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過去2 ワンコ攻め
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「…」
「ロン?」
ハルは相変わらず、何を考えているのか分からない微笑みを浮かべた。
ロンは敵対心に満ちた瞳を向ける。
恨みを込めた目で睨まれたことに、俺は心を抉られたショックを覚えた。
だけど…もう後戻りは出来ない。
ロンに嫌われて、もう友だちとしてずっと傍にいることは出来なくなってしまった。
ハルは穏やかな表情でロンを見る。
ロンは嫌そうに顔を歪めた。
「どうしたら…僕に関わらないでくれる?」
言い方から、本当に俺に辟易していることが分かった。
心を抉られる感じがした。
涙を堪える。
コイツは同情するような奴じゃない。
「ロン」
ハルは俯いたと思ったら、僕の頬をなでウットリした顔を向けた。
いつもは爽やかな綺麗な顔が、この時ばかりは胃もたれするような甘ったるい表情を浮かべる。
うっ…
苦手だ。このハルの顔…胃もたれする。
早く言えよ!と心の中で叫ぶ。
この数秒、居心地の悪さに苛まれた。
「俺と付き合って」
目は真剣に、ロンは「ええ…」といった、引いた顔をした。
…
「…それ以外は?」
「それ以外は無い」
バシッと言われる。
僕はこのやり取りも面倒臭くなってきた。
もう帰りたい…
だけど急に帰ったりすると、またハルを怒らせるのだろう。
最近自分の身が危ない気がしてくる…
それにハルに振られ続けている女子達を思うと、微かな優越感に浸された。
「…付き合ってあげても、いいよ」
勝手に言葉が出てくる。
自分の言葉を自分で疑った。
え?っと止まり、ハルも固まって動かなかった。
だがゆっくりと、ハルの片方の口角が上がった。
「ホントに…?」
嬉しそうにハルの顔が、パアアと明るくなる。
飛びつくように抱きつかれた後、僕はハルのなされるがままだった。
いずれ飽きるだろ…
そう思い、僕は現実逃避をした。
…
せっかくハルから断るために、そんなに好きでもない女子と付き合っても寝取られ、結局こうなった。
情けない…
「ハアア~」とロンは欠伸をする。
空を見上げ、僅かに動く入道雲を見つめる。
アイツから逃げるためだ…
でも男と付き合うなんて…
絶望に苛まれる。
それを繰り返し、ロンは百面相を繰り返していた。
カサッと草を踏む音がした。
空が見えなくなり、代わりにハルのニッコリした顔が現れる。
「…なに?」
意識しなくてもトゲトゲしく対応してしまう。
「もっと優しい言い方をしてほしいな」
柔らかい穏やかな表情で嬉しそうに言っている。
僕と付き合うのがそんなに嬉しいのか…
ロンは意味が分からないっと言った顔をした。
相変わらずハルはニコニコと笑う。
「今日から俺たち恋人同士だよね」
前の、最初に振られたときの子犬のような、表情に戻る。
それに安堵感を覚えた。
「そうだね」
適当に、どうでもいい事のように僕は言った。
モテモテのハルが、童貞のように嬉しそうに笑う様子に半端じゃない違和感を覚えた。
それが僕は満更でもなく、無意識に笑顔を浮かべていた。
…
ずっと忘れていたあの時の記憶。
僕の中では、優しいままで終わっていたハル。
だが違うのかもしれない…
ピンポン ピンポン
矢継ぎ早に、けたたましくなるインターホン。
インターホンに映る女性。
ありありとあの時の光景が、これでもかという程思い出していく…
僕は嗚咽し、その場にペタンと崩れ落ちた。
「ロン?」
ハルは相変わらず、何を考えているのか分からない微笑みを浮かべた。
ロンは敵対心に満ちた瞳を向ける。
恨みを込めた目で睨まれたことに、俺は心を抉られたショックを覚えた。
だけど…もう後戻りは出来ない。
ロンに嫌われて、もう友だちとしてずっと傍にいることは出来なくなってしまった。
ハルは穏やかな表情でロンを見る。
ロンは嫌そうに顔を歪めた。
「どうしたら…僕に関わらないでくれる?」
言い方から、本当に俺に辟易していることが分かった。
心を抉られる感じがした。
涙を堪える。
コイツは同情するような奴じゃない。
「ロン」
ハルは俯いたと思ったら、僕の頬をなでウットリした顔を向けた。
いつもは爽やかな綺麗な顔が、この時ばかりは胃もたれするような甘ったるい表情を浮かべる。
うっ…
苦手だ。このハルの顔…胃もたれする。
早く言えよ!と心の中で叫ぶ。
この数秒、居心地の悪さに苛まれた。
「俺と付き合って」
目は真剣に、ロンは「ええ…」といった、引いた顔をした。
…
「…それ以外は?」
「それ以外は無い」
バシッと言われる。
僕はこのやり取りも面倒臭くなってきた。
もう帰りたい…
だけど急に帰ったりすると、またハルを怒らせるのだろう。
最近自分の身が危ない気がしてくる…
それにハルに振られ続けている女子達を思うと、微かな優越感に浸された。
「…付き合ってあげても、いいよ」
勝手に言葉が出てくる。
自分の言葉を自分で疑った。
え?っと止まり、ハルも固まって動かなかった。
だがゆっくりと、ハルの片方の口角が上がった。
「ホントに…?」
嬉しそうにハルの顔が、パアアと明るくなる。
飛びつくように抱きつかれた後、僕はハルのなされるがままだった。
いずれ飽きるだろ…
そう思い、僕は現実逃避をした。
…
せっかくハルから断るために、そんなに好きでもない女子と付き合っても寝取られ、結局こうなった。
情けない…
「ハアア~」とロンは欠伸をする。
空を見上げ、僅かに動く入道雲を見つめる。
アイツから逃げるためだ…
でも男と付き合うなんて…
絶望に苛まれる。
それを繰り返し、ロンは百面相を繰り返していた。
カサッと草を踏む音がした。
空が見えなくなり、代わりにハルのニッコリした顔が現れる。
「…なに?」
意識しなくてもトゲトゲしく対応してしまう。
「もっと優しい言い方をしてほしいな」
柔らかい穏やかな表情で嬉しそうに言っている。
僕と付き合うのがそんなに嬉しいのか…
ロンは意味が分からないっと言った顔をした。
相変わらずハルはニコニコと笑う。
「今日から俺たち恋人同士だよね」
前の、最初に振られたときの子犬のような、表情に戻る。
それに安堵感を覚えた。
「そうだね」
適当に、どうでもいい事のように僕は言った。
モテモテのハルが、童貞のように嬉しそうに笑う様子に半端じゃない違和感を覚えた。
それが僕は満更でもなく、無意識に笑顔を浮かべていた。
…
ずっと忘れていたあの時の記憶。
僕の中では、優しいままで終わっていたハル。
だが違うのかもしれない…
ピンポン ピンポン
矢継ぎ早に、けたたましくなるインターホン。
インターホンに映る女性。
ありありとあの時の光景が、これでもかという程思い出していく…
僕は嗚咽し、その場にペタンと崩れ落ちた。
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