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騎士と派閥と学園生活と

第127話-オーランの一幕-

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 協力者は俺の一つ上の学年の生徒だった。
 細くがっちりしている様には見えない、俺と同じような考えでここに来ているのかもしれない。

「お前がオーランか。とりあえず作戦は俺が考える。お前は深く考えずに指示に従え」
「それでいい。どうしたらいい」

 一度俺は失敗しているからこその態度。おそらく雇い主から聞いているんだろう。

「それを考える。急がすなよ」

 深くは考えてないらしい。つまりの所無策だ。
 だから俺はさっき会ったことを話した。街に出かける事になったことを、その場面を活かす作戦を促した。

「なんだ。お前やるじゃないか。雇い主が散々言ってたから役に立たないと思ってたぜ」

 たまたまだ。むしろ相手から来たのだから怪しさしかない。逆に相手の作戦に引っかかっている様な気さえする。

「そしたら、俺が細かい所は手配する。だからお前は後日伝える場所に女と一緒に来い。自然にだ」
「それでいいならそれに従うさ」
「いいじゃないか。そう言う奴は使いやすい」

 嬉しくない褒められ方だ。ただ、自分としては標的に対して不信感しかない、だから口を挟まない事にした。相手が俺に対して知識があるのなら、俺以外が考えた作戦なら相手の計算を狂わせることが出来ると考えたからだ。

「そしたらここで俺は別れる。ここで接触してる事はお互い見られたくないだろ」
「そりゃそうだ。ほらさっさと行った」
「所で、あんたは何で雇われたんだ?」
「なんだいきなり。この前の休みの時に雇われたんだよ。休みが終わる前にいきなりだぜ。まぁ報酬がいいから受けたけどな。簡単な仕事だしな」
「いや、そうじゃなくて。今までこんな仕事してきたのかと思って」
「あ? そんなもんねーよ。ただ家のつながりで顔を合わせた時にそんな話になったから、『この俺様がそいつに痛い目を見せてやるよ』って言ったら雇われたんだ。いい小遣い稼ぎさ。お前も似た様なもんだろ」

 つまりこいつの作戦は当てにはできないと言う事だ。
 この自信はどこから来るのかが知りたい。
 ただ雇い主の意向だ。俺としては逆らう理由はない。

「そうか。それならいい」

 聞きたいことは聞けた。だからそのままその場を後にする。
 こいつ程度ではあの標的には敵わない。そんな心の声が自然と生まれていた。
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