もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

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本編

27話目

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 しんと静まりかえった室内で彩音は体育座りで顔を伏せていた。
 頭の中で自分を買ったクラスメイトの顔がぐるぐるとまわっている。何をしてきたか、何をしているのか。そんなことばかりを思考して、昨晩のあの場面を思い出して涙が零れた。

 私はずっと騙されてきたのだ。主どころか妹にまで。そう思う彼女が強いショックを受けるのは当然と言えた。
 祐二と琴音は学校へと行ってしまった。この家にいるのは自分一人。それは今の彩音にとってありがたいことであった。
 今は二人に会いたくない。それはもしかしたら一生かもしれないけれど。彩音は膝で目を擦る。
 日中だというのにカーテンを閉め切っており、わずかな日光が室内の物を判断させてくれる。
 必要最低限の物しかないさっぱりとした部屋だ。それでも当初よりは物は増えている。それらはすべて三人で外出した時に購入したものである。
 相変わらず祐二はエッチなことばかり求めてくるけれど、彼女達がちゃんとした生活を送れるようにしてくれている。学校だって辞めずに通えている。それはわかっているし、少しは感謝もしていた。
 それに、身体を求められることもそこまで苦にならなくなっているのにも気づいていた。慣れとは恐ろしい。自分がそう思ってなかったとしても身体が勝手に慣れてしまうのだ。彩音はそう解釈していた。
 彩音は袖に涙を染み込ませる。着用しているのは祐二のお下がりであるワイシャツだ。寝巻にするように強要されたものであった。
 これも最初は祐二のこびりついた臭いに顔をしかめたものだが、いつしか慣れてしまいこの臭いに包まれても熟睡できるようになっていた。
 昨晩、風呂場から飛び出して、何も着ないわけにはいかないからと身に付けたのだが、今更になってこれを着るのはおかしいんじゃないかと思う彩音。だからといって他に何を着るのか迷ってしまうのだが。
 最初に比べれば祐二に対する嫌悪感は大分薄れていた。琴音はいつだって大切な存在だ。だからこそ二人に裏切られたのがつらかった。単純に信じたくなくて嫌だった。
 だから逃げてしまった。二人の言葉に耳を傾けなかった。自分の見てきたものが真実とかけ離れていたなんて思いたくなかったから。

 これからどうすればいいんだろう? 膝に顔を埋めたまま彩音はぐるぐると考える。
 祐二にとって今の自分は厄介なことこの上ないだろう。もしかしたらこれを機に捨てられてしまうかもしれない。

「……嫌っ」

 自らの想像に思わず口をついていた。
 居心地が良いなんて言わないけれど、彼女にとってせっかく慣れた居場所だ。妹だっているし。何より祐二以外の男に抱かれると考えただけで鳥肌が立つ。
 あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。ぞわぞわと背中に虫が這っているかのような感覚にとらわれる。
 震えを押さえようと彩音は自らの身体を抱いた。祐二以外の男に自分の身体を好き勝手にされるのを想像をしただけでこれである。彼女は知らず所有物としての心が育まれていたのであった。
 嫌な想像をしてしまったと自分でも思う。でもそれが現実になってしまったら? 彩音の震えが大きくなった。
 これからどうすればいいのだろう。何を信じて頼っていけばいいのかわからない。彩音は部屋にこもってからずっと悩み続けていた。

 時間の感覚がおかしくなっていた彩音はとっくに下校時間になっていたことに気づかない。自分の殻に閉じこもって悩み続けていた彼女は家主が帰ってきたことに気づかなかった。


  ※ ※ ※


 足音を殺して祐二は帰宅した。
 自分の家なのになんで泥棒みたいにこそこそしてんだろ? と頭を過ったものの、こうでもしなければ彩音に気づかれてしまう。またドアを開かないように固定されたら面倒だ。仕方ないと割り切って彩音の部屋へと向かう。
 泥棒どころか忍者にでもなれるんじゃなかろうか。それほどの忍び足っぷりを実践できて祐二は自らの才能に戦慄する。
 今はその隠れた才能がありがたかった。鞄を廊下に置くと彩音の部屋の前に立つ。
 すーはーと静かに深呼吸。耳を澄ませてみると物音がする様子はなかった。今ならいけるか?
 トリャッ! と勢いをつけてドアを開く。昨晩のような硬く閉ざされた感覚はなかった。すんなりと部屋への侵入を許してくれる。
 ぐるりと部屋を見渡し彩音を探す。すぐに隅っこで体育座りをしている彼女を見つけた。
 カーテンが閉められて薄暗い。それでも彩音の白い肌はよく目立つ。夜でも雪が光っているように見える感覚と似ている。
 はっとした顔の彩音と目が合う。祐二はドアを閉めて彼女の逃げ場を封じた。

「嫌っ」

 開口一番否定されてダメージを負う祐二。直接攻撃されたわけでもないのに胸を押さえる。
 もう一度深呼吸。部屋に充満した彩音の匂いを堪能して気合を入れる。

「彩音、悪かった。俺はお前を騙してた」
「……」

 言葉はなかったものの、彩音の目が鋭くなった。憎い相手に向ける目だった。
 けれど今更だ。祐二は臆さない。

「悪いことだと思ってる。それでも反省はしねえよ。だってわかっててやってたんだからな」
「ッ!? あなたって人は……っ!」

 声すら美しいはずの彩音の言葉は枯れていた。たった一日で、彼女がどれだけ悲しんだことか。それを想いながらも意図して表情を変えないように努める。

「俺はお前等のご主人様だからな。何をやっても文句を言われる筋合いはないはずなんだぜ?」
「くっ……」

 唇を噛む、どころかギリリと歯ぎしりする音が耳に届く。祐二は冷や汗をかきながらも言葉を続ける。

「でもな、それでもだ。彩音……お前は俺にとって特別なんだよ」

 一歩、彩音に近づく。彼女の眼光は鋭く臆してしまいそうになる。それでも勇気の一歩を踏み出した。

「何を――」
「もしかしたらモテモテの藤咲彩音様には記憶にないかもしれねえけどよ、俺はお前に告白したことがあるんだぜ。愛の告白だったんだよバカ野郎」
「……」

 口をつぐむ彩音。祐二は自らの恥部をさらけ出すかのように告白する。
 部屋が薄暗くて良かった。今自分の顔は真っ赤になっているだろうと祐二は思う。
 これから祐二がすることは自分のためであり、断じて目の前の彼女のためではない。やはり自らの得になることしかやろうとは思えない。それが会田祐二という男だった。

「好きな女の子をメイドにしたんだ。調子に乗って当たり前だろ。好きな子をいじめたくなるのも男の子の心理ってやつだ」
「か、勝手なこと言わないでっ」
「勝手なこと言うに決まってるだろうが。だって俺はご主人様でお前はメイド。藤咲彩音は俺の専属メイドなんだからな」

 ぐっ、と言葉を詰まらせる彩音。祐二の言う通りであり、彼女にはそれを突っぱねるだけの権利がないのである。
 彩音が気づいた時には祐二が目の前まで迫っていた。

「い、嫌っ!」

 咄嗟に手を突っ張らせて距離を取ろうとする。その手を祐二が掴んだ。

「俺は……藤咲彩音のことが好きです」

 それは二度目の告白だった。
 ただ今回は気持ちを伝えるだけにとどめる。「付き合ってください」なんてことは口にしなかった。

「……彩音は俺のこと嫌いか?」
「嫌いよっ! 嫌いに決まってるじゃない! 今まで自分が何をしてきたかわかってないの?」

 即答だった。祐二の心にガーンとヒビが入る。
 そりゃそうだけどさ……。だって琴音が大丈夫って言うから、とこの場にいないもう一人のメイドを責める。
 だけど初志貫徹。祐二はさらに攻め込むことにした。
 不意に彩音を抱きしめる。肉付きの良い感触が返ってくる。最高の抱き心地に祐二の頬が緩む。

「や、やめてっ」

 あ然としたように固まっていた彩音であったが抵抗を始める。胸の中の彩音に苦労しながらも祐二は離さなかった。
 おいおい抱きしめたら問題解決みたいなこと言ったメイドさんは誰ですかー? 彩音が髪を振り乱して暴れるものだから祐二の手にも力が入る。取り押さえるように床に押さえつけていた。
 これじゃあ彩音が納得しないし、これから先も抵抗し続けるだろう。
 こうなったら、彩音を完全に性奴隷化してしまおうか……。自分のメイドなんだし強姦もくそもないだろう。
 ヤケになり始めた祐二の目が怪しく輝く。振り払おうと必死な彩音はその変化に気づかなかった。
 だからなのか、二人とも第三者の侵入に気づかなかったのである。

「本当にやめてほしいの? お姉ちゃん」

 琴音だった。彼女が祐二と彩音のすぐ傍まで来ていたのだ。まったく気配を感じなかった二人は身体を震わせて驚く。
 まさに忍者のような気配遮断能力。自分なんて足元にも及ばないんじゃなかろうかと祐二は思った。
 琴音は姉である彩音と目を合わせる。射抜かれた彩音も目を逸らせないでいた。

「昨日さ、お姉ちゃん祐二様がお風呂入ってるのわかってて自分も入ってきたよね。それって祐二様にお礼がしたかったんじゃないの? 嫌いな相手に自分からそこまではしないよね」

 琴音は真っすぐに彩音を見据えていた。ちなみにメイド服着用していた。そんな着替える暇があったのかと祐二はツッコミたくなったのを我慢する。
 もし祐二が彩音の部屋に入れなかった場合、琴音に手伝ってもらうように話しあっていた。彼女が窓に姉を引きつけて、その隙に部屋への侵入を果たそうというざっくりとした作戦だ。
 だが、意外にもあっさり侵入できてしまった。だからなのか琴音は祐二のために説得に参加してくれるようだ。

「あたしにはわかるんだよ。お姉ちゃん、もうそこまで祐二様のこと嫌ってないよね」
「わ、私は……っ」
「お姉ちゃんが怒ってるのは祐二様に嘘をつかれたことに対してだよ。最初から嫌いな相手だったら裏切られたなんて思わないもの」
「私はただ……琴音のことを想って……」
「それは余計なお世話だよ」

 ばっさりと斬り捨てる琴音。言葉尻の強さに彩音は押し黙ってしまう。

「あたしはもうお姉ちゃんに守ってもらうだけの子供じゃないの。祐二様とだって好きだからご奉仕したいの。ただそれだけ。あたしここに来て嫌だなんて一言だって言ってないんだよ」
「あ……」

 彩音の目から一粒の涙が零れた。一筋の跡を辿るように、次々と涙が溢れてくる。
 妹の心を知らず、自分のやってきたことはすべて徒労だったのか。虚無感が彩音を支配しようと迫ってくる。
 そんな時だった。彩音の手が包まれる。暖かく彼女より大きい手。祐二だった。

「俺が言うのもなんだけどさ、彩音の愛情はすごいよ。琴音のために自分を差し出せるんだからな」

 視線を彷徨わせながら祐二は言葉を探す。彩音の目を見ないまま早口で言いきる。

「でもまあ琴音もこう言ってることだし、今度は自分のために愛情注いでやってもいいんじゃないか?」
「自分に……?」

 彩音は呆けたように呟く。そんな彼女に祐二は閃いたと言わんばかりに表情を輝かせた。

「そうだ。だから彩音は自分が気持ち良いって思えることをすればいいんだ」

 祐二は琴音にアイコンタクト送る。琴音は頷くとニヤリと笑った。悪い笑顔だった。

「そうだよお姉ちゃん。今日はあたしもお姉ちゃんのためになることをするよ」
「私の、ため……?」

 イマイチ伝わっていない感じ。そんな彼女に構うことなく、祐二と琴音は行動に移った。


  ※ ※ ※


「あ……ふ……」

 二人がかりで彩音を敷布団の上に寝かせた(彩音の部屋にはベッドがない)。それから早速二人がかりで襲いかかったのである。
 右の乳房を琴音が、左の乳房を祐二が触る。揉んでこねて弾く。ワイシャツだけでブラジャーをしていなかった彩音のおっぱいは形を自由に変える。二人の創作意欲を湧かせるのに充分な柔らかさであった。
 左右で違う感覚。打ちのめされたばかりの彩音にとって、その感覚は直接脳に送り込まれるようだった。

「あ……やぁ……」

 抵抗は弱々しい。振り払おうとする手は多少上がるだけで、すぐにぱたりと落ちてしまう。そんな形にもならない抵抗を何度も続けていた。
 何度も触られ揉まれ吸われた乳房だ。すでにそれらの刺激は快楽に変わるようにプログラムされている。彩音にとっては慣れた感覚なのだ。
 慣れた手つき、慣れない手つき。両側からの違った刺激に悶える。彩音の額にはじっとりと汗が浮き出ていた。

「お姉ちゃん、気持ち良い?」

 少したどたどしく琴音が姉に尋ねる。姉妹でスキンシップはあったものの、さすがに性的に触れるのは初めてなのだ。緊張からなのか、それとも興奮からか、彼女の額にも汗が滲み出ていた。
 祐二は自然な風を装って彩音のワイシャツのボタンを外していく。あまりにも簡単に外してしまうものだから全部外されるまで彩音は気づかなかった。

「ふあ……っ!?」

 おっぱいへの刺激が直なものになる。彩音の喉が震えた。

「うわぁ……お姉ちゃんの、すごく柔らかい……」

 熱っぽい調子で琴音が呟く。はだけたワイシャツから零れんばかりの巨乳が顔を覗かせている。それに触れる琴音はあまりの弾力と柔らかさに感動を覚えていた。
 彼女は空いた手で自分の胸を揉む。歴然とした差に愕然。戦闘力の差を明らかにされてしまった。

「いや、琴音の胸もほどよいサイズで男としては喜ばしいんだからな」

 それを見た祐二はすぐさまフォローに入る。チラとご主人様に目を向ける琴音は「本当ですか?」と不安そうな面持ちだ。

「……」

 そんな二人を見上げる形となっている彩音の唇が尖っていく。本人は気づいていないが、とても不満な表情だった。

「ちゅ……」

 彩音の表情の変化に気づいた祐二がその尖った唇に自分の唇を押しつける。瑞々しい唇にカサカサしたものを押しつけられて彩音の眉が顰められる。
 唇が離れた瞬間、再び彩音の唇は塞がれた。目を白黒させる彼女の眼前にあったのは妹の顔であった。

「お姉ちゃ……ちゅ、んちゅ」

 せつない目差しで妹が姉である自分を求めている。驚きはあったものの、拒絶しようとはしない。
 大事な妹だから。口内に舌を入れられてもそれは変わらなかった。

「琴、音……」
「ん……お姉ちゃん……大好き」
「……わ、私も……琴音が好きよ」

 姉妹愛を確かめるように接吻を繰り返す。それは濃厚で、舌まで絡めちゃったりしていた。
 もちろんこの場には祐二もいる。しかしいきなりの濃厚なレズっぷりに置いてけぼりを喰らっていたのである。
 女同士なのにとても淫猥な光景。いや、女同士だからこそなのか。姉妹の絡みには男の欲望みたいな卑しさがなく、ただただ艶めかしさがあった。
 祐二ははっと我に返る。自分がリードしていたはずなのにいきなりのけ者扱い。どうしてこうなった。いやそんなことよりも主導権を握らねば。そう思いながらも今さら姉妹の間に割って入る度胸もない。
 琴音は実の姉にするディープキスに酔いしれている。姉の巨大果実を指を這わせて刺激している。両手で触っているため祐二が触るスペースがない。
 祐二が視線を下げる。もうここしかないよな。祐二は口角を上げながら移動する。

「ふわあぁぁぁ!?」

 急な新たな刺激に彩音の身体が跳ねる。その際、琴音と歯と歯をぶつけてしまい二人して涙目になった。
 琴音は姉の変化の理由を察知したようで、再び唇を合わせにかかる。抵抗しかけた彩音だったが身体が震えて思い通りにならない。
 股間からの刺激。祐二が彩音のワレメに沿って舌を這わせていたのである。
 下から上へ。舌をペロペロと犬のように使う。中に入れることなくなぞるだけに留める。
 優しく優しく。祐二はそれだけを心掛けていた。
 祐二は彩音と敵対したいわけではないのだ。あくまで主従関係。ならば自らの真っ向な誠意に応えてくれるのではないか、そう考えていた。
 祐二は今まで自分が良ければそれで良かったのだ。自分の快楽を優先してきた。自分が気持ち良ければ彩音の気持ちがどうであれ関係がないと思っていた。
 それは、どうせ彩音に嫌われていると、彼の中で結論が出ていたからである。
 自分の身体が勝手に売られ、それを身勝手に自由にされて嫌に決まっている。祐二は常識的にそう思っていたのだ。
 ならば琴音はどうだ? 彼女は姉と状況は変わらないにも拘わらず、自分に忠誠を尽くしてくれる。しかも嫌々ではなく自ら。さらにそんな自分を好きだと言ってくれた。
 琴音は気持ち良くしてくれると同時に、自分も気持ち良くなっている。ならば彩音もそうすればどうか。
 人間は快楽に弱い生き物だ。いけないことだとわかっていても快楽の前では逆らえなくなってしまう。
 それに琴音は言ったのだ。彩音はそれほど祐二を嫌っているわけではないと。信憑性はどうであれ、彼の方針は決まった。
 今日、今日だけは彩音に尽くす。自分の快楽よりも彼女の快楽を優先させるのだ。それが祐二自身の得になると考えた。
 無理やり膣口をこじ開けたりしないように。ゆっくりと快楽を馴染ませるように祐二は舌を動かす。彩音の身体がビクビクと反応している。効果が出ているようだ。
 琴音のアドバイスが生きている。最奥をゴツゴツと突かなくても、浅いところでも充分に気持ち良いものなのだ。大陰唇をなぞるだけでも脳に快楽は送られる。
 事実、彩音の陰部は濡れてきていた。
 トロリとして粘り気がある。ペロペロとしていたのがペチャペチャと水音が増していった。
 優しく優しく。祐二は何度も自分に言い聞かせる。そうでもしていなければ勃起したものを突っ込んでしまいたい衝動に負けてしまうからだ。

「んああっ……ん、ダメッ……琴音待って。……ご、ご主人様も……」

 上と下。両方から攻め立てられて彩音が切羽詰まった声を上げる。二人とも耳に届いていたが、やめる様子はない。むしろ激しく攻めていく。
 愛液がこれでもかと垂れてきた。それをすすりたい衝動が祐二に襲いかかる。だが我慢。チンポを突っ込みたい衝動が襲う。これも我慢。
 彩音の快楽のため。祐二は舌を動かし続けた。
 琴音の手が彩音の乳首を捉えた。花を摘むように親指と人差し指で摘まむ。彩音の目が見開かれる。

「だ……ダメェェェェェーー!!」

 白い喉が震える。それと同時、祐二の顔に温かなものが振りかけられた。潮だった。
 まさか挿入もしていないのに潮噴きするだなんて……。祐二はちょっとした驚きを隠せないでいた。とりあえず口に入ったものはごくりと飲み込む。

「お姉ちゃん可愛い……」

 くたりと脱力した彩音。慈しむように琴音は姉の汗を舐め取っていた。伸ばされた赤い舌がエロい。祐二は呆けながら眺める。

「こ、こんなの……は、恥ずかしい……」

 力なく発せられた声。もしや泣いてしまうんじゃなかろうかというほど彩音の声は震えていた。

「そんなことないよ。お姉ちゃんすっごく可愛かった。ご主人様だってそう思ってる。ね?」

 そう言われて琴音は祐二に振り向いた。つづいて彩音も彼に目を向ける。いきなり振られた祐二はしどろもどろになる。

「あ、ああ。すげえ可愛い。やっぱり俺、彩音が好きだ」

 好きという言葉。この部屋に入ってから祐二は何度も口にしている。これも琴音のアドバイスの一つだったりする。
 女は愛情を求めている。しっかりと言葉を濁さず伝えられる愛情が重要なのだ。琴音からのアドバイスだった。
 祐二は好きだと何度も言う。それは本心である。今まで返ってくるなんて思っていなかったし、それに無理だとも思っていた。
 彩音が立ち直ってくれるなら。あわよくば自分を好きになってもらえるように、祐二は好きだという言葉を重ねる。

「ずっと彩音が気持ち良くなってる顔が見たかった。好きだから。良いって思ってほしかった」
「……」

 彩音はそっぽを向く。視線が彷徨っている。

「お姉ちゃんはどう? さっきの気持ち良くなかった?」
「べ、別に……ひゃあっ!?」
「嘘はダメだよ。あたしわかっちゃうんだからね」

 琴音の指が彩音のクリトリスを摘まんでいた。これが弱点とばかりに攻め立てる。

「ああっ、今はやめてっ! び、敏感になってるの……ひぃぃぃぃぃんっ!」

 容赦なく琴音は実の姉を攻める。祐二はなんだかハラハラした面持ちで見守っていた。

「正直に言わないとやめてあげない」
「言う! 言うからぁっ! 気持ち良かったのっ。とっても良かったからぁ」

 言った途端琴音の指は止まった。彩音ははぁはぁと胸を大きく上下させる。酸素が必要だった。

「ですって祐二様。良かったですね」

 ニッコリな琴音。祐二は苦笑するしかなかった。
 それにしても、と祐二は彩音のマンコに目を向ける。
 愛液が流れてシーツをこれでもかと濡らしていた。パクパクと物欲しそうに開閉を繰り返している。淫ら過ぎた。
 ああ、この中で肉棒を出し入れできたらとても気持ち良さそうだ。
 ふと欲望が頭をもたげた。それに気づいた祐二は頭を振る。
 自分の欲望は収めておくのだ。彩音のため彩音のため。繰り返し呟く。
 ぶつぶつと少々気味の悪い祐二に琴音が近づく。彼女にとって祐二はどんな状態でもご主人様であるのだ。

「祐二様、これを」
「え? なんだ?」

 差し出されたので思わず受け取った。祐二は渡された物を確認する。どうやら箱のようだった。

「って、これはコンドーム?」

 彩音に買いに行かせたものの、未だに一箱も使っていなかったコンドーム。男の欲望を優先した結果、生の回数が断然多かったのである。
 彩音のためを想うのならば最初からこれを使えば良かったのだ。いや、やることやるんだしあまり変わらなかったか。祐二の中で後悔はなかった。

「今日はこれを使ってお姉ちゃんを気持ち良くさせてあげてください」

 つまり挿入はオーケーらしい。祐二の心が弾む。続いてローションを渡された。
 ここは琴音に従った方がいいだろう。祐二は素早くコンドームを装着する。ローションをたっぷり出すとコンドームに覆われたチンポになじませる。コンドームのヌルヌルしたものがこれでもかとヌルヌルになった。
 彩音にはいいだろう。すでにトロトロに濡れている。
 白くムッチリとした脚を開かせる。祐二と彩音の目が合う。

「いいか?」
「どうせ……私が何言っても入れるんでしょ」
「彩音が嫌ならやめる」
「え?」

 彩音が驚きの表情となる。彼女にとって祐二の言葉は意外すぎたのだ。

「だっていつも……」
「彩音が好きだったから我慢できなかった。これからはもうちょっと彩音の意見を聞くようにするよ」

 優しい口調を避けるように彩音が目を逸らす。拒絶されたわけではないと祐二は思った。

「嫌ならエッチしない。それで怒ったりもしない。ただ、するならいっしょに気持ち良くなりたいんだ」
「……」

 彩音は黙ってしまった。視線が揺らいでいる。言葉を探しているようだった。
 祐二も黙る。彼女からの返事をいつまでも待つつもりだ。チンポがビクビクするほど訴えているが無視。おあずけは本当に苦行である。

「わ、私だってあなたのメイドなんだから嫌だなんて言わないわよっ。す、好きにすればいいでしょ!」

 怒っているような口調だった。祐二はまだ動かない。

「それじゃあエッチできないな。彩音がいいって言うまで入れない」
「な、何よそれ」
「入れてほしいの? ほしくないの?」
「~~ッ!」

 薄暗い室内でも彩音の顔が赤くなったのが祐二にはわかった。

「――よ」
「え、何?」
「早く入れなさいよ! ご主人様のバカァ!」

 その言葉を耳にした瞬間、祐二の胸は高鳴った。
 初めて彩音が求めてくれたのだ。自分を受け入れてくれたのだ。
 祐二の腰が勝手に動いていた。ズニュゥゥゥゥッ! と一気に突き入れていた。

「んああああああああっ!」

 嬌声を上げる彩音。痛みなんてまったく感じさせない声だ。一度イッたことで感じやすくなっているのだろう。
 子宮にノックしたところで祐二は我に返る。欲望に支配されて身体が勝手に動いていたのだ。そうじゃないと自らに言い聞かせる。
 彩音の顔を眺める。とろんとした目。頬が緩んでいるように見える。良かった、と祐二は内心で呟いた。
 彼女のGスポットはどこかとピストン運動しながら探す。彩音に気持ち良くなってもらえるように。祐二はそれだけを考えるように心がける。

「んあっ、はあっ、ああっ……ふあああっ!」

 彩音の嬌声の質が変わる。もう一度と、角度を変えながら出し入れしてみる。
 割と浅い位置にそのポイントはあった。
 肉棒で擦る度に艶っぽい声を聞ける。祐二の脳が震える。直接快楽を味わっているようだった。
 相手を気持ち良くさせると自分も思いのほか快楽を送られてくる。思いやっている内に祐二は高まっていく。
 祐二は腰の動きに注意しながら手を伸ばす。彩音のおっぱいの形が変形する。痛くしないように。快楽を送り込むイメージで指を動かしていく。

「む、胸ぇ! そんなに……ああっ! ダメ!」
「あ、ダメなの?」

 ピタリと手の動きが止まった。残念そうな顔になったのは彩音の方だった。

「やっ……な、なんで急に止まるの!?」
「彩音がダメだっていうから」
「こ、こんな時に、あんっ……そんなの気にしないでよっ」
「じゃあ触ってほしい?」
「……」
「……」
「い、痛くしないように触って……」
「わかった」

 祐二の手が再び動き出す。彩音の嬌声が大きくなる。快楽に染まっているような表情に見えた。
 たまらず祐二は彩音にキスをする。

「好きだ」

 何度告白されただろうか。チカチカしてきた視界で彩音はぼんやり思った。
 まあいいか、なんて彩音は投げやりに思う。
 目の前で必死に腰を振っているのが私のご主人様。笑えない真実。それでもこんなご主人様を受け入れてあげてもいいか、と彩音は思う。何気に上から目線であった。
 身体はすでに受け入れている。心だって、本当はそこまでの嫌悪感はない。ただ、ちゃんと自分を見てほしい。それは彩音の要求だったのかもしれない。

「あ、彩音! ちゃんと気持ち良くなって、イッてくれ!」

 ああそろそろイクのね。彩音はご主人様の限界を感じ取った。ちょうどこちらも限界が近い。先ほどから頭が白に染まっているのだ。
 ピストンがクライマックスに入った。弱点をこれでもかと攻められる。彩音は頭を反らして喉をさらけ出す。

 ドクン……ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドプププゥゥゥゥゥゥー!

 迸る精液。それはすべてコンドームの中に収まった。
 震えるチンポからたくさん出たのだろうと彩音は膣で感じていた。いつもあった灼熱のように焼ける感覚がないのはそれはそれで物足りないと、ほんのちょっとだけ彩音は思ってしまった。
 倒れるように祐二が覆い被さってくる。優しく抱きしめられて、彩音に抵抗しようとする意志はなくなっていた。

「彩音、好きだ……」

 もう聞きなれた告白。彩音は小さくため息をつく。いつしか涙の跡は消えていた。
 この後、姉はにまにまとした表情の妹にからかわれるのであった。
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