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騎士と派閥と学園生活と
第126話-予想外の接触-
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今の俺の任務はある特定の人物に対して被害を与える事だ。
殺せと命じられていないだけそこまで殺伐とした任務でもない。雇い主が同じ年齢の学生だから仕方のない事だとも思う。
あまり気乗りはしないが俺はその任務を少し前に実行した。だが、雇い主の満足の行く結果では無かったらしく、再度実行する様に命じられている。
実行した計画に抜かりはなかった。だが標的は思わぬ味方を得て、こちらの予想外の動きを取ることで半端な結果として終わった事は認めざる得なかった。
なんと言うか運に見放されたとしか言いようはなかった結果になっていた。
休みの間の標的の動きは読めなかったのでこちらとしては動けなかった。だから近日中に行動を起こすために今準備をしている所だ。
今日聞いた話では雇い主が新たに仕事を依頼した人物がいるらしい。俺はその人物にこの場で会うように指示されている。今後どうするかを打ち合わせするためだ。だから人気のないこの場所を歩いている。
そんな俺が今、非常に困惑している。理由は何故か。そんな事は簡単だ。
目の前にその標的の方から接触してきているからだ。
「あ、あの……失礼ですが人違いでは?」
「そんな事ないない。貴方よ。間違いなくね」
理由が分からない。いや、ある、接触してくる意味が。それはこちらの正体に見当をつけている。それか探りをいれに来ている。
こいつはどこかしらで俺の情報を掴んでいるんだ。しかし、それが決定打ではない。だからいきなりは仕掛けてこない。つまり、牽制に来ている。
証拠に後ろには噂の近衛騎士を連れてきている。
「貴方を私の近衛騎士に誘いたいの」
この誘いは「自分の軍門に下れ」と言う言葉。
これで襲撃がなくなれば仕掛けていたのが俺だと言う答え合わせになる。断れば理由を詰められる。
返答は慎重に選ばなければならない。そして、認めるしかない。この標的は俺よりも上手だ。
最初の仕掛けの時は簡単な相手だと舐めていた。だが、こちらの予想以上の動きをして、尚且つこちらを追い詰めてくる手腕。牙を隠していた、それも相当な鋭さだ。攻めてくる相手には容赦はしない。この眼前の笑顔の裏は相当冷たい感情が渦巻いている。
「ご冗談を。面識もない私にそんな事……」
「ところがあるのよ。貴方の可能性を私は知ってるからね」
「知っている」これは遠回しな牽制だ。そうでもないとこちらを知っているはずがない。
「しかし、そんな事で大事な近衛騎士を決められるのは如何なものかと」
「可能性は大事よ。それに私はそれを知ってるんだから博打でもないわ。じゃあ逆に聞くわ。私と面識とがあれば誘いを受けてくれるの?」
「いえ、そう言う訳では……」
「私は知ってるわよ。貴方が何故ここにいるかを」
「えっ……」
ここで協力者と会う事を読まれていた。だからこの場所へ来たと言うのか。
「貴方自身あまり近衛騎士になるつもりはなかった。あくまでここで太い先とのつながりを作りたいから騎士学校にいるのよね」
そちらの事かと胸を撫で下ろす。だが、それはそれでおかしい。何故そのことを知っているのか。心の中でも、いや俺の記憶でも読めるのか。手のひらに汗が滲み出てくる。
確かに言う通りだ。俺は騎士なるのではなく、生きていく上での汚れ仕事を得るためにここに来ている。だから、ここに真っ当に来ている他の生徒とは違う。
「いや、そんなことありません。自分の目標は近衛騎士になることです。しかし、見ず知らずの方から誘いを受けるのは私は出来ません」
ここで驚きの感情を出せばそれが正解だと言っている様なものだ。カマをかけてこちらの真意を測っている、そのはずだ。その手には乗らない。
「じゃあこうしましょう。私と週末に街へ行かない? そこでゆっくり話をしましょうよ。学校も休みでしょ」
断ることはできる。だがこれはチャンスでもある。標的がこちらに向こうから来ているのだ。
「そう言われたら断れませんが。よろしいのですか? こんな見ず知らずの自分に声をかけて」
あくまで自然に相手の誘いに乗る。真意は分からないが、これを目標への接触機会とする。
「もちろんよ。それに私は貴方を知っている。だから貴方にも私を知ってもらう。そしたら私が学校まで迎えにくるわ」
「いえ、それであれば街の門でお会いできれば。高貴な家の方と思われる方にご負担をおかけする訳にはいきませんので」
即答で返ってくるものかと思ったが答えは遅かった。少し首を捻りながら考え込んでいる。
何を考えることがあるのか。向こうとしてはそっちの方が楽なはずだ。
「分かったわ。貴方がそう言うならそうするわ」
「それでは昼過ぎでもよろしいでしょうか?」
「えぇ。大丈夫よ。なんなら今からでも私達と話さない?」
「すみません。人を待たせているもので。先を急ぎたいのですが……」
「そ、そうだったの。ごめん、引き止めちゃって」
「それでは失礼致します」
相手の気が変わらないうちにその場を後にした。
気味の悪い接触ではあったが、風はこちらに吹き始めている。後は今週末でどう動くかだ。
まずは協力者を見つける作戦を練るのはそこからだ。
殺せと命じられていないだけそこまで殺伐とした任務でもない。雇い主が同じ年齢の学生だから仕方のない事だとも思う。
あまり気乗りはしないが俺はその任務を少し前に実行した。だが、雇い主の満足の行く結果では無かったらしく、再度実行する様に命じられている。
実行した計画に抜かりはなかった。だが標的は思わぬ味方を得て、こちらの予想外の動きを取ることで半端な結果として終わった事は認めざる得なかった。
なんと言うか運に見放されたとしか言いようはなかった結果になっていた。
休みの間の標的の動きは読めなかったのでこちらとしては動けなかった。だから近日中に行動を起こすために今準備をしている所だ。
今日聞いた話では雇い主が新たに仕事を依頼した人物がいるらしい。俺はその人物にこの場で会うように指示されている。今後どうするかを打ち合わせするためだ。だから人気のないこの場所を歩いている。
そんな俺が今、非常に困惑している。理由は何故か。そんな事は簡単だ。
目の前にその標的の方から接触してきているからだ。
「あ、あの……失礼ですが人違いでは?」
「そんな事ないない。貴方よ。間違いなくね」
理由が分からない。いや、ある、接触してくる意味が。それはこちらの正体に見当をつけている。それか探りをいれに来ている。
こいつはどこかしらで俺の情報を掴んでいるんだ。しかし、それが決定打ではない。だからいきなりは仕掛けてこない。つまり、牽制に来ている。
証拠に後ろには噂の近衛騎士を連れてきている。
「貴方を私の近衛騎士に誘いたいの」
この誘いは「自分の軍門に下れ」と言う言葉。
これで襲撃がなくなれば仕掛けていたのが俺だと言う答え合わせになる。断れば理由を詰められる。
返答は慎重に選ばなければならない。そして、認めるしかない。この標的は俺よりも上手だ。
最初の仕掛けの時は簡単な相手だと舐めていた。だが、こちらの予想以上の動きをして、尚且つこちらを追い詰めてくる手腕。牙を隠していた、それも相当な鋭さだ。攻めてくる相手には容赦はしない。この眼前の笑顔の裏は相当冷たい感情が渦巻いている。
「ご冗談を。面識もない私にそんな事……」
「ところがあるのよ。貴方の可能性を私は知ってるからね」
「知っている」これは遠回しな牽制だ。そうでもないとこちらを知っているはずがない。
「しかし、そんな事で大事な近衛騎士を決められるのは如何なものかと」
「可能性は大事よ。それに私はそれを知ってるんだから博打でもないわ。じゃあ逆に聞くわ。私と面識とがあれば誘いを受けてくれるの?」
「いえ、そう言う訳では……」
「私は知ってるわよ。貴方が何故ここにいるかを」
「えっ……」
ここで協力者と会う事を読まれていた。だからこの場所へ来たと言うのか。
「貴方自身あまり近衛騎士になるつもりはなかった。あくまでここで太い先とのつながりを作りたいから騎士学校にいるのよね」
そちらの事かと胸を撫で下ろす。だが、それはそれでおかしい。何故そのことを知っているのか。心の中でも、いや俺の記憶でも読めるのか。手のひらに汗が滲み出てくる。
確かに言う通りだ。俺は騎士なるのではなく、生きていく上での汚れ仕事を得るためにここに来ている。だから、ここに真っ当に来ている他の生徒とは違う。
「いや、そんなことありません。自分の目標は近衛騎士になることです。しかし、見ず知らずの方から誘いを受けるのは私は出来ません」
ここで驚きの感情を出せばそれが正解だと言っている様なものだ。カマをかけてこちらの真意を測っている、そのはずだ。その手には乗らない。
「じゃあこうしましょう。私と週末に街へ行かない? そこでゆっくり話をしましょうよ。学校も休みでしょ」
断ることはできる。だがこれはチャンスでもある。標的がこちらに向こうから来ているのだ。
「そう言われたら断れませんが。よろしいのですか? こんな見ず知らずの自分に声をかけて」
あくまで自然に相手の誘いに乗る。真意は分からないが、これを目標への接触機会とする。
「もちろんよ。それに私は貴方を知っている。だから貴方にも私を知ってもらう。そしたら私が学校まで迎えにくるわ」
「いえ、それであれば街の門でお会いできれば。高貴な家の方と思われる方にご負担をおかけする訳にはいきませんので」
即答で返ってくるものかと思ったが答えは遅かった。少し首を捻りながら考え込んでいる。
何を考えることがあるのか。向こうとしてはそっちの方が楽なはずだ。
「分かったわ。貴方がそう言うならそうするわ」
「それでは昼過ぎでもよろしいでしょうか?」
「えぇ。大丈夫よ。なんなら今からでも私達と話さない?」
「すみません。人を待たせているもので。先を急ぎたいのですが……」
「そ、そうだったの。ごめん、引き止めちゃって」
「それでは失礼致します」
相手の気が変わらないうちにその場を後にした。
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