍵を預かり、ぼんやりとピッキー達の仕事を眺める。
トゥンヘルさんの指導のもとに、トッキーとピッキーがちょこまかと動いていた。
「そうだ。そうやって、端から端まで測るんだ」
「こうですか?」
「そうそう。おっと、トッキー、糸は利き目だけで、見るんだ。そう、片目で」
今はサイズの測り直しかな。
印のついた糸を見ながら、地面に数を書いている。
「次は、扉に板をはめます!」
「いや、その前に店の中だ。テーブルを仮止めしよう」
「はい! トゥンヘル親方」
荷物を持って、店の中に3人が入る。
外れた窓から、ちょこまかと仕事している様子が見えた。
トッキーとピッキーは、楽しそうに仕事をしていて眺めるだけでも楽しい。
「うんうん。2人は、頑張ってるね」
しばらくすると店からトゥンヘルが出てきた。
「えぇ。私達の無理難題にも答えてくれます」
「なるほどな。作ったり壊したり、試行錯誤によって、地力がついたのか」
「どうですか?」
「店? 2人のこと?」
「どちらもですかね」
「お店は、内装を修理するのは急いでも10日かな。外面だけだったら明日にでも完成するな」
トゥンヘルは、ニコニコしながら断言する。
すごいな。
今見えている店は、壁に穴が開いていたり、扉も壊れていて酷い状況だ。
1日で修理できるのか。
「思ったより早くて驚きました」
「ピッキー達の見立ての正しさと、腕がいいからね。特にピッキーは将来凄い職人になるよ」
「へぇ」
ピッキー達が褒められるのは、自分のことのように嬉しくなる。
特に、日々の努力を見ているだけに、嬉しさもひとしおだ。
「おかげで少しだけ凝った装飾も施せそうだ。それと、商品を置くのはあんなテーブルでいいのかい?」
トゥンヘルが、通りの向かいにあるお菓子屋を軽く指さす。
小さなお菓子がやや傾斜のついたテーブルがあった。
テーブルには、色とりどりのお菓子が真っ白いお皿に並べてある。
「どうやって売るかまでは考えていませんでした。あとで、イスミダルさんが戻ったら相談しましょう」
確かに店の中まで修理することが叶わないなら、店先に売り場を作るしか無い。
売り場をどうするか……か。
これからのことを話していると、浮かない顔でイスミダルが戻ってきた。
「お待たせしました……それで、お店の方は?」
「内装までは時間がかかるようです。ただ、店先だけなら明日にでも大丈夫だそうです」
「それはすごい」
予想以上の朗報だったようだ。
イスミダルが相好を崩す。
「それから、売り場ですね。お菓子をどうやって売るかを相談したいと思います」
帰り道、イスミダルは話会いの事などは言わなかった。
そして後を着いていったはずのロンロは、イスミダルが戻った後も戻ってこなかった。
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