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完結後エピソード「よし……ですわよ、イードさん」
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しおりを挟む深い口づけを交わしながら、イードさんの手が、違和感を覚えたばかりの下腹へと降りていく。
抗い、逃げ出そうにも、のし掛かった彼の膝や腿に捕らえられ、どうすることもできない。
あれよあれよと下穿きを剥がれ、部屋着も放り捨てられて、わたくしはすっかり丸裸にされてしまった。
もう今更とは思うけれど、晒された肌を申し訳程度に腕で庇い、わたくしに併せるように衣服を脱ぐ彼を見つめた。
鍛え上げた身体とわけは違うけれど、優しい見かけから想像するよりもずっと、引き締まった上体が月明かりに露わになる。細いのに力強そうな腕も、薄く陰影を刻んだ腰回りも、雄の匂いがして妙に色っぽかった。
あまり見つめるのも不躾かと視線を外す。しかし、そう考えるのはどうやらわたくしだけだったようで……。
イードさんは遠慮なく、わたくしの膝を立てさせて、まるで扉をこじ開けるかのように、隠していた秘所を暴いてしまった。
「うわああああっ! ど、ど、ど、どこ見てっ……」
「どこって、生殖器?」
分かっていたけれど、イードさんは恥ずかしげも情緒もなく口にするから、こちらが顔を熱くさせられてしまう。
脚を閉じさせてくれないので、隠そうと尾を前に持ってきたけれど、それすらイードさんには観察対象で、嬉々として捕まえられてしまった。
「尻尾は? 触れたら気持ちいい?」
「しし知るかっ」
「知らないなら試そうか?」
つつ……と指先で撫で上げられて、尻尾の付け根から背筋までぞくぞくとしたけれど、こうもイードさんの好きにされてはたまったものではない。
力強く尾を払い、イードさんの魔の手を脱した。
逃げおおせた安堵で笑んではみたものの……、おかしい。イードさんも笑っている。
──しまった! 何のために、尾を突き出したのか失念してしまった。
「これでよく見える。へぇ、これがフェネットの……」
「やめっ……やめろっ! ひゃああっ!!」
お尻の肉まで掴むようにして、脚の付け根をさらに拡げられる。
「……ここに花芽があって、その下に……」
「口に出すな、馬鹿ぁ……!!」
というか、そんな場所をしげしげと観察しないでくださいませんこと!?
「退け……! へんたい! すけべ!」
「はいはい、落ち着いて」
む、無駄に力が強い──!!
フェネットの脚力をもってしても、蹴り出せないなんて。なんですの、研究に熱が入った時のこの、イードさんの頑なさは。
「比較対象がヒトにしかならないんだけど、外観は一般的な女性と相違ないんだね」
きっと今、わたくしを観察しながら、彼は別の誰かを隣に並べている。
いったい何人?
どういった経緯で、お調べになったの?
わたくしに向ける眼差しを、その女たちにもやっぱり向けていらっしゃったの?
醜い嫉妬に突き動かされて、わたくしは無理やり身を起こすと、イードさんの頬を軽く叩いて注意を引いた。
「……他のメスのことなど考えるな。フェリチェの身体だけ覚えておけばいい」
「……すごい殺し文句だ」
わたくしは怒っているのに、イードさんはどうしてそんなに嬉しそうに笑うの。
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